(読み)ヘキ

デジタル大辞泉 「璧」の意味・読み・例文・類語

へき【璧】[漢字項目]

常用漢字] [音]ヘキ(漢) [訓]たま
ドーナツ形の玉。「完璧白璧
すぐれたもの。「双璧

へき【璧】

古代中国の玉器の一。扁平へんぺい環状中央に円孔がある。身分標識祭器、のちには装飾品として用いられた。たま。

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精選版 日本国語大辞典 「璧」の意味・読み・例文・類語

へき【璧】

  1. 〘 名詞 〙 中国古代玉器の一つ。殷代に出現。円板状の玉の中央に円孔を穿ったもの。材質は玉類を主とするが、石製・ガラス製もみられる。穀粒渦文、渦文、龍などの文様が彫刻されている。殷・周代では祭祀用具として使用されたが、戦国時代以降は装飾品、古墳副葬品などに用いられた。
    1. [初出の実例]「文侯賜以夜光之璧(ヘキ)〔漢書〕」(出典:文明本節用集(室町中))
    2. [その他の文献]〔儀礼‐聘礼〕

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普及版 字通 「璧」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 18画

[字音] ヘキ
[字訓] たま

[説文解字]
[金文]
[その他]

[字形] 形声
声符は辟(へき)。辟は刑辟。曲刀で腰の肉をまるく刳(えぐ)りとる形。金文の字形では、その部分を円形で示している。〔説文〕一上に「瑞玉、圜(まる)きものなり」とし、〔爾雅、釈器〕に「、孔に倍する、之れを璧と謂ふ」とあるように、中に小孔がある。〔周礼、春官、大宗伯〕に「璧を以て天に禮す」とあり、祭天のとき用いた。また諸侯の聘(へいきよう)のときにも、儀器として用いる。殷墟の婦好墓からは、玉璧・玉環・玉・玉戈の類が多く出土している。また斉器の〔子孟姜壺(かんしもうきようこ)〕に、諸神を祀るとき「璧二備(ふく)、玉二(し)」などを用いている。玉は魂振りの具であった。

[訓義]
1. たま、まるいたま、中に小孔のあるたま、瑞玉。
2. たまの形のもの、たまのように美しいもの。
3. 襞(へき)と通じ、ひだ。

[古辞書の訓]
名義抄〕璧 タマ

[声系]
璧piekは辟biekと声近く、通用することがあり、璧雍はまた辟雍に作る。金文には璧に作り、その文字から考えると、璧とはまるい池をめぐらした聖であったらしい。

[熟語]
璧英・璧・璧角・璧宮・璧玉・璧玉・璧月・璧砕・璧散・璧日・璧潤・璧・璧人・璧水・璧羨・璧・璧台・璧池・璧殿・璧堂・璧馬・璧帛・璧幣・璧雍・璧廱・璧聯
[下接語]
円璧・加璧・和璧・嘉璧・懐璧・合璧・完璧・環璧・含璧・拱璧・圭璧・弘璧・牲璧・薦璧・蒼璧・沈璧・白璧・反璧・美璧・宝璧・抱璧・累璧・連璧

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改訂新版 世界大百科事典 「璧」の意味・わかりやすい解説

璧 (へき)

中国の殷代から漢代にかけての,中央に孔のある円形板状の玉器。普通,素文で円形のものを璧と称し,その起源は,新石器時代の環状石斧にもとめられ,最も古いものは竜山文化期(前3000)にみられる。殷代後期には,建築の基礎である版築土の中から出土するところから,建築の基礎に関係した祭祀に使われたと思われる。殷代以後は,漢代にいたるまで,ほとんど変わらない形式が作られ続けた。文様のある璧には,穀物の粒のようなつぶつぶの突起文が一面にある,戦国時代から後漢時代にかけての穀璧,黼文(ほもん)(鉤連雷文)をつけたと解せられる戦国時代の蒲璧(ほへき),一足竜頭の鬼神の文様をつけた西周時代のものから,もとの文様がくずれて渦文になっていった戦国・漢時代のものまである瑑璧(てんへき)がある。変形のものには,璧の周囲に切り込みのある,殷代後期から西周時代後期にかけての圭璧,璧の周囲に凹凸の文様を刻んだ戦国時代の駔璧(そへき),戦国時代から漢時代にかけての,透し彫の竜文などを周囲につけた疏璧(そへき),楕円形の戦国時代の羨璧がある。璧の用途は,一つには祭祀に使用され,神が依るものと考えられた。二つには諸侯の地位の印として,諸侯が行う祭礼,盟誓にあたって,神を依らしめるために与えられたと考えられる。三つには春秋時代ころからは,死者の胸部・頭部に置かれるようになるが,これは神に死者を守ってもらおうとしたものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「璧」の意味・わかりやすい解説


へき

中国の玉器の一種で、扁平(へんぺい)環状で中央に小さな孔(あな)があいているものをさす。仰韶(ぎょうしょう)文化期の環状石斧(せきふ)に原形が求められるが、玉製としては竜山文化期に出現する。孔の大きいものをえんといい、さらに孔の大きい肉細の腕輪のようなものを環(かん)という。穀璧(こくへき)、蒲璧(ほへき)というのは璧に刻まれた文様にその名称が由来すると考えられている。駔璧(そへき)は璧の外周に切り込みを入れたもので、疏璧(そへき)は透彫りのある璧のことである。また楕円(だえん)形のものを羨璧(せんへき)という。『周礼(しゅらい)』玉人の注に、諸侯が来朝してきた際に天子に献上したのが璧であるとあるが、これらの璧が古代中国で具体的にどう使用されたのか、なお明らかでない。

[武者 章]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「璧」の意味・わかりやすい解説


へき
bi

中国古代に使用された環状の玉器。扁平な環で,孔は小さく,肉の幅が大きく,多くは白色または緑色の軟玉でつくられている。殷代に出現し,殷,周のものは厚手で,安陽の大司空村殷墓からは素文の璧が出土している。戦国時代になると穀粒文,蒲蓆文の施された璧がみられる。漢代には埋葬用として使用され,渦文,雷文のものが知られるが,その後はあまり使用されていない。

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百科事典マイペディア 「璧」の意味・わかりやすい解説

璧【へき】

扁平な環状の玉。儀礼・祭祀用の器として殷(いん)〜漢代に用いられた。石製,ガラス製のものもある。殷代には文様のないものが多く,戦国時代には穀粒文がつけられ,漢代になると穀粒文のほか,各種の獣頭文も施された。なお15城に匹敵する和氏(かし)の璧を取り戻した藺相如(りんしょうじょ)の故事から〈完璧〉の語が生まれた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ガラス工芸】より

…前代のガラスにはバリウムを含んだ特別な鉛ガラスが多いが,漢代以後はバリウムを含まない普通の鉛ガラスになる。漢代には装身具のほか,中心に孔のある円板状の璧(へき),棺の中に入れる副葬品などが現れ,また漢代に西域を通じて西方諸国と交易が始まると西洋のガラス(ローマン・グラス)が輸入される。 三国,両晋,南北朝,隋代になると発掘された中国ガラスは少なく,西安の李静訓(隋,608没)の墓から出た緑色鉛ガラス製の小さな壺など数点が知られるにすぎない。…

【玉器】より

…後世,瑞玉(ずいぎよく)と呼ばれた玉器,すなわち王が臣下に領土を安堵し,あるいは何かの任務を命ずる際にしるしとして貸与し,また貴族間の贈物に使われた象徴的な玉器も多く作られている。玉製の斧,(へき),琮(そう)がそれである。玉製の斧は後にも長く作られ,前3世紀ころまで伝統が続き,前1千年紀末の古典中で琬圭(えんけい)と呼ばれるにいたる。…

※「璧」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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