甘南備寺(読み)かんなみじ

日本歴史地名大系 「甘南備寺」の解説

甘南備寺
かんなみじ

[現在地名]桜江町坂本

甘南備寺山(五二二・四メートル)の南麓、江川右岸に位置。宝生山と号し、高野山真言宗本尊観音菩薩。天平一八年(七四六)創建と伝え、もと甘南備寺山の山頂にあり、法相宗であったが、大同年間(八〇六―八一〇)弘法大師巡錫の際、真言宗改宗したという。中世河本かわもと郷を本拠とする小笠原氏が代々祈願所とした。応永一六年(一四〇九)九月三日、小笠原長宣が河本郷内の甘南備寺に「四ケ村内三原吉路原名田畠山野屋敷」などを当寺院主行円に宛て寄進している(「源長宣寄進状」甘南備寺文書)


甘南備寺
かんなびじ

[現在地名]田辺町薪 山垣内

現在はたきぎ集落近く酬恩しゆうおん庵の南東にあるが、かつては甘南備山の中腹にあった。医王山と号し、黄檗宗。本尊薬師如来。天平年間(七二九―七四九)行基が開いたと伝えるが、それ以前に役小角がここで柴灯護摩の秘法を修したともいう。「今昔物語集」巻一四(山城国神奈比寺聖人、誦法花知前世報語)によれば、綴喜つづき郡の「飯ノ岳」(飯岡)北西の山の上に神奈比寺があり一人の僧が住んでいたが、ここを去って大寺に行きたいと常に思っていた。ついに去ろうと決心した夜の夢に薬師如来が老僧となって現れ、その僧の前世はこの寺の土中にいたみみずで法華経を聞いた功徳によって人に生れたのであるから、縁のあるこの寺を去ってはならないとさとした。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

デジタル大辞泉プラス 「甘南備寺」の解説

甘南備(かんなび)寺

島根県江津市東部、江川右岸に位置する真言宗の寺院。山号宝生山、本尊観音菩薩。もとは天平年間創建の法相宗の寺で、大同年間に改宗と伝わる。樹齢150年といわれるしだれ桜が有名。

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世界大百科事典(旧版)内の甘南備寺の言及

【桜江[町]】より

…水害常襲地域であるが,近年堤防構築など水害対策が行われ,1957年には八戸ダム,73年に新八戸ダムが完成した。千丈渓(名),観音滝などの景勝や真言宗の名刹(めいさつ)甘南備(かんなび)寺がある。三江線,国道261号線が通じる。…

※「甘南備寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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