竜宮(読み)リュウグウ

デジタル大辞泉 「竜宮」の意味・読み・例文・類語

りゅう‐ぐう【竜宮】

深海の底にあって竜神乙姫おとひめなどが住むという、想像上宮殿竜宮城

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改訂新版 世界大百科事典 「竜宮」の意味・わかりやすい解説

竜宮 (りゅうぐう)

竜王の住む宮殿が原義であるが,転じて海中あるいは海上の楽園的な異郷をさし,また豪華な宮殿邸宅の形容にも用いられる。仏教においても,大海の底に娑竭羅(しやから)竜王の宮殿があって,縦広8万由旬(ゆうじゆん)(1由旬は帝王1日の行軍里程)もあり,七重の宮牆(きゆうしよう),欄楣(らんび)などはみな七宝をもって飾られているとか(《長阿含経》巻19),あるいは海上に白銀,瑠璃,黄金の諸竜宮があって,毒蛇大竜がこれを守護しており,竜王がここに住み珍宝が多いなどといわれている(《賢愚因縁経》)。中国においても竜宮の観念は発達しており,前蜀の杜光庭の《録異記》巻五によれば,海竜王の宮は蘇州の東にあり,海を行くこと五・六日程の小島の前にあり,広さ百余里であって,夜中に遠くから見ると,紅光日のごときが六百余里にわたってひろがり,しかも上は天に連なっている。船人の伝承によれば,竜王宮はその下にあるという。現代の中国ことに江南の民話においても海竜王の宮はしばしば出てくる。竜宮は,奇跡や豊穣の源泉と考えられている。

 日本の竜宮の観念の代表は,浦島太郎の訪れた竜宮城であって,美しい乙姫がおり,楽しい豪華な異郷である。このような竜宮観は昔話にも現れ,たとえば竜宮童子においては,爺が淵に柴をなげ入れたお礼に,淵の底の屋敷から来た竜宮童子は爺に富をもたらし,後に火男(カマド神)になったといい,竜宮女房では,花を水中に献じた男は,そのお礼として竜宮の美女を妻にもらうのである。他方において竜宮城は死者の国,ことに恨みをいだいて死んだ人々の集まる他界とも考えられ,《平家物語》巻11の安徳天皇入水の条にもそれが示唆されており,現代の民間信仰にも残っている。さらに,漁民にとっては竜宮は海を支配する神の所在,あるいはその神の名なのである。志摩(三重県)国崎(くざき)では霜月(陰暦11月)のアワビ養い行事において,男女が真夜中にアワビをとってきて,海女が一重ねのアワビを竜宮さんに献じる。沖縄のニライカナイにも本土の竜宮と共通する面がある。
執筆者: 古来インドでは竜(ナーガNāga)族の住む地底の世界を〈ナーガローカNāgaloka〉あるいは〈パーターラPātāla〉とよび,その都は〈ボーガバティー(快楽の町)〉といわれ,宝石をちりばめた城壁に囲まれた豪華なものであった。竜王の宮殿を竜宮(ナーガババナNāgabhavanaまたはナーガラージャババナNāgarājabhavana)とよび,竜族の長アーディ・シェーシャ(原初の竜)たるアナンタ王が,美しい女たちに囲まれて住んでいた。その宮殿は天上,地上,地下の中で最も華麗で,かつてここを訪れたナーラダ仙は,天界のインドラの世界よりも美しいと称賛したという。《法華経》第12,提婆達多品(だいばだつたほん)に,海中の娑竭羅(サーガラ)竜王の竜宮において,竜王の賢い娘が悟りを得るため,男子に変成した話がある。
執筆者:

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普及版 字通 「竜宮」の読み・字形・画数・意味

【竜宮】りゆうぐう

竜王の宮殿。また、寺院。唐・駱賓王春日山に遊ぶ〕詩 くして、宮に密なり るくして、鹿春なり

字通「竜」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「竜宮」の意味・わかりやすい解説

竜宮【りゅうぐう】

竜神のすみか。海,川,井戸の底などにあるとされる美女と歓楽と不老と珍宝珍味の宮殿。インドでは竜宮へ如意珠を捜しに行ったり,ヘビを助けたお礼に招待される説話が多い。日本では浦島太郎海幸(うみさち)・山幸の話が有名。売れ残りの花を水に投じた礼に竜宮に招かれる花売りの説話も広く分布。転じて海中または海上の楽園的な異郷をいう場合もある。
→関連項目アマモ(甘藻)隠れ里

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「竜宮」の解説

竜宮
(通称)
りゅうぐう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
竜宮乙姫
初演
弘化3.7(江戸・河原崎座)

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世界大百科事典(旧版)内の竜宮の言及

【海】より

…海亀はニライカナイの神の使いとされ,ときには海難から救ってくれると信じられてきた。このことは浦島太郎譚の亀と竜宮を想起させる。ニライカナイは,太陽の昇る水平線のかなたの聖地ともいうが,海と天とが日本語ではつながっているとも考えられている。…

【浦島太郎】より

…浦島太郎の話は,一般には次のようなものとして知られている。浦島は助けた亀に案内されて竜宮を訪問。歓待を受けた浦島は3日後に帰郷するが,地上では300年の歳月が過ぎている。…

【海神】より

…船幽霊や海坊主は海の精霊であり,さらに各地の〈カゼ()〉も半ば精霊とみなされている。【佐々木 宏幹】 一般には水神の表徴である蛇信仰が中国の竜信仰と結びついた竜神の同意語として,竜宮・竜王などと呼ぶ場合が多い。海神を祭る神社の主要なものとして,宗像(むなかた)大社,住吉神社,大山祇(おおやまづみ)神社,金毘羅社などが全国的に勧請流布している。…

【八部衆】より

…(2)竜(ナーガnāga) 水辺にいて降雨などをつかさどる。その居所は竜宮と呼ばれる。インドの美術ではコブラまたはコブラを頭につけた人間の姿で表される。…

【楽園】より

…前者は洋上はるかに隔たり,荒海によって外敵から守られた島の楽園である。東洋の伝承でいえば,蓬萊(ほうらい),竜宮,補陀落(ふだらく)(補陀落渡海)などがこれにあたる。西洋の伝承では,古代ギリシア人が遠く太陽の沈む西方洋上に,祝福された死者の国ヘスペリアHesperia(西方の国)を想像し,とくに〈ヘスペリデスの園〉の伝説を生み出した。…

※「竜宮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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