当事者に争いのない比較的軽微な事件について、迅速な裁判ないし審理の促進という観点から、1953年(昭和28)に設けられた公判手続。アメリカ法のアレインメント(起訴認否手続)を参考にして、刑事訴訟法一部改正に際して創設された。
通常の手続に対して、伝聞証拠(被告人の反対尋問の機会にさらされていない供述)の証拠能力の制限を緩和し(刑事訴訟法320条2項)、証拠調べの方式を簡易化して、証拠調べは公判期日において適当と認める方法で行うことができるとしている(同法307条の2)。すなわち、被告人が冒頭手続に際し、起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したときは、裁判所は、検察官、被告人および弁護人の意見を聞き、有罪である旨の陳述のあった訴因に限り、簡易公判手続によって審判する旨の決定をなしうる。さらに、被告人から異議がなければ、供述調書などの伝聞証拠もすべて証拠にできる。ただし、自白の任意性などに関する原則(同法319条)は緩和されない。また、死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる事件についてはこの限りではない(同法291条の2、291条の3)ので、簡易公判手続は適用されない。
[内田一郎・田口守一]
争いのない軽い罪の事案について,審理の促進と事件の重点的処理を期して,アメリカ法におけるアレインメント制度を参考に,1953年の刑事訴訟法一部改正により創設された簡易な手続をいう。〈死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる事件〉以外の事件について,被告人が,冒頭手続に際し〈起訴状に記載された訴因について有罪である旨を陳述したとき〉裁判所が当事者の意見を聴き,この手続によって審判する旨の決定をすることができる(刑事訴訟法291条の2)。これは当事者によって事件を処分するわけではないので,証拠調べは必要であり,自白の任意性や補強証拠に関する原則は適用される。ただ,この手続においては当事者が異議を述べない限り,伝聞証拠であっても排除されず(320条2項),また証拠調べは公判期日において適当と認める方法で行えばよいとして,証拠調べの方法が簡易化されている(307条の2)。地方裁判所(法定合議事件を除く)および簡易裁判所の通常第1審における終局人員中,公訴事実全部について自白した人員に対する簡易公判手続の決定人員の比率は,最近では地裁で約10%,簡裁で60~70%である。簡裁での比率は従前よりも増加しているものの,地裁における利用度が低く,それが制度上の問題に起因するのか運用上の工夫不足によるのか,検討が待たれる。
執筆者:三井 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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