北朝鮮と中国の国境にまたがる火山で、朝鮮第一の高峰。標高2744メートル。山頂には天池とよばれる直径約5キロメートルのカルデラ湖が存在する。玄武岩の溶岩台地上に形成された成層火山。
過去4000年の間に大規模な噴火を3度繰り返した。西暦1000年ごろにおきた噴火は白頭山の1万年間の噴火史上で最大のもので、アルカリ流紋岩(りゅうもんがん)質マグマと粗面岩(そめんがん)質マグマの噴火が約1年の間に立て続けにおこったと考えられている。火山爆発指数は7とされ、約150立方キロメートルの軽石が放出された。そのときの火山灰は、日本の東北地方北部や北海道でも数センチメートルの厚さで堆積(たいせき)している。カルデラはこの噴火で形成されたと考えられる。1597年、1668年、1702年、1898年、1903年にも噴火した記録がある。
白頭山地域では、2002年ごろから地震回数が増加し、GPS(全地球測位システム)観測によって山頂部の膨張が捉えられており、近い将来、噴火の可能性が危惧されている。
山の中腹から頂上にかけて白い軽石に覆われているので、白頭山の名がついたという。山頂から南方にかけて大臙肢(だいえんし)峰(2360メートル)、小臙肢峰(2133メートル)の寄生火山がある。白頭山の最高峰は将軍峰で、望天吼(ぼうてんこう)(2651メートル)、白岩山(2741メートル)、遮日峰(2735メートル)とともに天池を囲んでいる。天池は海抜2257メートルにあり、南北5キロメートル、東西4キロメートル、湖水の周囲18.7キロメートル。深度は約300メートル、水温は表層で7.2℃(夏)。天池の水は北側の撻門(たつもん)を流れ、松花江(しょうかこう)の源流をなしている。
白頭山の山林限界線は、2100メートルの上部が高山草原帯、下部は順次、高山低木帯、上部針葉林帯、中部針葉林帯、下部針葉林帯に区分されている。動物は西シベリア亜地帯に属し、密林中にはチョウセントラ、シカ、オオヤマネコ、ノロなど、鳥類はフクロウ、ライチョウ、キツツキが生息している。
白頭山は別名不咸(ふかん)山、太白山ともいう。また中国ではチャンパイシャン(長白山)とよび、満洲族はコオレミンサンエンウレン(果勒敏珊延阿林)とよび、清(しん)朝の発祥地として崇(あが)めている。
[魚 塘・中田節也]
中国と朝鮮の国境にある山。長白山脈(長白山)の主峰で,標高2744m。頂上付近に周囲約2kmの天池または竜王潭と呼ばれるカルデラ湖がある。新生代第三紀から第四紀にかけての火山活動で生じた火山だが,現在は死火山。元来1500m内外の火山岩台地の上に噴出したアルカリ粗面岩の鐘状火山だったが,さらにその上に噴出した玄武岩によって楯状火山となった。上層部を軽石層が広く覆い,白く見えるところから白頭山の名が由来した。白頭山から南方には日本海まで走る険峻な摩天嶺山脈を中心に,落差1000m内外の急崖をもつ蓋馬(かいま)高原が立ちはだかっており,いまだに人跡まれな山である。中国と朝鮮の国境河川である鴨緑(おうりよく)江と豆満(とまん)江,それにアムール川(黒竜江)の支流松花江の源流である。古くから神秘の山とされ,朝鮮族や中国東北諸族の建国神話の舞台となっている。李朝と清朝の間でしばしば国境をめぐって紛争が生じ,1712年,兵使峰と大臙脂峰の間に白頭山定界碑が建てられた。しかしその後碑面の〈土們〉という文字の解釈をめぐって〈間島問題〉が生ずるなど,白頭山頂上付近の中国,朝鮮の国境はなかなか確定しなかった。日本の植民地時代には,山麓の森林地帯が抗日パルチザン闘争の根拠地となった。とくに金日成を中心とする祖国光復会の活躍が有名で,しばしば国境地帯の日本軍と衝突した。独立後,朝鮮民主主義人民共和国では白頭山を朝鮮における社会主義革命の聖地として尊んでいる。
執筆者:谷浦 孝雄
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…解放後精力的に詩を書き,51年朝鮮文学芸術総同盟の副委員長になるが,朝鮮戦争により戦死した。作品には土地改革をテーマとした抒情詩《土のうた》(1946),抗日パルチザンの普天堡の戦を描いた長編叙事詩《白頭山》(1947),労働者の新生活を歌った《生のうた》(1950),南朝鮮の麗水反乱事件をあつかった連詩《たたかう麗水》(1948)などがある。【金 学 烈】。…
…地勢は南東に高く,北西に向かって低くなる。東部は長白山地からなり,主峰は標高2691mの白頭山で,朝鮮との国境にそびえる火山である。火口湖の天池は松花江の源流をなす。…
…北東~南西に走る平行山脈からなり,古い褶曲山脈が火山活動と河川の浸食をうけて形成されたものである。国境を走り,主峰白頭山(2744m)をいただく狭義の長白山脈のほか,完達山,穆棱窩集嶺,老爺嶺,張広才嶺,吉林哈達嶺,老嶺などを含み,紅松など森林が繁茂し,毛皮獣に富み,多様な鉱物資源を豊富に埋蔵する。【河野 通博】 朝鮮側では白頭山から南南東に走る山脈を摩天嶺山脈といい,これと長白山脈をのせる台地は,東西240km,南北400kmに達する広さをもち,朝鮮の屋根とされている。…
※「白頭山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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