神経ガス(読み)シンケイガス

デジタル大辞泉 「神経ガス」の意味・読み・例文・類語

しんけい‐ガス【神経ガス】

神経に作用する致死性の毒ガス吸入・経口摂取のほか皮膚から吸収して作用するガスもある。第二次大戦前に開発されたサリンタブンソマンなどが知られる。

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精選版 日本国語大辞典 「神経ガス」の意味・読み・例文・類語

しんけい‐ガス【神経ガス】

〘名〙 (ガスはgas) 致死性毒ガスの一種。第二次世界大戦中、ドイツが開発した有機リン系の毒ガス。神経系統、特に、視覚・筋肉バランスおよび呼吸器系統麻痺させる。タブン(Gガス)、サリン、ソマン、VXなどがある。

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百科事典マイペディア 「神経ガス」の意味・わかりやすい解説

神経ガス【しんけいガス】

有毒な有機リン酸化合物を含む毒ガスで,交感神経系と副交感神経系の均衡を失わせる作用をもつ化学兵器。1937年ドイツのシュレーダーが発見,第2次大戦で大量に製造,アウシュビッツなど強制収容所で使用され,ジャーマンガス(略してGガス)と呼ばれた。タブン,サリン,ソマンの3種が知られるほか,戦後英国で開発されたVXと呼ばれるものがある。通常,無色・無臭液体または気体で,効力在来の毒ガスの数十倍といわれ,皮膚,粘膜から微量を吸収すれば十数分以内に死亡する。日本ではオウム真理教事件をきっかけに1995年〈サリン等による人身被害の防止に関する法律〉(サリン特別法)が成立,上記すべての化合物は規制の対象となった。

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化学辞典 第2版 「神経ガス」の解説

神経ガス
シンケイガス
nerve gas

化学兵器として,戦争で用いられる有毒ガスのうち,神経をおかすものをいう.第二次世界大戦で用いられた有機リン化合物サリン,タブン,ソマンなどが代表的なもので,抗コリンエステラーゼ作用が強い.これらは,呼吸器,鼻粘膜,皮膚,眼などを通じて体内に入り,アセチルコリンの過剰刺激を生じ,筋肉の麻ひ,すなわち呼吸筋の麻ひが直接原因となって窒息死させる.この間,顔面筋内がひきつり,脂汗を流し,顔面蒼白となり,けいれんを起こす.たとえば,サリンの毒性はホスゲン(窒息性)やマスタードガス(びらん性)と比較して,それぞれ30倍,15倍強いとされる.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神経ガス」の意味・わかりやすい解説

神経ガス
しんけいがす
nerve gas

毒ガスの一種。現在各国において正式に化学兵器として採用され、農作物害虫駆除剤として開発された有機リン系毒物の系統である。吸入、経口摂取の場合のみならず、皮膚に付着しても浸透して神経細胞と突起の接合部に至り、化学伝達物質アセチルコリンの分解酵素の作用を阻害して呼吸筋など重要機能を麻痺(まひ)させる。VXは36ミリグラムを1000分の1秒作用させると殺人効果を示し、BG(サリン)100ミリグラムに匹敵すると計算される。

[和気 朗]

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