筑肥山地 (ちくひさんち)
福岡・熊本両県の県境をなす小規模な山地で,筑紫(つくし)山地の一部。東部には最高峰である国見山(1018m)を中心にして標高800mを超す山が断片的にみられるが,全般的には500m前後の山地となっている。筑紫山地内の他の山地と同様に,標高約500mと300mの2段の小起伏平たん面が発達している。中央部の小栗峠付近から西側は,福岡県側の矢部川,熊本県側の菊池川の浸食がともにすすんでおり,山間部に広く谷底平野が形成されている。南西部に花コウ岩と第三紀層が分布するが,中央部から東部にかけては古生界の変成岩が広く分布しており,国見山付近では,変成岩を筑紫溶岩および耶馬渓溶岩がおおっている。古くから筑後と肥後を結ぶ道路がこの山地を横切っており,現在でも国道3号線は小栗峠を,九州自動車道は標高の一番低い関の峠を越えている。山地ではかつて焼畑農業が営まれていたが,現在はクリやミカンの栽培が行われている。
執筆者:赤木 祥彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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筑肥山地
ちくひさんち
熊本県北部、矢部川と菊池川(きくちがわ)との間に位置する開析の進んだ低山地で、福岡県との県境の一部をなす。東接の津江山地との縫合部にあたる国見山(くにみやま)(標高1018メートル)がもっとも高く、漸次西進につれて低くなり、南北の交渉を示す峠道も多く、本山地の中央にあたる小栗(おぐり)峠には国道3号が通じ、さらに同西端の山裾(やますそ)(標高約90メートル)を九州自動車道と国道443号とが併走している。東端には、阿蘇(あそ)溶結凝灰岩より古い筑紫集塊岩(つくししゅうかいがん)がみられるが、そのほとんどは三波川変成岩(さんばがわへんせいがん)からなっている。このため谷底も広く、スイカ、イチゴなどのハウス園芸も浸透してきている。緩斜面にはミカン、クリ、ブドウなどが多くみられるほか、急斜面にもスギ、ヒノキ、クヌギなどの植林も目だつ。また、開析された大きな谷間には、かつて一つの生活空間であったことをしのばせるように、それぞれに城館跡があり、他の文化遺跡、自然景観とも結び付き、地元民だけでなく、福岡・熊本両県民のレクリエーションの対象地の一つとなっている。
[山口守人]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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筑肥山地【ちくひさんち】
福岡・熊本県境にまたがる標高400〜500mの山地。おもに古生層とこれを貫く花コウ岩からなり,矢部川と菊池川の分水界をなす。東部には標高1000mを越える八方ヶ岳,酒呑(しゅてん)童子山などがあり,西部には三池炭田がある。
→関連項目鹿北[町]|菊鹿[町]|熊本[県]|立花[町]|南関[町]
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筑肥山地
ちくひさんち
福岡,熊本両県の県境を東西に連なる山地。筑紫山地の一部で,標高約 400~1000m。矢部川と菊池川の分水界をなし,山体はおもに古生層を貫く花崗岩から成る。山地名は肥後国と筑後国の境界であったことに由来。かつては和紙の産地として知られたが,茶,クリなどを産する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の筑肥山地の言及
【筑紫山地】より
…中国山地が連続した山地であるのに対し,この山地は筑豊盆地,福岡平野,筑紫平野などにより地塊に分断されている。北東から本州と対峙する企救(きく)山地,紫川の東側に位置する貫(ぬき)山地と西側に位置する福智山地,筑豊盆地と福岡平野の間の[三郡山地],筑後川の南の[耳納(水縄)(みのう)山地],福岡・熊本両県にまたがる[筑肥山地],福岡・佐賀両県境の[脊振山地],佐賀県から長崎県にかけての肥前山地の総称である。これらの山地の多くは断層山地と考えられているが,まだ確認はされていない。…
※「筑肥山地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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