神奈川県中西部,丹沢山地の南麓にある陥没性盆地。東西約7km,南北約4km。北縁は丹沢山地の山麓斜面が盆地床の堆積物下に不規則に没して直線的ではないが,南縁は渋沢断層によって南に続く大磯丘陵とは明瞭に区別される。丹沢山地から流出する河川には,東から金目(かなめ)川,葛葉(くずは)川,水無(みずなし)川,四十八瀬川の4川があるが,秦野盆地の大部分はこれらの河川によって形成された複合扇状地で,表面は関東ローム層におおわれている。なかでも盆地内を北西から南東へ流れる水無川は,厚く砂礫(されき)層を堆積させて中央部では伏流し,文字どおりの水無川となる。扇端部(標高100~110m)で湧水があらわれ,ここに江戸時代からタバコの集散地としてにぎわった秦野の市街地が立地している。第2次大戦後は工業化が進み,内陸工業団地が形成されている。また南縁部の農家では施設園芸が盛ん。
執筆者:伊倉 退蔵
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
神奈川県の南西部にある内陸盆地。地質時代の新第三紀におこった褶曲(しゅうきょく)、断層運動に伴ってできた陥没盆地で、北にそびえる丹沢山地(たんざわさんち)と南の大磯丘陵(おおいそきゅうりょう)との地形上の境界はともに断層崖(がい)となっている。陥没後、盆地底に水無(みずなし)川の堆積(たいせき)作用が行われて扇状地ができ、秦野の市街地付近に豊富な扇端湧水(ゆうすい)がみられ、都市用水のほか、特産の酒造用水にも使われている。全国的に知られるタバコ栽培は江戸時代後期から盛んになり、国分(こくぶ)葉(鹿児島)、水府(すいふ)葉(茨城)とともに名葉の名が高かった。明治以後はそれにラッカセイが加えられ、近年はカーネーションやミカンの産出でも知られる。近年盆地中央部を中心に、工場の進出や京浜通勤者向けの住宅地化が目だっている。
[浅香幸雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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