界面電気現象(読み)かいめんでんきげんしょう(英語表記)electrical surface phenomenon

改訂新版 世界大百科事典 「界面電気現象」の意味・わかりやすい解説

界面電気現象 (かいめんでんきげんしょう)
electrical surface phenomenon

気相,液相,固相の組合せによる二つの異なった相の境界面(界面)には,電位差が現れ,これに対応して電荷の不均一な分布を生ずる。たとえば固体-液体界面では,溶液中からの正負イオンいずれかの界面への選択的吸着,固体表面の分子解離,双極子の界面への吸着配列によって,電荷の不均一な分布を生ずる。これを界面電気二重層といい,そのうち,イオンの不均一分布による電気二重層をイオン二重層,双極子の吸着による電気二重層を双極子二重層という。電気二重層に起因する各種の電気効果を界面電気現象といい,界面静電現象と界面動電現象に大別される。

電気毛管現象,膜電位表面電位など,いずれも相平衡に関連した現象である。電気毛管現象は,無関係塩(金属面で電解酸化,電解還元を行わない塩)溶液と接する金属の界面張力に関した現象で,常温で液体である水銀について最もよく研究がされている。図1に示すように,水銀と水溶液の界面張力は界面に加えた電位差によって曲線A~Dのように変化する。加えた電位差と界面張力の関係を電気毛管曲線という。界面張力は物質の吸着によって変化するから,溶液中に吸着質を溶解すると,電気毛管曲線が変化する。たとえば,1規定(1N)塩化カリウムKCl溶液に1/10規定のフェノールC6H5OHを加えると,曲線BはEのように変化する。この電気毛管曲線から電気二重層についての種々の知見が得られる。膜電位には,ドンナン膜電位特性膜電位,表面電位などがある。ドンナン膜電位は,半透膜を隔てて両側コロイド電解質と低分子イオンの液が存在して,いわゆるドンナン膜平衡が成立したときに発生する膜電位,特性膜電位は,濃度の異なる二液相が接したとき拡散電位が発生しなくても膜で二液相を隔てると,膜内のイオン移動度が液の場合とは異なるために発生する電位差である。また表面電位は,液体(または固体)と気体との接触電位差が表面の双極子の配向や気体の吸着などによって変化する効果である。

多孔質の隔膜を溶液中に入れると,毛管部分に電気二重層が形成される。この隔膜の両側に電位差を与えると,固-液の相対的移動を生じ,液体の移動が起こる。この現象を電気浸透という。コロイドの場合には,コロイド粒子のほうが移動する。これを電気泳動という。また隔膜などの多孔質膜を通して液を流動させると,膜の両面に電位差を生ずる。この電位差を流動電位と呼ぶ。さらにコロイド粒子を重力によって沈降させたり,遠心力によって強制沈降させるときに液の上下に生ずる電位差を沈降電位(またはドルン効果)と呼ぶ。界面動電現象の相互関係を図2に示す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「界面電気現象」の意味・わかりやすい解説

界面電気現象
かいめんでんきげんしょう
electrical surface phenomenon

2つの異なる相が接している境界面に現れる電気現象。気体/液体,気体/固体,液体/液体,液体/固体,固体/固体の5つの場合が考えられる。表面ポテンシャル接触電気圧電気摩擦電気などの界面静電気現象と,電気浸透電気泳動などの界面動電気現象とがある。これらは界面化学とともに界面の複雑な構造を知るうえで重要な現象である。

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