神奈川県の北西部にある山地。広い意味では関東山地に含まれるが、一般には独立した山地とされ、丹沢山塊ともよばれる。桂(かつら)川(相模(さがみ)川の上流)によって関東山地の主部と区分され、東側は相模川、南側は小田急電鉄線とJR御殿場(ごてんば)線でくぎられ、西は山中湖の南に及んでいる。東西約40キロメートル、南北約30キロメートルにわたる。最高の蛭ヶ岳(ひるがたけ)は1673メートル。地質時代第三紀の大きな隆起運動に伴ってできた褶曲(しゅうきょく)山地で、複雑な断層を伴い、関東大震災には多くの地すべりや崖崩(がけくず)れをおこした。
ほぼ600メートルの等高線を境として、その内側と外側では地形が著しく異なっている。内側は急峻(きゅうしゅん)で山地の本体をなし、その中央に蛭ヶ岳、丹沢山(1567メートル)、塔ヶ岳(とうがたけ)(1491メートル)、大山(おおやま)(1252メートル)などの主峰群がある。これらの主峰から800~1000メートルにわたる稜線(りょうせん)部には、丸みをもった広い平坦(へいたん)面が発達している。しかし、谷は急斜面で深く、滝が多く、岩石の崩れも多い。700~800メートル以上は、ブナ、ミズナラ、ヒメシャラなどの高木を主とした広葉樹林が発達している。そして北西の檜洞丸(ひのきぼらまる)(1601メートル)から中央部の諸峰、大山にかけた主峰群の稜線一帯は霧の多い多湿環境で、オオモミジガサやブナが群生していてすばらしい景観をなしている。また、大山や塔ヶ岳は古くから神体山として崇(あが)められ、稜線、中腹、山麓(さんろく)の諸所に山岳信仰関係の遺跡が少なくない。外側は400~500メートルの低山で、本体を取り巻く前山をなしている。それはさらに東部の中津山地、北部の道志山地(どうしさんち)、南西の足柄山地(あしがらさんち)に分けられ、ことに中津山地は南北方向の並行断層で、東方へ階段状に低下しており、階段断層地形の好例をなしている。これらには人工のスギ・ヒノキ林が広いが、天然のヤマボウシやブナ林も残っている。
丹沢山地はまた、シカ、イノシシ、ニホンザル、ニホンカモシカをはじめ、多くの鳥類やチョウ類そのほか昆虫類の生息が多い。山地の主要部は丹沢大山国定公園(たんざわおおやまこくていこうえん)に、また西辺は県立丹沢大山自然公園に指定されている。
[浅香幸雄]
関東地方南西部,神奈川・山梨両県にまたがる山地。丹沢山塊ともいう。東西約40km,南北約30km。広義には関東山地に含まれるが,相模川とその上流桂川の谷によって関東山地本体と区別される。最高峰は蛭ヶ岳(ひるがたけ)(1673m)。ほぼ南縁を小田急線,JR御殿場線が通じ,南西部は酒匂(さかわ)川によって箱根山と隔てられ,西部は富士山のすそ野に接する。山体は第三紀中新統の安山岩および玄武岩からなり,山地中央には石英セン緑岩が東西に長く貫入している。大規模な隆起運動に伴って形成され,内部は多くの断層によって切られた複雑な地塁山地をなす。1923年の関東大震災では,山地内に多くの地すべりや山崩れが起こった。ほぼ標高600mの等高線を境に山地本体とそれを取り巻く前山に分けられる。山地本体は蛭ヶ岳,丹沢山(1567m),塔ヶ岳(1491m),大山(おおやま)(1252m)などが峰を連ね,その斜面は急で,沢,滝,渓流が発達し,岩場も多い。また,標高800~1000mの稜線には平たん面もみられる。前山は標高400~500mの低山で,南の足柄山地,東部の中津山地,北部の道志(どうし)山地に分けられる。
山地の全域が温帯性の樹種におおわれ,主稜部はブナ,標高700~800m以上はモミ,ツガが多く,以下は杉,ヒノキの人工林となる。イノシシ,シカ,カモシカ,クマなども生息し,東京都心から40~60kmの圏内にありながら豊かな自然に恵まれ,丹沢大山国定公園に指定されている。沢登りのコースや上級者向きの岩場もあり,また稜線沿いの登山路は危険も少なく山小屋も整備されている。
執筆者:浅香 幸雄
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