粘結炭(読み)ねんけつたん(英語表記)coking coal

精選版 日本国語大辞典 「粘結炭」の意味・読み・例文・類語

ねんけつ‐たん【粘結炭】

〘名〙 乾留した時、堅く、緻密で、強度の高いコークスのできる石炭強粘結炭弱粘結炭がある。

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デジタル大辞泉 「粘結炭」の意味・読み・例文・類語

ねんけつ‐たん【粘結炭】

加熱すると一部が溶融し、ガス・タールなどを発生したのち多孔質の硬いコークスとなる石炭製鉄に用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「粘結炭」の意味・わかりやすい解説

粘結炭
ねんけつたん
coking coal

石炭を不活性雰囲気(空気を遮断した状態)で加熱するとき350~500℃で軟化溶融するとともに、熱分解によってガス、タールなどを発生し、さらに高温になると再固化して多孔質で硬い炭素の塊であるコークスとなるものがある。このような石炭を粘結炭といい、そのような特性を粘結性と称する。粘結炭は良質なコークスの製造には不可欠であり、原料炭ともよばれる。一方、加熱に際して軟化溶融せず、そのままの形または粉化して炭素粒子(チャー)となるものを非粘結炭という。

 軟化溶融の程度は、一種の回転粘度計であるギーセラープラスとメーターなどにより測定され、羽の回転し始める温度(軟化開始温度)、回転数の最大となる温度(最高流動度温度)とそのときの回転数(回転板に刻まれた目盛りの1分間当りの数値dial division per minute=ddpmで与えられる最高流動度)、回転の止まる温度(固化温度)を測定して評価される。

 粘結炭は、軟化溶融時にガスやタールが発生するため膨張現象がみられることも特徴であり、るつぼ膨張性試験によって膨張したコークケーキの輪郭からボタン指数によっても評価される。

 非常に膨張性の高い石炭は粘着炭caking coalとよばれるが、これは発生ガスにより膨れ上がってしまい、強度の高いコークスとはなりがたい。強度の高いコークスを与える石炭は強粘結炭といい、適度の膨張性や流動性を示し、かつ炭化収率の高い瀝青炭(れきせいたん)である。

 粘結炭には瀝青炭と一部の亜瀝青炭が属する。石炭火力発電における微粉炭燃焼炉やある種のガス化炉では微粉炭吹込みノズル先端において石炭が溶融して閉塞(へいそく)するため、粘結炭の使用が制限されることもある。

 非粘結炭を用いる成型コークス化法では、粘結炭を非粘結炭の結合剤として糊(のり)の役目をさせるために用いられることがある。

[大内公耳・荒牧寿弘]

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改訂新版 世界大百科事典 「粘結炭」の意味・わかりやすい解説

粘結炭 (ねんけつたん)
coking coal

石炭類のなかには,空気を遮断した状態で加熱すると温度上昇につれて軟化,溶融し,さらに高温になると固結して多孔質の固体となる性質をもつものがある。この性質を粘結性といい,粘結性をもつ石炭を粘結炭という。空気を遮断しての加熱処理が乾留であり,できた固体がコークスである。歴青炭のうち石炭化度の高い範囲のものが粘結性をもつ。粘結性の測定法として,日本のJISには,るつぼ膨張試験,膨張性試験,流動性試験,コークス化性試験が定められている。粘結炭には強・弱・微の区別があるが,これはできたコークスの強度による慣習的なもので,区分が標準化されているわけではない。コークスの製造には通常,各種の粘結炭を配合して用いるが,製鉄用の強いコークスをつくるには強粘結炭が不可欠の成分である。強いコークスは緻密(ちみつ)でなければならず,原料とする配合炭の揮発分が高すぎると多孔質の構造が粗大になり,十分な強度が得られない。それで製鉄用コークスの原料として,アメリカで産出する低揮発分強粘結炭が,L米炭(Lはlow volatileの略)と称して,とくに重視されている。日本での粘結炭の生産量は高度に発達した鉄鋼業需要をまかなうにはほど遠いので,L米炭をはじめとして年間5000万~6000万tの強粘結炭・弱粘結炭を,アメリカ,オーストラリアカナダなどから輸入している。ヨーロッパの先進工業国も,現在では粘結炭の大きな輸入圏である。このように国際流通商品としても重要な意味をもつ粘結炭の資源は,世界の石炭類の確認可採埋蔵量(石炭当量換算)の約1/4,歴青炭のそれに対しては約2/5である。なお,粘結炭は非粘結炭に比べれば資源が少なく,価格も高いことから,製鉄用コークス製造の粘結炭に対する依存度を少なくするため,原料の配合に非粘結炭を含めうるようなコークス製造技術の開発が進められている。
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百科事典マイペディア 「粘結炭」の意味・わかりやすい解説

粘結炭【ねんけつたん】

加熱したときに軟化溶融する性質(粘結性)をもつ石炭。粘結性は歴青炭中のビチューメン(植物体中の樹脂および蝋が石炭化により変化した生成物)の多いものに限られるため,粘結炭といえばほとんど歴青炭を意味する。乾留すると多孔質のコークスを生じ,おもに製鉄用コークスの製造,都市ガスの製造等に利用。特に強度の高いコークスを生ずるものは強粘結炭という。日本には強粘結炭はほとんど産出せず,輸入に依存。
→関連項目原料炭

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「粘結炭」の意味・わかりやすい解説

粘結炭
ねんけつたん
coking coal

コークスになるような粘結性のある石炭の総称。石炭には,加熱すると軟化溶融し,高温で揮発分が出て硬い多孔質の凝結塊になるものと,凝結塊にならないものとがある。前者を粘結炭,後者を非粘結炭という。良質の粘結炭は堅硬なコークスになる。粘結性の強弱によって強粘結炭と弱粘結炭に分けられる。前者は高温乾留 (約 900℃以上) により製鉄用コークスとして熱源,還元剤に,後者は潰裂強度が低いので燃料用やまた灰の熔融温度の高い中塊炭はガス発生炉 (ガス化) などに利用される。無煙炭や褐炭は非粘結炭で,一般炭として普通燃料に供されている。粘結性のあるのは瀝青炭に限られている。日本産の石炭には瀝青炭でも製鉄用の強粘結炭が少く,外国から輸入している。

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化学辞典 第2版 「粘結炭」の解説

粘結炭
ネンケツタン
caking coal

[別用語参照]粘結性

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世界大百科事典(旧版)内の粘結炭の言及

【石炭】より

…しかし原料炭の中には,乾留によるガス製造の原料に使う〈ガス用炭〉もある。コークス用炭の英語はcoking coalであるが,これは原料炭全体を指す場合も多い。すなわち,一般炭と原料炭の二大別は,英語ではsteam coalとcoking coalである。…

【石炭】より

…粘結の過程での溶融状態で,溶融の度合をあらわす指標として〈流動度〉がある。日本に産する粘結炭は一般に,流動度が高いことが特徴である。 石炭の成分を調べる方法は,〈工業分析〉と〈元素分析〉である。…

※「粘結炭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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