日本大百科全書(ニッポニカ) 「理解社会学」の意味・わかりやすい解説
理解社会学
りかいしゃかいがく
verstehende Soziologie ドイツ語
理解を方法的基礎とする社会学。主としてドイツの社会学者マックス・ウェーバーによって提唱された。一般に理解と説明とを分け、前者によって自然科学とは異なる精神科学の自立性を確保しようという試みは、すでにディルタイの解釈学などにみられるが、ウェーバーはさらにジンメルやヤスパースなどをも摂取して、理解的方法を精密化し、行為の意味理解として社会学を基礎づけようとした。ウェーバーによれば、社会学とは、社会的行為を行為者がそれに結び付けた主観的意味に従って理解し、それによって行為の経過と結果とを因果的に説明しようとする科学である。理解作用には、さしあたり行為者もしくは観察者に直接所与として与えられる現実的aktuell(ドイツ語)理解と、行為の動機を意味連関のなかで理解する動機的motivationsmäßmes(ドイツ語)理解があるが、そこから出発してウェーバーはさらに、客観的な歴史の発展の意味を、人間の社会的行為の経過ないし結果として因果的に説明しようとする。これは説明的理解とよばれ、ここでは、説明と理解とは単に区別され対立させられるだけでなく、相互補完的にとらえられている。
したがって「方法的個人主義」に基づくウェーバーの社会学は、単に個人の主観的に思われた意味を理解するだけで、歴史の客観的発展を認識できない、という非難は誤解であって、ウェーバーは、個人の主観的意味を媒介にしながら、理念型としての行為の諸類型を組み合わせ、目的―手段、動機―結果関係の枠組みのなかで、歴史的発展や、個人を超えた制度組織の構造を、内的に明らかにしようとするのである。自己理解と他者理解、主観的意味と客観的意味の区別と連関など、シュッツが批判するように、なお多義性をもつとはいえ、理解社会学は現代の解釈学やハバーマスのコミュニケーション論にも有力な支柱を提供している。
[徳永 恂]
『M・ウェーバー著、林道義訳『理解社会学のカテゴリー』(岩波文庫)』▽『浜井修著『ウェーバーの社会哲学』(1982・東京大学出版会)』