神道系大学(読み)しんとうけいだいがく

大学事典 「神道系大学」の解説

神道系大学
しんとうけいだいがく

神道系大学の歴史と現状]

現在,神道系大学には,國學院大學(東京都渋谷区)皇學館大学(三重県伊勢市)があり,両大学ともに神社本庁の神職養成機関の一つである。國學院大學の設立母体は,1882年(明治15)11月4日に神職養成と古典研究のための教育機関として創立された皇典講究所であり,同所の設立が大学の創始とされる。皇典講究所は,1890年11月に初代所長であった司法大臣山田顕義の尽力によって国史・国文・国法を講究する学校として國學院を開校し,1906年には私立國學院大學と改称,20年(大正9)に大学令によって帝国大学以外に初めて大学に昇格した私立大学8校のうちの一つである。皇典講究所は内務省の委託によって神職養成を行っていたが,第2次世界大戦後,皇典講究所が神祇関係3団体の解散合併によって神社本庁となったため,財団法人國學院大學を設立して,同法人が経営する國學院大學として再発足,1948年(昭和23)文学部を設置し,現在は5学部および大学院,法科大学院を擁する学校法人國學院大學となっている。

 國學院大學の神道文化学部(國學院大學)は,創立120周年を機に策定された21世紀研究教育計画をもとに,文学部神道学科を2002年に改組・拡充したもので,神道および内外の宗教文化を幅広く学修するための教育課程が設けられている。昼夜開講制の同学部は神道学専攻科,別科とともに,卒業後,神社本庁の神職資格(階位)が授与される学科目の履修カリキュラムが開設されている。

 私立大学においては建学の精神が大学の理念・目的を示すものとして重要であるなかで,國學院大學では,皇典講究所の初代総裁となった有栖川宮幟仁親王から授与された「告諭」に,日本の「国柄」を明らかにし,徳性を涵養することで伝統文化に基づいた日本の根本を明らかにするという,建学の精神の基礎が示されている。現在も大学の理念・目的を示した学則第1条に「神道精神に基づき人格を陶冶し,諸学の理論ならびに応用を攻究教授し,有用な人材を育成する」とうたわれており,そこに示された「神道精神」とは「日本人としての主体性を保持した寛容性と謙虚さの精神」とされ,日本の基層信仰に基づくものと解されている。なお,大学本部のある渋谷キャンパス内には,1930年(昭和5)神殿が創建され,天照大御神をはじめ天神地祇八百万の神々が祀られている。現在も神殿では毎月の月次祭ほか祈年祭,新嘗祭,大祓など一般の神社における恒例祭祀が年間を通して行われ,教職員および学生が祭典に奉仕,参列している。

 皇學館大学は,1962年(昭和37)に創立された私立大学であるが,前身の官立神宮皇學館大學は,1882年(明治15)4月30日に神宮祭主久邇宮朝彦親王の令達により,伊勢神宮の神官の子弟に国学に関する教育を行うため,伊勢の林崎文庫内に創立された神宮皇學館に起源する。神宮皇學館は1903年8月31日に勅令の「神宮皇學館官制」が公布され,神宮司庁のもとに置かれた内務省所管の官立専門学校となり,専門学校令による他の学校とは異なる性格を持っていた。1900年には総裁であった賀陽宮邦憲王より令旨を授与されたが,これが現在でも建学の精神を具体的に述べたものと解されている。1940年(昭和15)4月23日には,勅令をもって神宮皇學館大學官制が公布,内務省所管の官立専門学校から,大学令による学部,予科,附属専門部を持つ文部省所管の官立大学に昇格した。しかしながら,1945年8月の敗戦によって,同年12月15日にGHQより神道指令が発出され,国公立の学校において神道教育およびその調査研究を行うことを禁止する条項が出された結果,翌46年3月31日をもって神宮皇學館大學は廃学となった。

 その後,1962年に神宮皇學館の精神を継承する私立の皇學館大学として再興された。現在では文学,教育,現代日本社会の3学部を持つが,このうち文学部神道学科(皇學館大学)および神道学専攻科(皇學館大学)が,神社本庁の神職養成の一翼を担っている。なお,皇學館大学には國學院大學のような神殿はないが,入学式,卒業式はもとより伊勢神宮への教職員,学生の月例参拝があり,現在でも神宮との結びつきが深いことを窺わせる行事も多い。

 このほか,短期大学としては國學院大學の法人傘下にある國學院大學北海道短期大学部,系列校である國學院大學栃木短期大学が神道系大学として存在している。
著者: 藤本頼生

参考文献: 『國學院大學130年記念誌』國學院大學,2012.

参考文献: 『皇學館百二十周年記念誌―群像と回顧・展望』皇學館,2002.

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android