内区の主文様が東王父,西王母,伯牙,黄帝などの神仏像と竜虎などの霊獣で構成される鏡。後漢の中ごろにあらわれ,三国・西晋時代に流行し,南北朝までつづいた鏡であり,当時民間に普及した神仙思想を背景としている。縁の形態によって平縁神獣鏡と三角縁神獣鏡とがある。また文様の配列により,中央の鈕を中心にした放射式・周列式・求心式神獣鏡,一方向からみる重列式・同向式神獣鏡,対置する形式である対置式神獣鏡がある。また,平縁の部分に飛禽や神仙などの画文帯をつけた画文帯神獣鏡や,環状乳神獣鏡というやや小型のものがある。日本における出土例としては,画文帯神獣鏡は景初3年(239)銘のある大阪府黄金塚古墳出土例が知られている。また同じ銘文構成をもつ三角縁神獣鏡が群馬県柴崎古墳,兵庫県森尾古墳などから出土しており,中国の工人が日本に来てこれらを製作したとする考えがある。また,これに対して,これらは《魏志倭人伝》にいう魏の景初3年に洛陽でつくられ,日本に舶載された鏡であると考える学者もある。なお,神獣鏡の神仙の像を仏像におきかえた仏獣鏡がある。
→鏡 →三角縁神獣鏡
執筆者:岡崎 敬
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半肉彫表現の神仙像や霊獣を主文とする鏡。中国の漢代後半~六朝初期に盛行。日本では古墳から出土する数が最も多い。神仙像には東王父(とうおうふ)・西王母(さいおうぼ)・伯牙(はくが)弾琴像・五帝・天皇・黄帝,獣には竜・虎などがある。これらの図像構成や鏡縁の違いによって対置式神獣鏡・環状乳神獣鏡・同向式神獣鏡・階段式神獣鏡・三角縁神獣鏡などに分類される。山梨県鳥居原古墳出土の赤烏元年(238)鏡,大阪府和泉黄金塚古墳や島根県神原(かんばら)神社古墳出土の景初3年(239)鏡,群馬県蟹沢古墳出土の正始元年(240)鏡など,中国の紀年銘をもつものも多い。
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…このうちには鋳造の年代を示す紀年鏡も含まれている。道家の東王父,西王母の神仙物語や,その時代の風俗を表す画像鏡,平面的な表出の夔鳳(きほう)・獣首の両鏡式,肉を盛った彫塑的な禽獣や竜虎で飾った神獣鏡などが著しい新鏡式である。なかでも夔鳳鏡は古い銅器にある禽形を鏡背文にしたもので,鉄で作った遺品があり,金銀の象嵌で図形の細部を表している。…
…位至三公鏡は主文が竜鳳双頭文系統で鈕の上下に〈位至〉〈三公〉,ときには〈君宜〉〈高官〉の銘文をいれたもので,後漢末より六朝前半に,中国北部で使用された。神獣鏡は後漢の中ごろに出現し,三国・西晋時代に流行し,南北朝までつづいた鏡で,当時民間に流行した神仙思想を背景としている。これには環状乳神獣鏡,重列神獣鏡,対置式神獣鏡および同向式神獣鏡などがある。…
…神像と獣形とを組み合わせて内区の図文を構成する神獣鏡のうちで,鏡縁を厚く作ったために,縁の断面が三角形になっている鏡。ほとんどは直径23cm前後の大型鏡であって,同笵(どうはん)鏡が多いことも他の神獣鏡とは異なる。…
※「神獣鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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