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着付 きつけ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

着付
きつけ

概説

人に衣服を着せ付けること、また着せ付けられた状態をさす。あるいは着る方法、着こなしをいう。公家(くげ)男子の装束は平安後期になって、それまでの萎(なえ)装束から、糊(のり)をつけて固く角張らせ威儀を正した強(こわ)装束に変わった。そのため着装がむずかしくなり、その道の専門家が必要となった。「衣紋道(えもんどう)」は装束を美しく着付けるための一定の作法で、鳥羽(とば)天皇(在位1107~23)のころの源有仁(ありひと)は、とくにその道に優れ、衣紋道の祖といわれる。鎌倉時代には大炊御門(おおいみかど)、徳大寺の両家がこれを伝承し、のちに高倉、山科(やましな)の両家が受け継いで、江戸時代末まで続いた。明治以後は宮内庁に継承されて今日に至っている。
 一般では自分で着るのが普通であったが、大正以降女子の結髪、化粧、着付を専門とする美容師が現れて、主として花嫁衣装の着付はこれらの人が行うようになった。和服を自分で上手に着られない若い人が多い現在、盛装のときは専門家に着付を依頼する傾向がみられる。第二次世界大戦後、和服が非日常化していくなかで、昭和30年代末から和服の復興と普及を目ざして、日常着から礼装、男子や子供の祝い着まで、着付の技術を専門に教える「着付学校」ができ始めた。またその指導者を社会に送り出し、各地に着付教室が開かれている。
 和服は洋服のように、その人の体型にあわせて仕立てられた成形衣ではなく、平面的な構成になっているため、紐(ひも)や帯を使って体に着付けていくことで着物姿ができあがっていく。衿(えり)のあわせ方、抜き加減、帯の位置、結び方などで礼装向きに、街着向きに、また上品にも粋(いき)にも、モダンにもと、着付によって変化させることができる。着付のポイントは、形よく美しく着るだけではなく、苦しくなく着心地がよいこと、動作によって着くずれをおこさぬこと、手早く着付けることなどであるが、それには着慣れることが第一である。最近は、より簡単に自分で着られるように、そのための小道具も市販されている。[太田博子]
女子着付の要点
(1)体型の補整。和装に適した体型は凹凸の少ないずんどう型である。これだと帯が安定して着くずれしない。ウエストのくびれは着くずれのもとなので、晒(さらし)かタオルを二つ折りにして巻く。鎖骨のくぼみは衿元にしわが出やすい。タオルを縦四つ折りにしてV字型に当てる。胸が豊かな人は、みぞおちにガーゼに包んだ綿花を当て、胸から帯までなだらかな線を出す。ヒップが下がっていると、帯のたれがはね上がったり、しわが出たりするので、畳んだタオルを腰紐にかけて腰のへこみに当てる。ただし補整の行きすぎは不自然なので、体型をよく知り、欠点を補う程度にとどめたい。(2)半衿は、あらかじめ薄地の帯芯(おびしん)程度のものを長襦袢(ながじゅばん)の衿につけておき、その上から掛けると衿元がしっかりする。(3)長襦袢の丈は普通は、くるぶしの下程度に仕立てるが、礼装用はこれより2~3センチメートル長くしておく。(4)長着は身長と同寸くらいに仕立てると、おはしょりの分量がちょうどよい。そのほか身幅、裄(ゆき)など、仕立上がり寸法が着装者にあっていることが必要である。(5)紐数は少なくし、要所をきちんと締める。(6)手順よく早く着るためには、着付にかかる前に必要な小物類を全部そろえておく。着付に必要なものは、足袋(たび)、肌襦袢、裾(すそ)よけ、長襦袢、帯板、帯枕(おびまくら)、帯締、伊達(だて)締、腰紐、補整用のタオル、晒、ガーゼ、綿花などである。[太田博子]
男子着付の要点
(1)衿は首に自然に沿わせて、抜かない。(2)背縫いがきちんと体の中心になるように着る。(3)帯は腰骨の上に、前を下げるように結ぶ。そのため、やせている人、偏平な体型の人は、腹部をタオルで補整するとよい。着付に必要なものは足袋、肌襦袢、長襦袢、細紐などである。以上のほかに着付ということばは、能装束や歌舞伎(かぶき)の衣装にも用いられている。[太田博子]

能装束

能装束は表着(うわぎ)、着付、袴(はかま)、帯、被(かぶ)り物の類に分けられる。そのうち表着は狩衣(かりぎぬ)、法被(はっぴ)、長絹(ちょうけん)、水衣(みずごろも)、舞衣(まいごろも)、唐織(からおり)など上に着るものをさす。着付とは、これら表着の下に着る厚板(あついた)、摺箔(すりはく)、縫箔(ぬいはく)、熨斗目(のしめ)、白練(しろねり)など、小袖(こそで)形の衣服を総称していう。[太田博子]

歌舞伎衣装

歌舞伎衣装では、着物のことを着付とよんでおり、「着付をする」という場合は、決められた順序に従い着装するという意味を表す。着付の種類には、石持(こくもち)、紙衣(かみこ)、胴抜(どうぬき)、首抜(くびぬき)、熨斗目、付付(つけつき)着付、覆輪(ふくりん)、切継(きりつぎ)など20種くらいのものがある。石持は家紋をつけるところを、丸く白の抜き染めにしたもので、身分の低い武家、浪人、百姓などの女房役が着るが、男子は百姓、漁師などのうち、重要な役を演じる者が着る。付付着付は着付に下着をつけて仕立てたもので、着装上の便利さや、舞台で動作がしやすいようにくふうされた独特のものである。白二枚付付着付といえば、衿元で白の下着を2枚重ねて着ている感じを出し、身分の高さを表している。[太田博子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の着付の言及

【能装束】より

…徳川家をはじめ,井伊家,池田家,細川家,前田家などの大名家に守り伝えられた能装束は,今日もなお一部が保存されている。
[装束の種類]
 広義の能装束は,用途上から分類すると,仮髪(かはつ),かぶり物,上衣(うわぎ)の類,着付(きつけ)の類,上衣・着付両用の類,袴の類,その他に分けられる。なお〈着付〉という言葉は,装束を着ることそのものを指す場合もあるが,能においては着装のことを物着せと称するのが普通であり,本稿で〈着付〉と記すのはすべて装束の種類としての〈着付の類〉で,小袖類の唐織,厚板(あついた),摺箔(すりはく),縫箔(ぬいはく)(繡箔(ぬいはく))などを意味する。…

※「着付」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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