(読み)ショク

デジタル大辞泉 「触」の意味・読み・例文・類語

しょく【触〔觸〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]ショク(漢) [訓]ふれる さわる
物にふれる。「触診触発接触抵触一触即発
物にふれて感じる。「触角感触

そく【触】

仏語
感覚器官である根と、対象物である境と、認識する心である識とが結びついたときに生じる精神作用。
十二因縁の一。生まれて2、3歳までの、まだ接触感覚だけのころとする。
六境の一。接触によって感覚される対象。

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精選版 日本国語大辞典 「触」の意味・読み・例文・類語

さわりさはり【触】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「さわる(触)」の連用形の名詞化 )
  2. 触れること。接触。また、その感じ。触れた感覚。感触。
    1. [初出の実例]「いま、黒き天鵞絨(ビロウド)の にほひ、ゆめ、その感触(サハリ)…噴水(ふきあげ)に縺れたゆたひ」(出典:邪宗門(1909)〈北原白秋〉魔睡・室内庭園)
  3. 人に接した時の感じ。人との接し方。応対。人あたり。
    1. [初出の実例]「自分は妻に対しては、ときどき他人と一つ家にゐるやうな、さびしい気分になることがあるけれど、どうも女のたちが、少し私には触(サハ)りが冷たいからだらうか」(出典:桑の実(1913)〈鈴木三重吉〉一一)
  4. 人形浄瑠璃で、義太夫以外の他流の曲節を少し取り入れた部分。
    1. [初出の実例]「サハリ お前への心中に、顔に入(ぼくろ)してきたわいな」(出典:浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)七)
  5. 義太夫一曲中で、いちばんの聞かせどころ。また、聞きどころとされている箇所。転じて、一般に話や文章などの最も情緒に富み、感動的な部分。さわり文句。くどき。
    1. [初出の実例]「義太夫節の三絃(さみせん)は〈略〉さはりの音(ね)じめに女子の鼻あぶらをのせ」(出典:浮世草子・当世芝居気質(1777)一)
    2. 「やっぱり素人にはさわりのとこが一番面白うござんすわねえ」(出典:和泉屋染物店(1911)〈木下杢太郎〉)
  6. その場だけの一時のたわむれ。座興。慰み。
    1. [初出の実例]「今のはわしがてんごう口、比合いなさはりに成らふと、思ひの外かの御肝積、真平(まっぴら)あやまり奉る」(出典:浄瑠璃・持丸長者金笄剣(1794)一)
  7. 三味線の装置。複雑な倍音が生じ、余韻が強く長くなるように、三味線の一の糸を上駒(かみごま)からはずして直接棹に接触させ、乳袋(ちぶくろ)の一部(棹の表面で、上駒に近い部分)を削りとり、一の糸を弾くと、上駒の下一センチメートル余りの所で軽く触れるようにした装置。
    1. [初出の実例]「オヤ一糸(いち)のさはりも、以前(せん)よりは能くなったよ」(出典:人情本・清談松の調(1840‐41)初)
  8. 女性を誘惑する手段として、人混みの中で、その手や体にさわることをいう、不良青少年仲間の隠語。
    1. [初出の実例]「『握り。障(サハ)り。話し。プログラム。落ちますよ。〈略〉』なぞ、彼等の昔ながらの『婦女誘惑術』」(出典:浅草紅団(1929‐30)〈川端康成〉一五)

そく【触】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「そく」は「触」の呉音 ) 仏語。
  2. ( [梵語] sparśa の意訳 ) 感覚器官と対象物と認識する心とが和合した時に生ずる精神作用。主観と客観の接触によって生ずる感覚。
    1. [初出の実例]「六処為因触為縁」(出典:秘蔵宝鑰(830頃)中)
    2. [その他の文献]〔倶舎論‐四〕
  3. 十二因縁の一つ。二、三歳ごろの嬰児の、六根・六境・六識の和合は認められるが、まだ苦楽の差別をはっきり知らない位をいう。
    1. [初出の実例]「十二因縁といふは一者無明、二者行、三者識、四者名色、五者六入、六者触、七者受、八者愛、九者取、十者有、十一者生、十二者老死」(出典:正法眼蔵(1231‐53)仏教)
    2. [その他の文献]〔大蔵法数‐六一〕
  4. そっきょう(触境)
    1. [初出の実例]「香にをもねらず、味に不耽ず、触に不随ず、法に不迷ず」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)
    2. [その他の文献]〔倶舎論‐一〕
  5. 不浄のこと。
    1. [初出の実例]「触は籌斗(ちうと)になげおき、浄はもとより籌架にあり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)洗浄)

ふれ【触】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ふれる(触)」の連用形の名詞化 )
  2. 触れること。特に、広く一般に告げ知らせること。〔羅葡日辞書(1595)〕
    1. [初出の実例]「さいはい関送りとて隔子(かうし)の女郎ひとりも残さず一日買とふれをなし」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)五)
  3. ( 「布令」とも ) 官府から広く世間に布告すること。また、その文書。ふれがき。
    1. [初出の実例]「此外一向可被停止之旨、厳密触之被仰之処也」(出典:吾妻鏡‐建長三年(1251)一二月三日)
  4. 相撲で、取組みごとに東西の力士の名を呼んで、土俵にのぼらせること。また、その人。前行司(まえぎょうじ)。呼び出し奴。〔随筆・相撲今昔物語(1785)〕
  5. 歌舞伎興行などで、上演する種目・出演俳優・上演時間などを、大声で知らせて回ること。また、その人。
  6. 物売りが歩き回って、売っている品物の名を呼ばわること。
    1. [初出の実例]「『鯉の子、金魚ヨイ』といふ触れの声が」(出典:崖の下(1928)〈嘉村礒多〉)

しょく【触】

  1. 〘 名詞 〙そく(触)

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普及版 字通 「触」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

(旧字)觸
20画

[字音] ショク
[字訓] ふれる・さわる

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
旧字は觸に作り、蜀(しよく)声。〔説文〕四下に「牴(あた)るなり」とあり、角を以て相争うことをいう。蜀は牡獣。角を以て物に触れることから、触覚・抵触、また触法の意となる。

[訓義]
1. ふれる、さわる。
2. つく、あたる、おかす。
3. うごかす、けがす。

[古辞書の訓]
名義抄〕觸 フル・カカル・コトニ・ウゴク・ウツ・ツク・アキラカニ 〔立〕觸 ケガル・コトニ・フルナリ・フル・ナツク・カカル

[語系]
觸thjiok、zjiokは声義近く、觸は牡獣が角を以て争う意。は〔説文〕八下に「气(き)をんにして怒るなり」とあり、そのときの奮怒するさまをいう。獨(独)dokも声韻の関係があり、同じ系列の語である。

[熟語]
触衣・触雨・触汚・触礙・触角・触覚・触陥・触官・触感・触眼・触忌・触・触器・触機・触禁・触景・触激・触撃・触蹶・触忤・触罪・触死・触刺・触邪・触手・触処・触緒・触地・触置・触抵・触觝・触塗・触動・触突・触熱・触発・触犯・触鼻・触鋒・触冒・触網・触目・触癢・触類
[下接語]
一触・感触・撃触・接触・抵触・觝触・犯触

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改訂新版 世界大百科事典 「触」の意味・わかりやすい解説

触 (ふれ)

江戸時代の幕府制定法の一形式。〈御触〉〈御触書〉〈御触事〉と呼ばれた。幕府の法令は通常,〈御触書〉もしくは〈(たつし)〉の形式で公布され,〈御触書〉は一般にひろく触れ知らせる場合に用いられ,〈達〉は関係官庁または関係者だけに通達するときに用いられた。〈御触書〉は,老中若年寄部局で草案が作成され,将軍の裁決を経たのち,表右筆(おもてゆうひつ)部屋でその写しを必要な部数だけ作り,〈書付〉の形で老中みずから,あるいは大目付目付三奉行,その他各方面にこれを配布し,彼らをして関係方面または一般に触れさせたのである。いかなる方面に配布するかは,御触の内容により一定していない。江戸では,老中から出された御触を〈惣触(そうぶれ)〉,町奉行が管轄内の事項について発した御触を〈町触〉といった。幕府は数次にわたり〈御触書〉を編集して〈御触書集成〉を作っている。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「触」の意味・わかりやすい解説

触【ふれ】

江戸幕府の法令中法度(はっと)以外のもので広く一般に通達したもの。御触書(おふれがき),触書,御触とも。法度は将軍の名で公布されたが,普通の法令は老中が書付の形で目付,三奉行等に配付,必要に応じて彼らに通達させた。
→関連項目町触村請

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「触」の解説


ふれ

江戸時代,幕藩領主が定めた法令・命令を広く知らせる行為,また公布された法度類。比較的広範囲に触れ出されるものを触,関係部局だけに通達するものを達(たっし)といって区別したといわれるが,幕府の編集した「御触書集成」は触と達の別なく収録している。触書は触を書き付けたもの。幕府が全国に公布する触書は表右筆(ゆうひつ)が必要な部数を作り,老中から大名留守居,大目付・目付らに渡され,そこから大名・旗本領へ,一方,町奉行・代官を通じては幕領町村へ回達された。町奉行から管下の町に触れられた法令を町触,浦方のみを対象とした法令を浦触という。寺院へは寺社奉行から各宗派の触頭(ふれがしら)を通じて全国の寺院へ伝えられた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「触」の意味・わかりやすい解説


ふれ

御触書」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【仏教】より

…分別的な認識)→(4)名色(みようしき)(精神的要素と物質的要素。認識の対象)→(5)六入(ろくにゆう)(眼・耳・鼻・舌・身・意の六種の感官)→(6)触(そく)(認識,感官,対象の接触)→(7)受(じゆ)(苦楽などの感受)→(8)愛(渇愛(かつあい)。本能的欲望)→(9)取(しゆ)(執着。…

【壱岐】より

…その間に発達する谷はいずれも短く,わずかに東流する谷江川と幡鉾(はたほこ)川に比較的広い河谷平野が見られる。 集落は触(ふれ)とよばれる農村と,浦とよばれる漁村とからなり,前者は散村,後者は集村の顕著な対照をなす。台地上に発達する散村は古来〈在〉とよばれた農業集落であるが,触と称する小字に統合されて,江戸時代には耕地権のみを与えられていた。…

【達】より

…達書(たつしがき)として書面で令達されたほか,口頭で申し渡す口達(くたつ∥こうたつ)もあった。幕府の法令は通常(ふれ)もしくは達の形式で公布されたが,触が比較的広い範囲に触れ知らせるものであったのに対し,達は関係役所または関係者にのみ伝える場合に用いられた。したがって一般的な法規よりも,一回限りの具体的処分や,部内の訓令・通達というべきものが多かった。…

【藩法】より

…宗門改め,度量衡,交通など江戸幕府の全国的支配権に属することを除けば,藩はかなりの自律を認められ,〈万事江戸之法度の如く,国々所々に於て之を遵行すべし〉(寛永12年武家諸法度)といった限定はあるものの,各藩はそれぞれ別個の藩法を施行した。一方,幕府制定法には,諸大名にも触れ知らせる法と,幕府領のみに発する法とがあった。前者について藩はおおむねこれを遵奉し,公儀御触()を藩内に触れ流したものの,藩の実情に合わない場合などあえてこれを無視し,藩内に施行しなかったこともまれではなかった。…

【町触】より

…江戸時代,町方に対し発せられた(ふれ)。江戸幕府および諸藩の制定法は,触の形式で一般人民に公示され,町方へは町触として,その地の奉行が伝達した。…

※「触」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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