産神(読み)ウブガミ

デジタル大辞泉 「産神」の意味・読み・例文・類語

うぶ‐がみ【産神】

出産の前後を通じて、妊産婦や胎児・生児を守り、また、出産に立ち会い見守ってくれるとされている神。うぶのかみ。
産土神うぶすながみ」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「産神」の意味・読み・例文・類語

うぶ‐がみ【産神】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「うぶかみ」とも )
  2. 出産の前後を通じて、妊婦や生児を見守ってくれると信仰される神。妊娠や安産に効があると信じられている神。また、生まれた土地の守護神。著名な大社、村の鎮守小祠など種々の場合がある。うぶのかみ。うのかみ。うぶすながみ。
    1. [初出の実例]「早旦参詣今宮旅所。余生神也」(出典:十輪院内府記‐文明一七年(1485)五月九日)
    2. 「国本へ参り候所、産神(ウブガミ)へはまいり申さず候」(出典:都鄙問答(1739)四)
  3. 出産の場に立会い、見守ってくれると信じられている神。東北地方では山の神をこの神だとする信仰が強く、山の神が来ないとお産ができないなどといい、また、障子の桟や長持の上に腰かけているという伝承も広くある。あるいは箒神だとする信仰も広く、出産のさいに箒を立てたりする。うぶのかみ。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  4. 赤子に入れるべき霊魂の称。生まれたばかりの赤子は、単なる肉塊と考えられていたので、そこに小石などに象徴された霊魂をあてがい、成育をうながす必要があると考えられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「産神」の意味・わかりやすい解説

産神 (うぶがみ)

出産の前後を通じて不浄を忌まず,産婦と生児を守ってくれる神。ウブサマ,ウノカミ,オブノカミなどともいう。ウブもオブも産を意味するウムと同じ語源からきているが,愛媛県南部では小児の魂をウブという。産のけがれのあるものは神参りを避けるのがふつうであるが,産神だけは特別で,進んで産屋の忌の中に入ってきて産婦を守るものと信じられていた。産神は出産と同時に産屋にきて,3日目か七夜には立つと考えられているが,熊本県阿蘇地方では帯祝の日からまつりはじめるという。出産後すぐに産飯を炊いて産神に供えるが,生児と膳が一つであるのは,古い信仰のなごりを示す。膳には産土(うぶすな)神の境内などから迎えてきた小石をのせる。これをウブイシオカズアタマイシなどといい,産神の依代(よりしろ)としている。産神としては同族でまつる内神のほか,山の神,箒神,厠神,子安神,道祖神などがある。
執筆者:

朝鮮では〈サムシンsamsin〉あるいは〈サムシンハルモニsamsinhalmǒni〉と呼ばれる。〈三神〉と書くことも多いが,〈産神〉または胎を意味する〈サムsam〉かと思われる。白紙で神位をつくって壁にはってあることもあるが,神体は明らかではなく,漠然と産婦と嬰児を保護する神と考えられている。サムシンには白飯と肉の入らないワカメスープを供える。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「産神」の意味・わかりやすい解説

産神
うぶがみ

出産に立ち会う神をいう。産神については各地によっていろいろな信仰がある。山の神をもって産神とすることが東北地方に多くみられ、産気づくと夫が馬を引いて山の神を迎えにいく。山中で馬が身震いをしたり鳴いたりすると、山の神が乗り移ったと解して家に帰る。するとまもなく出産となるという。産神にはこのほか箒(ほうき)神、便所神などがある。箒神を産神とする所は多く、この神がこないと生まれないといい、女は箒をまたいではいけないという。便所神を産神とする所は関東に多く、女は平素便所をよく掃除すると、きれいな子が生まれるという。なお、生児の初宮参りには便所に連れて行き、米、かつお節などをあげる風習がある。

[大藤時彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「産神」の意味・わかりやすい解説

産神
うぶがみ

妊婦と生児を守ってくれるということで信仰された神。日本では産の忌があり,出産は穢れ多いものとして神参りを遠慮させられたが,産神だけは産屋の忌のなかへ入って守ってくれるものと信じられていた。東北地方では,山の神を産神として伝承しているが,これは山の神が女神でお産をするという考え方が根拠になっていると思われる。このほか産神として箒神,便所神,道祖神などが信仰されている。

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百科事典マイペディア 「産神」の意味・わかりやすい解説

産神【うぶがみ】

おぶの神とも。出産の神。産のけがれのある者は神祭りを避けるが,産神だけは産屋にきて産婦と生児を守るとされた。出産直後氏神などから迎えた小石を産飯や酒とともに供え,この産石を神体ともする。また箒(ほうき)神,山の神,厠(かわや)神,道祖神を産神としたり,塩竈(しおがま)神社を安産の神とする。

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世界大百科事典(旧版)内の産神の言及

【産神問答】より

…人間は生まれたときにすでに一生の運命が定められているという民俗的観念に基づいて作られた昔話群のうち,出生時に運命を定める神(産神)が話の中に登場する場合の昔話をとくに〈産神問答〉と総称している。ふとしたことから,ある者が産神たちがこれから生まれる子どもの運命を決めているのを聞きつけ,当事者たちがその運命から逃れようと努力するがやはりそのとおりになってしまうという展開をする話が多いが,神への供応などによって運命を変えることに成功する話もある。…

【産土神】より

…すなわち産土神は,ウブスナなる所生の土地にまつられた神として祖先または自分を含めた郷党社会を守護する神社ないし神格をいうのである。なお平安末期より〈産神〉の語が《今昔物語集》などに見え,室町時代には〈産神〉〈氏神〉ともにウブスナと読むことがあり,近世には産神を奉じる者を〈産子(うぶこ)〉と呼ぶにいたる。産土神(産神)と産子の関係は語義の上からもおのずと子供の出生に関連し,近世には初宮参りや一般の氏神参りを〈産土参(うぶすなまいり)〉と称したことも多い。…

【神】より

… したがって,人間の一生の大事である出産儀礼は,出産に伴う血穢があるため,神道の神は,これを不浄とみなしてタブーの対象とした。ところがウブガミ(産神)と称される出産時の守護霊は,穢を忌避せず,妊婦と赤児を守護するカミである。神道の神が,死穢については仏教に,産穢についてはウブガミにそれぞれ機能をゆだねていることがわかる。…

【出産】より

…現在の産院となるまでには,産小屋,下屋(げや),ニワ,ナンドなどの長い歴史がある。産室に臨んで分娩を助け,母と子を守ってくれる神を産神(うぶがみ)という。一般に神は産の忌の間は避けるものであったが,産神だけは特別で,産に立ち会って産婦と生児を守り,生児の運命までもつかさどる神と信じられている。…

※「産神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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