会社の損益状況や財政状態を実際よりよくみせようとするため、利益を過大に計上する会計行為。逆に利益を過少にみせようとする会計行為は逆粉飾という。粉飾決算を行う動機としては、金融機関からの借入の継続、配当の維持、株価の維持、さらには経営者の地位の保全などさまざまなものがある。このような動機から粉飾決算は、過去の事例では、経営者が行ったものがほとんどであるが、経営者からの厳しい業務目標などを原因として役員や管理職が行うケースも増えている。
粉飾決算の具体的な手法としては、売上げの過大・架空計上、費用の過少計上、預金や商品などの過大計上、借入金の過少計上などがある。これらの取引を取引先や子会社の協力のもとに行うことが多い。とくに、連結していない子会社やSPC(特定目的会社)を利用して架空の利益を計上する事例が増えている。
このような粉飾決算を防止するために、上場会社や大会社においては、公認会計士・監査法人による監査が法制度化されている。粉飾決算を行った経営者に対しては、金融商品取引法による有価証券報告書虚偽記載として、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、法人には7億円以下の罰金の厳しい制裁(金融商品取引法197条・207条)と金融庁長官の決定による課徴金納付制度が定められている。また、取締役などの役員が有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載などをして、これを知らずに有価証券を取得した者に損害を生じさせた場合には、その損害を賠償する責任を負う(同法24条の4)。
[中村義人 2022年11月17日]
『吉見宏著『ケースブック監査論』第5版(2014・新世社)』▽『矢部謙介著『粉飾&黒字倒産を読む――「あぶない決算書」を見抜く技術』(2020・日本実業出版社)』▽『石田昌宏著『中堅・中小企業に対する粉飾決算の見分け方』増補改訂版(2021・ビジネス教育出版社)』
会計的技法を用いて故意に会社の利益を実際よりも過大もしくは過小に示すように操作して行われる決算をいう。ウィンドー・ドレッシングwindow dressingがほぼ粉飾決算に該当する語である。粉飾は,一般に,利益の過大表示と過小表示の双方を含むが,時として過大表示のみを示すものとして用いられることがある。その場合,利益を過小表示することは逆粉飾と呼ばれる。逆粉飾は,会社の中に,計算上示されない財産を意味する秘密積立金をつくるが,粉飾に比べて実害が少ないことから,社会的問題になりにくい面をもつ。粉飾決算は,たんに経営者の経理の軽視や経営上の失敗を隠すという消極的なことにとどまらず,会社の状況を実際よりも良好に(ときに悪く)示すことを通じて,配当利益を高めたりして,債権者,株主,得意先,一般社会の信用を高め,取引の円滑化や資金調達を容易にするためなど,多様な意図のもとに行われる。粉飾決算は,架空の売上高の計上,減価償却費の過小計上などいろいろな形で行われるが,利益の過大表示を示す粉飾は,結局,(1)資産の過大計上,(2)負債の過小計上,(3)売上高の過大計上,(4)費用の過小計上を通じて行われる。このように,粉飾決算は多様な形で,しかも大半の場合,子会社や関連会社と共謀して巧妙に行われるため,その発見には高度の会計的学識と豊かな経験が必要とされる。今日,大規模な株式会社については,公認会計士監査制度が確立され,国家試験に合格した公認会計士が粉飾が行われてないかをチェックする役割を担っている。その場合,粉飾か否かの判断は,(企業)会計原則をふまえて下される(〈会計監査〉の項参照)。なお,この制度があるにもかかわらず,日本でも昭和30年代を中心に山陽特殊鋼をはじめとして多くの会社で粉飾決算がなされ,社会的問題となった。概して,粉飾決算は,会社倒産を契機として発見される場合が多く,経営者の姿勢や公認会計士のモラルと深くかかわっている。
執筆者:前田 貞芳
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