神獣鏡(読み)シンジュウキョウ

デジタル大辞泉 「神獣鏡」の意味・読み・例文・類語

しんじゅう‐きょう〔シンジウキヤウ〕【神獣鏡】

背面神仙霊獣の像を組み合わせた文様がある銅鏡中国後漢から六朝時代盛行し、日本古墳からも出土する。縁の形で平縁ひらぶち式と三角縁式とに大別される。

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精選版 日本国語大辞典 「神獣鏡」の意味・読み・例文・類語

しんじゅう‐きょうシンジウキャウ【神獣鏡】

  1. 〘 名詞 〙 中国の後漢中期から三国・六朝時代に盛行した漢式鏡。鏡背に神像獣形を半肉彫してあるところからいう。周縁の形により平縁(ひらぶち)式と三角縁式に大別する。日本での出土例も多く、京都府久津川車塚古墳(城陽市平川)からは両型式が出土している。

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改訂新版 世界大百科事典 「神獣鏡」の意味・わかりやすい解説

神獣鏡 (しんじゅうきょう)

内区の主文様が東王父,西王母,伯牙黄帝などの神仏像と竜虎などの霊獣で構成される鏡。後漢の中ごろにあらわれ,三国・西晋時代に流行し,南北朝までつづいた鏡であり,当時民間に普及した神仙思想を背景としている。縁の形態によって平縁神獣鏡と三角縁神獣鏡とがある。また文様の配列により,中央の鈕を中心にした放射式・周列式・求心式神獣鏡,一方向からみる重列式・同向式神獣鏡,対置する形式である対置式神獣鏡がある。また,平縁の部分に飛禽や神仙などの画文帯をつけた画文帯神獣鏡や,環状乳神獣鏡というやや小型のものがある。日本における出土例としては,画文帯神獣鏡は景初3年(239)銘のある大阪府黄金塚古墳出土例が知られている。また同じ銘文構成をもつ三角縁神獣鏡が群馬県柴崎古墳,兵庫県森尾古墳などから出土しており,中国の工人が日本に来てこれらを製作したとする考えがある。また,これに対して,これらは《魏志倭人伝》にいう魏の景初3年に洛陽でつくられ,日本に舶載された鏡であると考える学者もある。なお,神獣鏡の神仙の像を仏像におきかえた仏獣鏡がある。
 →三角縁神獣鏡
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百科事典マイペディア 「神獣鏡」の意味・わかりやすい解説

神獣鏡【しんじゅうきょう】

中国,後漢後半から三国・六朝時代の銅鏡のうち,神仙説にもとづいた神像と獣形を半肉刻したもの。縁の形や文様の配置などから様々に分類されている。平縁に絵画的な文様をもつ画文帯(がもんたい)神獣鏡や,縁の断面が三角形をなす三角縁神獣鏡などがある。日本の古墳から舶載鏡・【ぼう】製鏡ともに多く出土している。→
→関連項目漢鏡【ぼう】製鏡

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神獣鏡」の意味・わかりやすい解説

神獣鏡
しんじゅうきょう
Shen-shou-jing

中国の後漢代から魏・晋代にかけてつくられた鏡の一種。鏡背面の文様が主として神人と獣形から成るものをさす。神獣鏡には長文の銘文をもつものがあり,当時流行した神仙思想が表現されていることがうかがえる。また年号の記されたものもあって,その製作年代を知ることができる。鏡縁が三角縁のものと平縁のもの,また図像が鈕を中心として放射状に配列されたものと,一方から見るように配されたもの (重列式) の別があり,神人や獣形の数もさまざまで一定していない。鏡縁が三角をなすものは,三角縁神獣鏡といって,日本の古墳から多数発見されている。銘文からみて,魏の鏡であるといわれるが,中国では発見されていない。三角縁神獣鏡をめぐっては,邪馬台国の所在問題と関連して国産説,舶載説が入り乱れ,論争が続いている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「神獣鏡」の解説

神獣鏡
しんじゅうきょう

半肉彫表現の神仙像や霊獣を主文とする鏡。中国の漢代後半~六朝初期に盛行。日本では古墳から出土する数が最も多い。神仙像には東王父(とうおうふ)・西王母(さいおうぼ)・伯牙(はくが)弾琴像・五帝・天皇・黄帝,獣には竜・虎などがある。これらの図像構成や鏡縁の違いによって対置式神獣鏡・環状乳神獣鏡・同向式神獣鏡・階段式神獣鏡・三角縁神獣鏡などに分類される。山梨県鳥居原古墳出土の赤烏元年(238)鏡,大阪府和泉黄金塚古墳や島根県神原(かんばら)神社古墳出土の景初3年(239)鏡,群馬県蟹沢古墳出土の正始元年(240)鏡など,中国の紀年銘をもつものも多い。

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旺文社日本史事典 三訂版 「神獣鏡」の解説

神獣鏡
しんじゅうきょう

中国古代の鏡の一形式
背面に,神像と竜・虎の獣形がおもな文様として用いられた。中国で後漢から六朝時代にかけて行われ,日本の古墳からの出土例も多い。大阪府の黄金塚古墳出土の「景初三年」の銘をもつ魏の鏡も神獣鏡である。

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世界大百科事典(旧版)内の神獣鏡の言及

【鏡】より

…このうちには鋳造の年代を示す紀年鏡も含まれている。道家の東王父,西王母の神仙物語や,その時代の風俗を表す画像鏡,平面的な表出の夔鳳(きほう)・獣首の両鏡式,肉を盛った彫塑的な禽獣や竜虎で飾った神獣鏡などが著しい新鏡式である。なかでも夔鳳鏡は古い銅器にある禽形を鏡背文にしたもので,鉄で作った遺品があり,金銀の象嵌で図形の細部を表している。…

【漢鏡】より

…位至三公鏡は主文が竜鳳双頭文系統で鈕の上下に〈位至〉〈三公〉,ときには〈君宜〉〈高官〉の銘文をいれたもので,後漢末より六朝前半に,中国北部で使用された。神獣鏡は後漢の中ごろに出現し,三国・西晋時代に流行し,南北朝までつづいた鏡で,当時民間に流行した神仙思想を背景としている。これには環状乳神獣鏡,重列神獣鏡,対置式神獣鏡および同向式神獣鏡などがある。…

【三角縁神獣鏡】より

…神像と獣形とを組み合わせて内区の図文を構成する神獣鏡のうちで,鏡縁を厚く作ったために,縁の断面が三角形になっている鏡。ほとんどは直径23cm前後の大型鏡であって,同笵(どうはん)鏡が多いことも他の神獣鏡とは異なる。…

※「神獣鏡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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