近世京都における江戸幕府町政の末端補助者,またその機構。上京,下京の親町組20組のうち1ないし数組を担当して,主として町中への触の伝達,禁中作事の人足割当て,年寄の年頭拝礼江戸下りの随行,将軍・所司代上洛時の出迎え,上使・二条城番衆の宿割,公事日の出仕や町中訴願の取次ぎなどを行ったもの。身分は町人だが,町年寄のように町組自治には参加しない。通説では町組を代表する年寄と役所を仲介して雑務を弁じた使用人,いわゆる〈町役の代理人〉だとするが,これは1818年(文政1)に裁決をみた町代改義一件で確定したもので,その職務も性格も,成立期以来かなりの変化がある。〈冷泉町大福帳〉天正10年(1582)の項に5人の町代の名が見えるのが初見とされ,初期は所司代の町政執行の補助機関であったと思われるが,1668年(寛文8)京都町奉行所成立後は,西町奉行所に町代部屋(春日部屋)が設けられ,昼間1人ずつ交代で出仕した。また,後には上(かみ)町代・下(した)代(下町代)の序列も生じ,上町代は1~2人の下代と,3人の小番(使用人)を擁して担当町組に対する事務処理に当たり,町組からは一定額の役料(給料)が与えられ,職分はときには株として売買されることもあったが,多くは世襲であった。寛永期(1624-44)には上京に9人,下京に3人の町代が見えるが,元禄期(1688-1704)には上京7人,下京6人,うち1人は上下京兼任で,12人となり幕末に至る。町代惣会所は堀川通夷川上ル町にあった。
執筆者:富井 康夫
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近世都市の町(ちょう)に雇用され、町役人(ちょうやくにん)のもとで町運営上のさまざまな下級事務に携わった専業者。江戸や大坂では町代、京都では町用人(ちょうようにん)・用人と呼ばれた。その主な職務は、各都市によって多少の相違がみられるが、江戸の場合、(1)町触(まちぶれ)の伝達、(2)町入用事務、(3)各種文書の作成、などである。町代は、町を維持・運営するうえで必要不可欠な存在であり、このため町抱(ちょうがかえ)とされた。町抱とは、町によって雇用されるのみならず、人格的にも支配を受けるというもので、とくに京都の用人はその典型としての特徴を有している。
[杉森哲也]
『菅原憲二著「近世京都の町と用人」(高橋康夫・吉田伸之編『日本都市史入門3』所収・1990・東京大学出版会)』
近世都市の町(ちょう)や組合町が雇用する事務員もしくは個別町の役人の名称。都市によって意味が異なり,江戸では名主,大坂では町年寄を補佐する雇用者で,各町におかれた。京都では組合町が雇用する事務の代行者で,町奉行所による支配機構の一環をなした。出羽国秋田藩の城下町久保田では個別町の役人の名称で,京都の町年寄にあたる。
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…このほか,江戸には出床(でどこ)の髪結が番人を兼ねていたり,〈非人〉の物貰いを制道(せいどう)(統制というほどの意味)するために町内に〈番非人〉を置く所もあったが,これらはいずれも番太とは呼ばれていない。 大坂の場合,町ごとに会所があり,そこに町代がいたが,彼らは番人ではない。各町には店借の夜番人が雇われて,木戸の番や夜警などに従事しており,大坂ではこの夜番人が番太であったと考えられる。…
…年行事は所司代,東西町奉行への年頭拝礼,就任拝礼,夫銀(ぶぎん)などの納入,町入費の徴収などを行い,月行事は町への触(ふれ)の伝達や臨時入費,勧化奉納金などの徴収などを行ったという。また〈大割寄合〉も,江戸中期には一時町代(ちようだい)の勘定にとってかわられたが,1817年(文化14)町代の専横を訴えた〈町代改儀一件〉で翌年(文政1)町組が勝訴すると,新設の上・下京の統一的自治運営機関〈大仲(おおなか)〉のもとで復活した。 なお,町の連合自治組織としての〈町組〉は,京都のほかにも堺,近江八幡,大津など,主として織豊政権下に形成・発達した近世都市に少なからず認められる。…
…農村を支配する名主と区別して町名主と呼んだ。職名も都市により相違があり,大坂では町年寄,岡山では名主年寄,仙台では検断・肝煎(きもいり),若松では検断,名古屋・犬山・長岡では町代,姫路では年寄,金沢では肝入,岡崎・飯田では庄屋,駿府では丁頭など多様な名称が用いられている。 1590年(天正18)徳川家康が江戸に入ったとき,町の支配役としては(1)入国以前から江戸にいた者から取り立てられた者がおり,さらに(2)家康入国後命ぜられた者,(3)江戸で町屋が建設されるさいに町役頭ないし名主と呼ばれた者がいた。…
※「町代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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