甲府藩(読み)こうふはん

藩名・旧国名がわかる事典 「甲府藩」の解説

こうふはん【甲府藩】

江戸時代中期まで、甲斐(かい)国山梨郡甲府(現、山梨県甲府市)に藩庁をおいた、初め親藩(しんぱん)、のち譜代(ふだい)藩。甲府を拠点とした武田氏は、1582年(天正(てんしょう)10)に織田・徳川連合軍の侵攻滅亡、次いで90年の小田原征伐で当地は豊臣秀吉(とよとみひでよし)の勢力下に入り、羽柴秀勝(ひでかつ)、加藤光泰(みつやす)、浅野長政(ながまさ)・幸長(よしなが)父子などの豊臣系大名が入国した。関ヶ原の戦い後は、家康の9男徳川義直(よしなお)、次いで徳川秀忠(ひでただ)の3男忠長(ただなが)が入った。忠長は素行の悪さから改易(かいえき)され甲府は天領となったが、徳川家光(いえみつ)の3男綱重(つなしげ)が武蔵(むさし)国近江(おうみ)国信濃(しなの)国駿河(するが)国内の領地も合わせ25万石で甲府に入封(にゅうほう)、立藩した。立藩時の甲斐国内の領地高は14万4000石だった。その子綱豊(つなとよ)(徳川家宣(いえのぶ))が将軍徳川綱吉(つなよし)継嗣(けいし)となった1704年(宝永1)に、武蔵国川越(かわごえ)藩から柳沢吉保(やなぎさわよしやす)が15万石で入封した。しかし、その子吉里(よしさと)が24年(享保(きょうほう)9)に大和(やまと)国郡山(こおりやま)藩に転封(てんぽう)(国替(くにがえ))すると、その後は天領となり、甲府勤番がおかれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲府藩」の意味・わかりやすい解説

甲府藩
こうふはん

江戸中期まで甲府を中心とした甲斐(かい)国(山梨県)国中(くになか)地方を領有した藩。1590年(天正18)徳川家康の関東移封に伴い、豊臣(とよとみ)氏の勢力下に入った甲斐には羽柴(はしば)秀勝、ついで加藤光泰(みつやす)が封ぜられ、93年(文禄2)には浅野長政(ながまさ)が入国、領内総検地も実施され、甲斐22万5000石のうち、子幸長(よしなが)とともに21万5000石を領有した。先に家康の命により着手されていた甲府築城は浅野氏の時代に完成、新城下が形成された。関ヶ原の戦い後、徳川義直(よしなお)や忠長(ただなが)ら家門が国主となるが、この間、幕府領に編入され城番が置かれたりした。1661年(寛文1)徳川綱重(つなしげ)が25万石で封ぜられたが、甲斐に与えられた領知高は14万4000石。その子綱豊(つなとよ)(家宣(いえのぶ))が将軍綱吉(つなよし)の継嗣(けいし)となった1704年(宝永1)、武蔵(むさし)国(埼玉県)川越(かわごえ)から柳沢吉保(よしやす)が15万石余で入封、子吉里(よしさと)が1724年(享保9)大和(やまと)国(奈良県)郡山(こおりやま)に転封して、その後は幕府直轄領となった。

[飯田文弥]

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百科事典マイペディア 「甲府藩」の意味・わかりやすい解説

甲府藩【こうふはん】

府中(ふちゅう)藩とも。甲斐(かい)国甲府に藩庁をおいた。1661年徳川家光(いえみつ)3男綱重(つなしげ)が25万石で受封し立藩(家門(かもん))。1704年に譜代(ふだい)の柳沢吉保(よしやす)が15万1000石で受封,子の吉里(よしさと)は在城し,城下に江戸風を移入,市街は繁栄したが,1724年転封になり廃藩,幕府領になった。
→関連項目甲斐国徳川家宣柳沢氏

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「甲府藩」の意味・わかりやすい解説

甲府藩
こうふはん

府中藩ともいう。江戸時代,甲斐国 (山梨県) 山梨郡を領有した藩。譜代。地理的に駿河の後背地にあたり,また金山があることから,将軍家の一族や側近者が入封している。慶長8 (1603) 年には徳川家康の子義直が 25万石,慶安4 (51) 年には6代将軍家宣の父綱重が 15万石 (61年に 10万石を加増) ,また宝永1 (1704) 年には,5代将軍綱吉の側近として活躍した柳沢吉保が 15万石で入封している。享保9 (24) 年柳沢氏転出後は廃藩,以後幕府直轄領として廃藩置県にいたる。

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デジタル大辞泉プラス 「甲府藩」の解説

甲府藩

甲斐国、府中(現:山梨県甲府市)を本拠地とする藩。もとは武田氏の拠点。金山を有した。小田原征伐後は豊臣秀吉の一族や側近が次々に入国。関ヶ原の戦いの後、徳川家康の9男義直が25万石で入封。享保年間に藩主をつとめた柳沢吉保の子・吉里が大和国に転封となり、以後天領となった。

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