日本大百科全書(ニッポニカ) 「睦月神事」の意味・わかりやすい解説
睦月神事
むつきしんじ
福井県福井市大森町の賀茂(かも)神社の行事。国の重要無形民俗文化財。4年目ごとの2月14日(もと陰暦正月)に行われる。同系の行事は能登(のと)半島の石川県輪島(わじま)市門前町鬼屋(もんぜんまちおにや)、福井市国山(くにやま)町、福井県今立(いまだて)郡池田町水海(みずうみ)、敦賀(つるが)市野坂にも現存している。敦賀市内にはほかに金山(かなやま)、沓見(くつみ)の二か所に伝えられていたが、いまは失われた。これらはいずれもナリハイ(農)とよんできたもので、千秋万歳(せんずまんざい)形式の田遊(たあそび)であった。2人の大夫(たゆう)を主役に、言立(ことだつ)から始まり、田打ちから刈上げまで、養蚕などを含めて長編の詞章の誦謡(しょうよう)と歌舞をもって表現する。大森では田楽(でんがく)も取り入れ、はでな演出になっているが、厳格な宮座(みやざ)のもとに重厚で古風を伝えるのは、正月3日(現在4年目ごと)に行う福井市国山町の八王子神社の行事である。
[新井恒易]