日本大百科全書(ニッポニカ) 「化学ルミネセンス」の意味・わかりやすい解説
化学ルミネセンス
かがくるみねせんす
chemiluminescence
蛍光と同様に励起状態から基底状態への遷移による、一般には熱を伴わない発光である。化学発光ともいう。蛍光の場合は、励起状態への遷移が外部から入射する光によっておこるが、化学ルミネセンスでは、化学反応の結果であったり、励起された分子が他の分子と衝突してエネルギーを受けるためにおこる。歴史的には1670年にドイツの錬金術師であるブラントHennig Brandt(生没年不詳)が、黄リンが空気中の暗所でかすかに青緑色に発光するのをみつけている。これは、黄リンの空気による酸化反応により、励起状態に上り自発的に基底状態に戻るときの発光である。
塩化ナトリウムの水溶液に激しく塩化水素を通したり、気体アンモニアに塩化水素を反応させると化学発光する。有機化合物の例ではルミノール反応が有名である。ルミノールの強アルカリ性溶液をペルオキソ硫酸塩、赤血塩などで酸化すると、日中でも見えるほど青紫色に強く発光する。過酸化水素で酸化すると、発光は弱いが持続性がある。また、銅や鉄を含む錯化合物を加えると発色が著しく強められる。
[下沢 隆]