奈良前期の万葉歌人。生没年不詳。715年(霊亀1)作の志貴皇子(しきのみこ)挽歌(巻二)が格別に古く傑作であるが,主な活躍期は723年(養老7)から733年(天平5)までである。作品数は長歌11首,短歌32首,計43首である。金村作とあるもののほか〈金村歌集出〉〈金村歌中出〉との左注のある作品もあるが,すべて金村作と認められる。聖武朝初頭,天皇の行幸に従って,吉野,難波,紀州などにおもむき,賛歌などを歌うことが多く,先代の柿本人麻呂の流れをくむ宮廷歌人である。下級官人であったと思われるが,車持千年(くるまもちのちとせ),山部赤人らの作と並ぶ時,金村の歌は常に先頭の位置を占めているので,当代の第一人者として評価されていたらしい。作風は人麻呂を手本とし,その上で独自性を出そうとはしているが,概して類型的,平板なものに終わっている。〈神柄(かみから)か見が欲しからむみ吉野の滝の河内は見れど飽かぬかも〉(《万葉集》巻六)。
執筆者:橋本 達雄
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(芳賀紀雄)
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生没年不詳。奈良時代の歌人。元正(げんしょう)、聖武(しょうむ)両朝の下級官人で、行幸につき従って賛歌を詠み、志貴皇子挽歌(しきのみこばんか)をつくるなどした、いわゆる宮廷歌人的な人。『万葉集』に残る作品は715年(霊亀1)から733年(天平5)までの長歌9首、短歌26首の計35首。ほかに「笠朝臣金村之歌中出(かさのあそみかなむらのうたのなかにいづ)」と記す長歌2首、短歌8首もあるが、作者不明歌を含む。歌風は柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の影響を強く受けているが、迫力に乏しく、私的な相聞風の発想をよくするなどの点に時代の反映をみることができる。
[遠藤 宏]
草枕旅行く人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩(はぎ)かも
『山崎馨著「笠金村と車持千年」(『万葉集講座6』所収・1972・有精堂出版)』
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※「笠金村」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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