脳を保護する3層の膜のうち、最外層の硬膜と頭蓋(とうがい)骨内面との間に、主として頭部外傷によって出血した硬膜外出血が、ある程度の大きさになって血塊を生じたものをいう。出血源は、硬膜にある血管の骨折に伴う損傷や骨組織の断裂による骨内の静脈(板間静脈)などの破綻(はたん)である。すなわち、血腫は打撲部位の骨折に関連して形成されるわけであるが、通常、血腫は骨折部の直下に形成される。好発部位としては前頭側頭部が多く、ついで頭頂部、上矢状洞部(頭蓋の正中近くの部位)、後頭蓋窩(か)などにみられる。
症状として特徴的なのは硬膜下血腫ほど症状の進行が速くない点であり、意識障害がおこるまでに数十分から数時間の意識清明期を経過する場合がある。すなわち、受傷直後は意識清明であるか、または一過性の意識障害にすぎなかったのが、数時間経過後、徐々にあるいは急速に昏睡(こんすい)状態となるような場合、硬膜外血腫が強く疑われるわけである。
今日ではCT(コンピュータ断層撮影法)によって容易に診断できる。CT上、頭蓋骨に接した両凸レンズ形の白っぽい高吸収域として示される。MRI(磁気共鳴映像法)上では、硬膜は血腫を明確に境する線条として描出されるため、MRIはCTよりも明確に硬膜外、硬膜下血腫を鑑別できる。血腫は高信号域として白っぽく表される。最近では脳血管撮影は省略される。脳血管撮影では、主幹動脈、静脈の偏位と無血管領野の存在から血腫の部位と種類が診断される。初期のうちに適切な治療が行われず放置されると、血腫による圧迫のため脳幹部の障害(脳ヘルニア)をおこし、死に至ることとなる。したがって、頭部外傷急性期において、とくに骨折が認められるような場合は詳しく観察し、硬膜外血腫の診断がつきしだい、ただちに手術によって血腫を取り除き、破綻した動静脈や静脈洞からの出血を止める必要がある。しかし血腫の厚さ20ミリメートル、容積20ミリリットル以下のものでは手術を行わないでも自然に吸収されることがある。硬膜外血腫では脳に損傷を伴うことが比較的少なく、早期に正しく診断され手術が行われると、予後はたいへん良好である。
[加川瑞夫]
頭蓋と硬膜の間に発生する急性頭蓋内血腫の一種(急性頭蓋内血腫は発生部位によって硬膜外血腫,硬膜下血腫,脳内血腫の3種に分類される)。硬膜外血腫は強い頭部打撲によることが多く,頭蓋骨折により硬膜動脈または頭蓋静脈洞が断裂したために生ずる。一般に意識障害,瞳孔不同,対光反射消失,片麻痺などの神経症状が急速に発現し,救急手術によって血腫を除去しなければ,脳圧迫(脳ヘルニア)のため死に至る。硬膜外血腫による死亡は,頭部外傷死の3~11%を占めるが,中年,老年に多く,2歳以下の乳幼児では少ない。受傷からしばらくの間意識清明であったものが,数時間後から進行性の意識障害,瞳孔不同その他の神経症状を呈する経過は,硬膜外血腫に特徴的である。救命するためには,脳死に至る前に血腫を除去しなければならないので,診断と手術の施行には敏速を要する。
→脳内出血
執筆者:浅野 孝雄
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