日本大百科全書(ニッポニカ) 「カムフラージュ」の意味・わかりやすい解説
カムフラージュ
かむふらーじゅ
camouflage フランス語
第一次世界大戦から使われ始めた軍事用語。動物の保護色と同じく、敵の目や写真撮影から、味方の人員、兵器、施設、陣地、航空機、艦艇などの識別、動静の判定を困難にし、敵火による損害を防ぐための工作で、偽装(ぎそう)と迷彩(めいさい)の2種がある。偽装は、周囲の自然の状況や地形、地物にあわせて兵員や兵器に草や木の葉を装着させ、あるいは着色した偽装網をかぶせて全体像をぼかし、敵の目標となることを避ける方法。車両や地上にある航空機、陣地、補給物資などには大型の偽装網をかぶせ草木を装着するが、植物は変色するため人工の着色布片を取り付けた網が用いられる。太平洋戦線で日本軍がしばしば輸送船に樹木を装着して島に偽装したが、これは大規模な一例。
迷彩は、陸上では兵員に迷彩戦闘服を着せ、兵器には迷彩着色を施す。環境にあわせ、草原では緑、砂漠では褐色、熱帯では緑・黒・褐の混合、雪地では白色などを用いる。艦船では容量、速度、方向を誤判断させるため、不整形模様を側面や上面に描き、航空機では上面を不整形模様に、下面を空色に塗り、敵機からの識別を困難にする。これらに対し、人形や模型を使い、わざと目だたせる工作を逆カムフラージュという。近年、カラー写真、赤外線、レーダー、偵察衛星などの発達により、在来形の偽装、迷彩は効果を失いつつあるが、それらに対抗するための欺瞞(ぎまん)逆カムフラージュが発達しつつある。
[寺田近雄]