人形浄瑠璃。時代物。5段。若竹笛躬(ふえみ)・中邑阿契(なかむらあけい)の合作。1760年(宝暦10)12月大坂豊竹座初演。ただし番付には〈ぎおんによご〉とある。角書に〈三十三間堂平太郎縁起〉とあるように,三十三間堂の縁起と親羅(親鸞(しんらん))上人の弟子平太郎のことに,祇園女御・平忠盛をからめた作。先行の古浄瑠璃が多い。寛永期(1624-44)半ば以降,特に寛文期(1661-73)には親鸞記物が多作され(《しんらんき》《御かいさんしんらんき》など),また平太郎物には,1666年の《よこぞねの平太郎》,寛文末ごろの《熊野権現開帳》など,ほかに出羽掾正本《都三十三間堂棟由来(むなぎのゆらい)》(山本河内掾作)もあった。本作に先立って,歌舞伎に,1719年(享保4)8月大坂竹島座(中の芝居)の《柳女(やなぎさくら)九重錦》,31年5月大坂佐渡嶋座(角の芝居)の《三十三間堂棟由来》などがある。白河法皇の病気の原因は,前生のどくろが柳の古木の梢にかかってゆれるためとわかる。そこで,その柳を切り,三十三間堂の棟木(むなぎ)にする役に忠盛が任じられる。横曾根平太郎と契り一子緑丸をもうけていた妻お柳は,実はその柳の精であったので,夫と子に別れを告げて去る。やがて柳は切り倒され,平太郎の木遣り音頭で緑丸に引かれて動く。平太郎と緑丸は都に上り,将来親羅上人に仕えよという霊夢を見る。一方,白河法皇の側室祇園女御を忠盛が賜り,二人の間に男子が生まれる。初演の時は三段目で,柳の大木を車に乗せ緑丸の小人形が花道を引っぱっていくからくりが好評を得た(《浄瑠璃譜》)。この三段目をほとんどそのままに,1825年(文政8)7月《卅三間堂棟由来》と改題。歌舞伎でも上演される。通称《三十三間堂》《柳》。
執筆者:佐藤 彰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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