日本大百科全書(ニッポニカ) 「砒白金鉱」の意味・わかりやすい解説
砒白金鉱
ひはっきんこう
sperrylite
白金の二砒化物。硫砒白金鉱platarsite(化学式PtAsS)とともに黄鉄鉱系に属するが、中間物はない。また硫砒白金鉱が多種の白金族元素をやや多量に含むものばかりであるのに対し、砒白金鉱のほうはきわめて端成分に近いか、あるいは安白金鉱geversite(PtSb2)との中間物の方向に化学組成変化領域が広がっている。自形は立方体、立方体と正八面体の聚形(しゅうけい)(複合立体)、あるいは正八面体。大きい粒では非常に複雑な結晶面が見られる。正マグマ性鉱床中、変塩基性岩中に産する。日本では北海道深川(ふかがわ)市鷹泊(たかどまり)の砂鉱中から発見されている。
共存鉱物は磁硫鉄鉱、ペントランド鉱、ビオラル鉱violarite(FeNi2S4)、黄銅鉱、キューバ鉱、斑銅鉱(はんどうこう)、閃亜鉛鉱(せんあえんこう)、方鉛鉱、磁鉄鉱、自然金、クロム鉄鉱、チタン鉄鉱、黄鉄鉱、自然白金など。ほかに白金族元素の鉱物が数多くある。同定は形態、非常に高い硬度、大きな比重、光沢が強いので見た目には白く見えるが、鉄黒色の条痕(じょうこん)など。英名は本鉱の最初の発見者カナダ、オンタリオ州サドベリー鉱山の化学技師フランシス・L・スペリーFrancis L. Sperry(1861―1906)にちなむ。
[加藤 昭]