京都において鎌倉時代末期から形成され,応仁・文明の乱後に確立する住民の生活共同体は,〈まち〉ではなく〈ちょう〉であるから,本来〈ちょう〉の連合体も〈まちぐみ〉ではなく,〈ちょうぐみ〉である。町組は上京,下京を単位とし,1568年(永禄11)の織田信長の入洛以前にすでに確立している。信長は入洛後,上京,下京の町組に米を強制的に貸与し,その利米を朝廷の経営に充当している。1571年(元亀2)の《上下京御膳方御月賄米寄帳》によると,上京の町組編成は,一条組4町,立売組14町と寄町分29町,中筋組12町,小川組10町,川ヨリ西町21町であり,下京は中組18町,牛寅組15町,川ヨリ西組17町である。信長は町組を介して町民の自治組織〈町〉を支配した。時代とともに町組数は増加し,幕末には上京は13の町組,町数847,下京は8の町組,町数607,ほかに両本願寺寺内120町があった。各町組には古町(こちよう)と新町(しんちよう),親町(おやちよう)と子町(こちよう)・枝町(えだちよう)との格差が設けられていた。
→町(ちょう)
執筆者:仲村 研 町組には天文期(1532-55)にすでに月行事(がちぎようじ)と呼ばれる代表者が置かれ,町の年寄が輪番で当たった。月行事は年頭に将軍らに拝礼したほか,町入費を町々に割りかける〈大割(勘定)寄合〉を催し,公武衆からは〈上下京宿老〉(《言継卿記》)などとも呼ばれた。初期町組の自治機能は撰銭令(えりぜにれい)違犯者検断など一定の犯科処罰権を伴う強固なものであったが,京都所司代の成立など幕藩権力支配の強化につれてしだいに形骸化し,執行組織も整備されて,年行事(下京では座上)と月行事(下京では月当番)が置かれた。年行事は所司代,東西町奉行への年頭拝礼,就任拝礼,夫銀(ぶぎん)などの納入,町入費の徴収などを行い,月行事は町への触(ふれ)の伝達や臨時入費,勧化奉納金などの徴収などを行ったという。また〈大割寄合〉も,江戸中期には一時町代(ちようだい)の勘定にとってかわられたが,1817年(文化14)町代の専横を訴えた〈町代改儀一件〉で翌年(文政1)町組が勝訴すると,新設の上・下京の統一的自治運営機関〈大仲(おおなか)〉のもとで復活した。
なお,町の連合自治組織としての〈町組〉は,京都のほかにも堺,近江八幡,大津など,主として織豊政権下に形成され,発達した近世都市に少なからず認められる。このことは〈町組〉が近世都市の発展段階,地域性,権力などを含む,構造的特質についての一つの指標となりうる可能性を示している。
執筆者:富井 康夫
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町(ちょう)が数町から数十町集まって形成される組のこと。中世末~近世の都市における自治・支配の単位の一つ。この時期の都市では町が自治・支配の基礎単位であったが,町は単独で存在していたわけではなく,複数の町が集まって町組,さらに複数の町組が集まって惣町(そうちょう)を形成するという重層構造になっていた。京都では天文年間にはその存在が確認され,明治初年の町組改正まで存続した。
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…京都において鎌倉時代末期から形成され,応仁・文明の乱後に確立する住民の生活共同体は,〈まち〉ではなく〈ちょう〉であるから,本来〈ちょう〉の連合体も〈まちぐみ〉ではなく,〈ちょうぐみ〉である。町組は上京,下京を単位とし,1568年(永禄11)の織田信長の入洛以前にすでに確立している。信長は入洛後,上京,下京の町組に米を強制的に貸与し,その利米を朝廷の経営に充当している。…
…所司代は,幕初の板倉勝重につづいてその子息の板倉重宗が継承し,板倉父子の支配は約半世紀に及び,重宗のあとは牧野親成が就任した。板倉父子および牧野親成の所司代時代に,京都の市中法度が制定され,町共同体と町組の組織も干渉を加えられ,行政機構として整備された。町組は上京12組,下京8組のほか禁裏六町町組と東西両本願寺の寺内町組があり,全町組は町代を通じて奉行所から政令を伝達された。…
…近世京都における江戸幕府町政の末端補助者,またその機構。上京,下京の親町組組のうち1ないし数組を担当して,主として町中への触の伝達,禁中作事の人足割当て,年寄の年頭拝礼江戸下りの随行,将軍・所司代上洛時の出迎え,上使・二条城番衆の宿割,公事日の出仕や町中訴願の取次ぎなどを行ったもの。身分は町人だが,町年寄のように町組自治には参加しない。…
※「町組」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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