田遊び(読み)タアソビ

デジタル大辞泉 「田遊び」の意味・読み・例文・類語

た‐あそび【田遊び】

その年の稲の豊作を予祝する神事芸能。多く正月に、社寺境内などで田打ちから収穫に至る一連農作業を模擬的に演じる。地方により、御田おんだ・御田祭り・御田植え祭りなどともいう。 新年》

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田遊び」の意味・わかりやすい解説

田遊び
たあそび

新年に行なわれる豊作祈願予祝行事の一つ。御田(おんだ),春田打,田祭,庭田植えなどとも呼ばれる。寺院修正会にともなって行なわれてきたものも多い。地方により繁簡の差はあるが,神社の拝殿や境内を田に見立て,太鼓や歌に合わせて,田打ち,代掻,早苗取り,虫送りなどの様子を演じるもので,多くは田植えまで演じて終わるが,収穫まで演じる祭りもある。また,田植えの演目に昼飯持(ひるまもち)などと呼ばれるはらみ女が登場し,人形を用いて出産のさまを見せる例も多い。の影響を受けたものもあり,地方によっては田楽猿楽神楽などの芸能とともに行なわれる。東北地方に伝わる田植踊は,田遊びのうちの早乙女の踊りを中心とする一連の仕様が風流化されたものといわれる。

田遊び[藤守]
たあそび[ふじもり]

静岡県中部,焼津市藤守の大井八幡宮で毎年 3月17日に行なわれる祭り。かつては旧暦正月17日に行なわれていた。神社の舞台で,番外の「天狗」から始まり,「長刀」「振取(ふっとり)」「御獅子」のあと,「鍬入」「荒田」「寄塗」「水口申」「鳥追」「山田」「徳太夫」「麦搗」「田植」「代草」「孕早乙女」「小編木(ござさら)」「早乙女」「高野殿」「棒」「神子(かみこ)舞」「間(ま)田楽」「猿田楽」「宝来ほうらい)」「稲刈」と,耕作に関わる演目と演劇的な演目が続き,再び「長刀」「御獅子」が行なわれ,番外の「鯛釣」「天狗」で終わる。このうち,「振取」と「徳太夫」「棒」「間田楽」「猿田楽」では,舞手が頭には造花の飾りを付けた花笠をかぶり,色たすきを着て登場する。このときの色たすきは,本来は新嫁から借りることになっており,子をはらむこととイネの開花とが合わさって,豊作を祈る意味があるとされる。国の重要無形民俗文化財。田遊びは大井川流域数ヵ所に伝承されている。(→田遊び

田遊び[徳丸]
たあそび[とくまる]

東京都板橋区徳丸の北野神社の 2月11日の行事。神社境内に注連縄(しめなわ)で区画された「もがり」と呼ばれる場所で,中央に太鼓を据えて行なわれる。演目は,町歩調べ,田うない(田起こし),代掻き牛(しろかきうし。→代掻),種まき,鳥追い,春田うない,再び代掻き牛,施肥,田ならし,田植え,よなぼ,やすめ,太郎次,獅子,駒,田の草取り,稲刈り,倉入れ,と一年の田の行事をひととおり見せ,五穀豊穣と子孫繁栄を祈願する。「よなぼ」という赤子の人形は稲魂を表すと考えられる。国の重要無形民俗文化財。(→田遊び

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