石炭類を石炭化度によって4区分(無煙炭,歴青炭,亜歴青炭,褐炭)に分類する場合,無煙炭に次いで石炭化度が高いものを歴青炭という。生成地質年代は,おもに古生代(とくに石炭紀,二畳紀)と中生代(とくにジュラ紀,白亜紀)であるが,日本では新生代第三紀に生成されたものが,強い地圧や地熱の作用を受けて石炭化が進み,歴青炭のランクになっている。日本の規格による分類では,歴青炭の性質として粘結性をあげているが,一般的には発熱量をおもな指標として分けているので,歴青炭には粘結性をもたないものも含まれる。日本の石炭類の生産は,ごく少量の無煙炭・亜炭を除いて一般的な意味での歴青炭であり,鉱業法ではこれと無煙炭とを合わせて〈石炭〉と称している。歴青炭は,埋蔵量でも生産量でも石炭類のなかで最も大きい部分を占め,世界の確認可採埋蔵量(石炭当量換算)の2/3が歴青炭である。外観は,黒色~暗黒色で樹脂状の光沢があり,しま状の組織が見えるのが普通である。大気中で燃やすと黄色い長炎をあげ,煙とすすと臭気を出す。しかし燃焼装置ではこれらの問題をなくす方法がとられており,排煙処理を含む近代的な設備(たとえば微粉炭火力発電所)では,環境保全上の要求に対応できる。歴青炭のおもな用途は,粘結炭が乾留によるコークス製造用・ガス製造用の原料,非粘結炭が亜歴青炭・褐炭とともに発電用の燃料である。コークスは現在の製鉄法には不可欠の副原料であり,ほかに代替するものがないので,石油時代になっても需要は伸び,日本では年間数千万tの粘結炭を輸入している。燃料としての非粘結炭の利用は,近年の石油事情のもとでは,一時期は減少した発電用の需要が今後は再び増大し,国際的な流通も長期的に活発になると予測される。この場合,埋蔵量が豊富で,発熱量が高く,風化や自然発火の傾向が少ないなどの点から,歴青炭がおもな対象になる。
執筆者:穂積 重友
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
JIS(ジス)(日本産業規格)では発熱量によって規定され、純炭発熱量1キログラム当り8100キロカロリー以上もち、粘結性を有する代表的な石炭である。炭素含有率は83~90%の範囲で、一般に加熱すると軟化溶融し再固化してコークスになる特性(粘結性)を示す。粘結性による分類として、強度の高いコークスを与える強粘結炭、弱いコークスになる弱粘結炭などがある。ピリジンなどの溶媒に溶けやすく、軟らかくて粉砕しやすい。
石炭は、地質学的な熟成度により石炭化度(Rank)が決定される。かならずしも年代にリンクしているわけではなく、火山活動などの影響によっては、地質年代によらず相対的に石炭化度が進行する場合がある。一般的には炭素含有率や炭素・水素・酸素の原子数比(H/C、O/C)の関係(Coal Band)によって泥炭Peat、亜炭Lignite、褐炭Brown coal、亜瀝青炭sub-Bituminous coal、瀝青炭、半無煙炭semi-Anthracite、無煙炭Anthraciteに分類される。
アメリカでも高揮発分瀝青炭high volatile bituminous coal、中揮発分瀝青炭medium volatile bituminous coal、低揮発分瀝青炭low volatile bituminous coalなどと、揮発分により分類が行われる。溶媒によく溶けるため、液化には適しているが、ガス化や微粉炭燃焼などでは、粘結性のため炉内で塊となったり、炉壁に付着する棚吊(つ)り現象などを呈するため、適さない場合もある。こうした場合には空気で軽く酸化することによって粘結性を消失させることが効果的である。
[荒牧寿弘]
石炭化度が亜歴青炭と無煙炭の間に位置する石炭.外観は黒色で石炭の代表的なもの.熱分解時に歴青(アスファルトやピッチ状物質)を発生するので歴青炭とよぶ.元素分析による炭素量は,無煙炭より少ないが,大まかには80~90質量%(daf)の範囲にある.石炭のなかでは,粘結性がもっとも大きいので,コークス製造用原料に用いられ,とくに,強粘結性歴青炭は重要である.JIS規格では,無水・無灰基準(daf)の発熱量が34~35 MJ kg-1 と35 MJ kg-1 以上の2種類に大別され,後者は強粘結炭とよばれる.粘結性が小さく揮発分の多い前者は発電用燃料に用いられる.ハードコールの全生産量(2001年)は約38億 t で,歴青炭はその大部分を占める.[別用語参照]石炭の元素分析
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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