日本大百科全書(ニッポニカ) 「中央省庁等改革基本法」の意味・わかりやすい解説
中央省庁等改革基本法
ちゅうおうしょうちょうとうかいかくきほんほう
国の中央行政機構の改革について、その基本的な理念や方針を定めた法律。行政改革会議の最終報告の趣旨にのっとって行われる内閣機能の強化、国の行政機関の再編成、国の行政組織ならびに事務および事業の減量、効率化等の改革(以下「中央省庁等改革」という)について、その基本的な理念および方針その他の基本となる事項を定める法律(平成10年法律第103号)。1998年(平成10)6月施行。
基本法の主旨と関連法の成立
中央省庁等改革基本法は、主要には「内外の社会経済情勢の変化を踏まえ」、「国が本来果たすべき役割を重点的に担い、かつ、有効に遂行するにふさわしく」行われること、という一般的な「枠組み」を課しつつ、「国の行政組織並びに事務及び事業の運営を」「簡素かつ効率的なものとするとともに」「その総合性、機動性及び透明性の向上を図」るという、中央省庁等改革のより具体的な改革内容を示している。そして、究極的目的は「これにより戦後の我が国の社会経済構造の転換を促し、もってより自由かつ公正な社会の形成に資することを基本として行われるものとする」というのである(同法第2条)。この推進体制として、中央省庁等改革推進本部が設置されている。同法が目的とする中央省庁等改革の基本的な理念および方針に基づいて、中央省庁等改革関連法(内閣府設置法や独立行政法人通則法など17法律からなる)が可決成立し(1999年7月)、2001年1月には1府12省庁制(128の局も25%減の96となる)と、2001年4月から2004年度にかけて89業務・機関からなる独立行政法人制度が発足することになった。
内閣機能の強化と省庁再編
同法に基づく具体的な中央省庁等改革は、まずは内閣機能の強化を図る趣旨から、国政の重要政策の基本方針を立案したり各省庁間の総合調整を行うために、首相を補佐する内閣官房の体制が強化されている。たとえば、直属スタッフの官房副長官補(3人)を新設したり、首相補佐官も3人から5人へ増員して首相自らが登用(いわゆる政治的任用)できることになっている。また、この内閣官房を助けるために、新たに内閣府が創設されるとともに首相と閣僚それに民間人からなる経済財政諮問会議などの四つの会議が設置され、予算編成等の基本方針を作成することになっている。ただし、それぞれの会議に対応して、局長級の新たな分掌職7人をはじめ、官僚からなる事務局が置かれるので、内閣機能の強化に意図されている民主主義体制の強化(「政」の「官」に対する優位)の成否が問われることになろう。
他方、同法のもう一つの目的は、国の行政組織等の減量、効率化である。具体的には、従前の1府22省庁を、縦割り行政の弊害を排除するために総合性や包括性を備えたまとまりとして編成する「大括(くく)り」で1府12省庁に縮減して再編するとともに、イギリスのエージェンシーに倣った独立行政法人制度が創設されることになった。
その概要は、以下のとおり。
内閣府=総理府、経済企画庁、沖縄開発庁がいっしょになったもの。他省より格上の扱いで、複数の省にまたがる政策の調整や、大蔵省に代わって予算編成の基本方針を打ち出す「経済財政諮問会議」を設置する。「男女共同参画会議」もここに置かれる。
国土交通省=建設、運輸両省と国土庁、北海道開発庁がいっしょになる巨大官庁である。
総務省=総務庁、自治省、郵政省が合流。郵政事業は2003年に日本郵政公社に移管された後、2007年10月1日郵政民営化に伴い日本郵政グループ(日本郵政株式会社および子会社の郵便局株式会社、郵便事業株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険)に移管された。
財務省=大蔵省が衣替えしたもの。大蔵省から分離して金融機関等の監督・検査を担当していた金融監督庁は2000年7月に金融庁になった。予算編成の基本方針作成も、内閣府の経済財政諮問会議に移った。
経済産業省=通商産業省(通産省)が名称変更。
農林水産省
外務省
法務省
環境省=環境庁が省に。
防衛庁(2007年1月より防衛省)
国家公安委員会(管理下に警察庁がある)
2009年に内閣府の外局として消費者庁が設置された。
[福家俊朗・山田健吾]
『松田隆利・山本庸幸監修『中央省庁改革法規集』(1999・商事法務)』▽『中央省庁改革研究会編『中央省庁再編ガイドブック――新旧両引き』(2000・ぎょうせい)』▽『内閣中央省庁等改革推進本部事務局編『新府省庁ガイドブック――中央省庁の仕事と組織』(2001・財務省印刷局)』