出産の前後を通じて不浄を忌まず,産婦と生児を守ってくれる神。ウブサマ,ウノカミ,オブノカミなどともいう。ウブもオブも産を意味するウムと同じ語源からきているが,愛媛県南部では小児の魂をウブという。産のけがれのあるものは神参りを避けるのがふつうであるが,産神だけは特別で,進んで産屋の忌の中に入ってきて産婦を守るものと信じられていた。産神は出産と同時に産屋にきて,3日目か七夜には立つと考えられているが,熊本県阿蘇地方では帯祝の日からまつりはじめるという。出産後すぐに産飯を炊いて産神に供えるが,生児と膳が一つであるのは,古い信仰のなごりを示す。膳には産土(うぶすな)神の境内などから迎えてきた小石をのせる。これをウブイシ,オカズ,アタマイシなどといい,産神の依代(よりしろ)としている。産神としては同族でまつる内神のほか,山の神,箒神,厠神,子安神,道祖神などがある。
執筆者:大藤 ゆき
朝鮮では〈サムシンsamsin〉あるいは〈サムシンハルモニsamsinhalmǒni〉と呼ばれる。〈三神〉と書くことも多いが,〈産神〉または胎を意味する〈サムsam〉かと思われる。白紙で神位をつくって壁にはってあることもあるが,神体は明らかではなく,漠然と産婦と嬰児を保護する神と考えられている。サムシンには白飯と肉の入らないワカメスープを供える。
執筆者:嶋 陸奥彦
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出産に立ち会う神をいう。産神については各地によっていろいろな信仰がある。山の神をもって産神とすることが東北地方に多くみられ、産気づくと夫が馬を引いて山の神を迎えにいく。山中で馬が身震いをしたり鳴いたりすると、山の神が乗り移ったと解して家に帰る。するとまもなく出産となるという。産神にはこのほか箒(ほうき)神、便所神などがある。箒神を産神とする所は多く、この神がこないと生まれないといい、女は箒をまたいではいけないという。便所神を産神とする所は関東に多く、女は平素便所をよく掃除すると、きれいな子が生まれるという。なお、生児の初宮参りには便所に連れて行き、米、かつお節などをあげる風習がある。
[大藤時彦]
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…人間は生まれたときにすでに一生の運命が定められているという民俗的観念に基づいて作られた昔話群のうち,出生時に運命を定める神(産神)が話の中に登場する場合の昔話をとくに〈産神問答〉と総称している。ふとしたことから,ある者が産神たちがこれから生まれる子どもの運命を決めているのを聞きつけ,当事者たちがその運命から逃れようと努力するがやはりそのとおりになってしまうという展開をする話が多いが,神への供応などによって運命を変えることに成功する話もある。…
…すなわち産土神は,ウブスナなる所生の土地にまつられた神として祖先または自分を含めた郷党社会を守護する神社ないし神格をいうのである。なお平安末期より〈産神〉の語が《今昔物語集》などに見え,室町時代には〈産神〉〈氏神〉ともにウブスナと読むことがあり,近世には産神を奉じる者を〈産子(うぶこ)〉と呼ぶにいたる。産土神(産神)と産子の関係は語義の上からもおのずと子供の出生に関連し,近世には初宮参りや一般の氏神参りを〈産土参(うぶすなまいり)〉と称したことも多い。…
… したがって,人間の一生の大事である出産儀礼は,出産に伴う血穢があるため,神道の神は,これを不浄とみなしてタブーの対象とした。ところがウブガミ(産神)と称される出産時の守護霊は,穢を忌避せず,妊婦と赤児を守護するカミである。神道の神が,死穢については仏教に,産穢についてはウブガミにそれぞれ機能をゆだねていることがわかる。…
…現在の産院となるまでには,産小屋,下屋(げや),ニワ,ナンドなどの長い歴史がある。産室に臨んで分娩を助け,母と子を守ってくれる神を産神(うぶがみ)という。一般に神は産の忌の間は避けるものであったが,産神だけは特別で,産に立ち会って産婦と生児を守り,生児の運命までもつかさどる神と信じられている。…
※「産神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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