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祭具 サイグ

世界大百科事典 第2版の解説

さいぐ【祭具】

祭祀(さいし)に用いられる器具の総称。祭具は宗教儀礼と有機的に結合している。すなわち祭場の荘厳(しようごん)に用いられたり,神的存在と人間主体とが交わる通路づけの役割を果たしたり,また祭具自体が宗教的象徴物となるなど,さまざまな機能をになって,地上に聖なる儀礼的空間を現出させる。概して祭具は,民俗宗教においては,慣習的にその伝承様式を伝え,成立宗教においては教団の成立過程で定型化され,教義的意味づけを付与されて儀礼的行為のなかに位置づけられている。

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大辞林 第三版の解説

さいぐ【祭具】

祭祀さいしに用いられる道具・器具。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

祭具
さいぐ

祭祀(さいし)において用いられる道具、器具、祭祀のシンボリズムを構成する物質的要素。仏教では仏具とよぶので、神道(しんとう)で神具とよぶこともあるが、一般に、仏教以外の宗教では祭具と呼び習わされている。[中村恭子]

機能

祭祀は、人間が神霊などの聖なるものに触れる宗教行動と、それを意味づける複雑なシンボリズムである。舞踊、音楽、言語、劇、絵画、彫刻、建築などのあらゆる表現様式が祭祀のために用いられるが、そのおのおのは複雑な歴史的、文化的、宗教的意味を担っている。したがって、その物質的要素である祭具は、実用的目的をもつとともに、古来、その素材、構造、形体などが厳密に規定、伝承され、象徴的に意味づけされて、文化的統合の役割を果たしてきた。しかし、聖なるものと密接にかかわっているので祭祀の対象となり、崇(あが)められる祭具がある一方、宗教的意味づけが忘れられて、実用的道具に化した祭具もある。[中村恭子]

種類

原初の時代より、自然木、石、岩、水源、山などをめぐり、野外で祭祀が行われてきたことは世界的に認められるが、寺廟(じびょう)、神殿、教会堂などの永続的宗教構築物が存在するに至っても、神霊は祭場に祭祀中来臨するとの信仰が生きている。そこで、神霊を招き、その依代(よりしろ)として祭場に常緑樹、柱、棒、旗などが立てられることが多い。狩猟文化内では、動物の骨、とくに頭蓋骨(ずがいこつ)が神霊の宿るところと信じられ、アイヌはクマ、アメリカ・インディアン部族はスイギュウなどを祭祀の対象とする。また、弓矢も重要な祭具となる。農耕文化内では、稲束、粟穂(あわほ)、麦藁(むぎわら)、トウモロコシ、果実などの自然物から、御幣(ごへい)、削掛(けずりかけ)、鋤(すき)、鎌(かま)などの加工品まで、多種多様の祭具がみられる。神を人間や動物の形に表した画像は各宗教伝統の図像学(イコノグラフィー)の発達に伴い、複雑化、固定化していくが、木、石、骨、金属などの素材そのものも象徴的意味をもつのである。招霊用祭具として、音を発するための太鼓、鐘、鈴、琴、笛、弓など、また、光を発するための松明(たいまつ)、篝火(かがりび)、ろうそく、ランプなどは世界各地で用いられ、香も中国や中近東などで古代より使用されている。したがって、楽器、燭台(しょくだい)、香炉は、ほとんどの宗教の重要な祭具である。
 来臨した神霊に供犠(くぎ)を捧(ささ)げることも広く行われているので、供進用祭具は数多い。供犠を横たえる高壇や机は、石板、れんが、木、金属などでつくられ、犠牲を殺すときに流れる血を受ける溝、穴、容器などが設けられている。キリスト教のミサにおいて聖別されたワインを入れる祭爵(聖杯(カリス))は、元来、キリストの血を受けた器である。わが国では、魚貝類、野菜なども用いられるが、伝統的神供は、稲作文化の特徴である酒と餅(もち)で、土器や木の葉をかたどった器に盛り、高坏(たかつき)、御膳(ごぜん)などにのせて供えられる。籠(かご)が用いられることもあり、器の素材には自然物志向が明らかである。
 来臨した神霊は祭場にとどまらず遊行(ゆぎょう)するとの信仰に基づき、日本では神輿(みこし)、山車(だし)、山鉾(やまぼこ)などが移動用祭具となるが、ヒンドゥー教、キリスト教などの祭りでは、神像、聖者像を乗せた車がみられる。仏教文化圏においては、遊行僧が背負う笈(おい)に仏像、経巻(きょうかん)、須弥山(しゅみせん)などが納められ、三宝の現れである僧は遊行することによって、移動用祭具と似た、地域社会の聖化・浄化の役割を果たしている。
 諸宗教の祭衣や仮面は、未開宗教にみられるような、祭祀中、動物主や穀霊と一体化するための仮装に用いられた獣皮や藁束(わらたば)と同じ意味構造をもつ。また、祈祷(きとう)用祭具としてのロザリオ(キリスト教)や数珠(じゅず)(仏教)などは、珠(たま)の数による記憶装置としての機能を兼ね、イスラム教徒の祈祷用敷物はモスクの聖域を象徴し、ユダヤ教徒の肩掛けと同様に、魔除(まよ)けの機能をももっているのである。このように、祭具は実用性と象徴性、神聖性と世俗性をあわせもつ多面的な、祭祀に用いられる道具や器具である。[中村恭子]
『マルセル・モース、アンリ・ユベール著、小関藤一郎訳『供犠』(1983・法政大学出版局) ▽千葉徳爾著『狩猟伝説』(1975・法政大学出版局) ▽山田憲太郎著『香料』(1978・法政大学出版局) ▽景山春樹著『神像』(1975・法政大学出版局)』

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世界大百科事典内の祭具の言及

【道具】より

…これらの道具は人間の文明を飛躍的に向上させただけでなく,道具そのものの発達と道具の使用技術の高度化をもたらした。また宗教的儀式は,超越者ないし意志をもつと考えられた自然との対話の技術であったから,広義の情報伝達のための道具として種々の祭具があった。その多くは生産・生活の道具を象徴化したものであるが,精巧なものや美しいものが多く,技術の発達に貢献した。…

※「祭具」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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