猛者と書いて〈もさ〉と読みならわしているが,〈もうざ〉が略転したものとみられている。猛者(もうざ)の語は平安時代も後期に入ってからしだいに普及したようで,勇猛果敢な人,威徳のある人,有能な活動家,富裕な人などの意味で使われた。いわば〈男の中の男〉と同様の意味で,男性に対する美称の一つであった。特別の技能をそなえた勇者という点では新興の武士階級の〈名ある武者(むしや)〉をさすし,これに威徳・富裕ということもあわせみると,武力に富んで各地で威勢を張っていた〈富豪の輩(やから)/(ともがら)〉が〈猛者〉像の中心をなしたのがわかる。文献に現れた初期の一例は奥州の豪族であった藤原秀衡(ひでひら)に関するもので,〈奥州猛者藤原秀平(衡)真人(まひと)〉といわれている(《東大寺造立供養記》)。〈もさ〉の語は,その道その道で難関にも敢然と立ち向かい,闘いつづける気概・実力・技能を兼備した〈つよい男性〉を比喩的に表現する語として,今日もなお用いられている。
執筆者:横井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…猛者と書いて〈もさ〉と読みならわしているが,〈もうざ〉が略転したものとみられている。猛者(もうざ)の語は平安時代も後期に入ってからしだいに普及したようで,勇猛果敢な人,威徳のある人,有能な活動家,富裕な人などの意味で使われた。…
※「猛者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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