生霊(読み)いきりょう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

生霊
いきりょう

生者のをいい,死霊とともに憑依霊の一つと考えられている。怨念をもって他者の肉体に憑依し,死にいたらしめることさえあると考えられ,祈祷師の呪術によるほかは逃れる法はないとされた。生魑魅 (いきすだま) もこれと同じものである。この生霊と比べられるものに生御霊 (いきみたま) があるが,これは生霊のように異常なものではなく,人間の本来もつ魂がそれであると考えられ,生者の霊を祀りその長寿を祈る生き盆の民俗行事が生れた。現在でも南西日本の山村などで生霊の信仰が存続している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

生霊
いきりょう

人に憑(つ)く人間霊のうち、生きた人の霊。これに対し死霊は、死者の霊が憑くことをいう。憑き物現象の憑依(ひょうい)霊の一種。
 ある人が、友人などに対し、ねたみ、そねみ、恨み、憎しみなどの激しい感情をもっていると、その人の霊は肉体から遊離して相手に取り憑いて苦しめ、ときには殺すこともできると考えられていた。『源氏物語』で、六条の御息所(みやすどころ)の生霊が葵(あおい)の上の臨月の衰弱につけこんで苦しめた話は有名である。『今昔(こんじゃく)物語』にも、離縁した妻の生霊が普通の姿をして深夜に前夫の家を訪れ、戸が締まっているのに、すきまから入り込み、前夫を取り殺した話がみえている。取り憑かれた側では、祈祷師(きとうし)などに頼んで、呪法(じゅほう)でこれを落とそうとする。しかし、ある症状を生霊の憑いたためだと判断するのも、ほかならぬ祈祷師であったから、憑き物現象の盛行と呪者の存在とは、互いに相関、共存の形をとることが多い。[井之口章次]

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精選版 日本国語大辞典の解説

いき‐りょう ‥リャウ【生霊】

〘名〙
① 生きている人の怨霊(おんりょう)で、他人にとりつき、たたりをするといわれるもの。いきすだま。⇔死霊
※今昔(1120頃か)二七「近江の国に御する女房の生霊に入給ひたるとて」
② ある抽象的な特質が、かりに人のかたちをとったかと思われるほど目立つ人。権化(ごんげ)
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉六「狸は例の通り勿体ぶって、教育の生霊と云ふ見えでこんな意味の事を述べた」

しょう‐りょう シャウリャウ【生霊】

〘名〙 =いきりょう(生霊)①〔色葉字類抄(1177‐81)〕
仮名草子・身の鏡(1659)下「『死霊(しれう)の罰(ばち)、生霊(シャウレウ)の罰』など云と見えたり」

せい‐れい【生霊】

〘名〙
生物霊長人類人民。生民。民。
※令義解‐上令義解表・天長一〇年(833)一二月一五日「臣夏野等言〈略〉拠時制変、合古便今。誠可生霊之視聴皇王之模範者也」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「実に無用有害の小虫と申ながら彼も億万生霊(セイレイ)の小数なり」 〔晉書‐慕容盛伝〕
② 生きている人のたましい。いきりょう。
※浄瑠璃・最明寺殿百人上臈(1699)含み状「もとより武勇第一のかぢ原が、せいれい入かはりたる其しるし」
③ 生命。いのち。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉四「外は慢夷の胆を呑み内は生霊(セイレイ)を保ち、叡慮を安じ奉り」 〔沈約‐与徐勉書〕

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世界大百科事典内の生霊の言及

【アニミズム】より

…〈気息〉や〈霊魂〉を意味するラテン語のアニマanimaに由来し,〈さまざまな霊的存在spiritual beings(霊魂,神霊,精霊,生霊,死霊,祖霊妖精妖怪など)への信仰〉を意味する。
[霊的存在とはなにか]
 霊的存在の典型としての霊魂soulについてみると,それは人間の身体に宿り,これを生かし,その宿り場(身体)を離れても独自に存在しうる実体である。…

※「生霊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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