同一の運送品を数人の運送人が相次いで運送すること。交通,通信および金融の各機関が発達するにつれて,取引地域が拡大し,遠隔地との取引が盛んになり,一運送人が,自分で全区間の運送をすることが不可能な場合も多くなり,数人の運送人が相次いで運送することが必要となる。
相次運送には,(1)数人の運送人がそれぞれ独立して,各特定区間の運送を引き受ける場合(部分運送),(2)一運送人が全部の区間の運送を引き受け,その全部または一部を他の運送人に運送させる場合(下請運送),(3)数人の運送人が共同して全部の区間の運送を引き受け,内部関係においてそれぞれの担当区間を定める場合(同一運送),(4)数人の運送人が順次に,1通の運送状とともに運送品を受け取って運送に従事する場合(共同運送,連帯運送)がある。このうち,下請運送,同一運送および共同運送,連帯運送を通し運送といい,この運送の型態が現代において盛んになっている。通し運送によると,売買等の当事者としては,中継費を節約できるだけでなく,全部の区間の確定運送賃を知ることができて便利である。また運送人から通し貨物引換証や通し船荷証券の交付を受けて荷為替を組んだり,運送中の運送品の処分をする便宜がある。運送人としても,通し運送を引き受けることにより多数の運送品を獲得できる。
商法は,相次運送人と荷送人との関係について,数人相次いで運送する場合には,各運送人は,運送品の滅失,毀損(きそん)または延着につき連帯して損害賠償の責めに任ずるものとしている(579条)。この規定は,(4)の共同運送,連帯運送について適用される。しかし,この規定は任意規定であり,実際には,通し貨物引換証や通し船荷証券には,各運送人の運送区間を明らかにし,各運送人はそれぞれの区間において生じた損害についてのみ責任を負うものとする責任限定約款が定められている。また相次運送人相互間について,運送品を次の運送人に引き渡した運送人は,運送品を占有していないから,運送賃その他の債権の行使のため留置権や先取特権などを行使することができないので,後の運送人が前の運送人に代わってその権利を行使する義務があり,もし,後の運送人が前の運送人に弁済すれば,前の運送人の権利を取得するものとされている(商法589,563条)。
執筆者:石田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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