系外惑星(読み)ケイガイワクセイ

デジタル大辞泉 「系外惑星」の意味・読み・例文・類語

けいがい‐わくせい〔ケイグワイ‐〕【系外惑星】

太陽系以外の惑星太陽ではなく他の恒星周囲を回る惑星。太陽系外惑星

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「系外惑星」の意味・わかりやすい解説

系外惑星
けいがいわくせい

太陽以外の恒星の周りを公転する惑星。太陽系外惑星ともいう。

 古代中国から伝わる五行説は、木・火・土・金・水の5元素が万物を構成するという、いわば現代の素粒子論に対応する思想である。これらが昔から知られていた五つの太陽系の惑星の名前に対応していることからは、天と地が一つの世界という枠組みのなかで解釈されていたように思える。

 いずれにせよ、古代の人々にとっては、まさにこの太陽系こそが世界そのものであった。しかし、世界がこの太陽系の先にも広がっているのかどうかという疑問は、長い間科学ではなく哲学の対象でしかなかった。古代ギリシアでは、デモクリトスエピクロスといった原子論者たちが、われわれの太陽系と同じような世界は無数に存在すると想像したのに対して、アリストテレスに代表される多くの哲学者たちは、世界は地球を中心とする唯一の存在であると考えていた。

 そもそもこの太陽系ですら、天王星は1781年、海王星は1846年、冥王星は1930年というように、その果てが明らかになったのは比較的最近なのだ。さらに、太陽系の外に惑星系が存在するのかという本質的な問いに科学的な答えが得られたのは、何と1990年代のことなのである。

 1992年、アレクサンデル・ボルシュチャンAleksander Wolszczan(1946― )とデール・フレールDale Frail(1961― )によって人類史上初めての系外惑星が発見された。これは地球と同程度あるいはそれ以下の質量の三つの惑星からなる複数惑星系でもあった。しかも、その主星であるPSR B1257+12は、パルサーとよばれる中性子星であり、太陽系とはまったく異なる種族の惑星系である。

 1995年、ミシェル・マイヨールMichel Mayor(1942― )とディディエ・ケロズDidier Queloz(1966― )は、ペガスス座51番星の視線速度の周期的変化をドップラー法(観測される光の波長相対速度に応じて変化するドップラー効果を利用した方法)によって検出し、その周りに木星の質量の7割程度の惑星(51Peg b:系外惑星はその主星の名前に、発見順あるいは内側の軌道の順にb,c,dという記号をつけてよばれる)が存在していることを発見した。しかしながら、その公転周期はわずか4.2日しかなく、きわめて高温のガス惑星という意味でホットジュピターと名づけられた。このまったく予想外の発見を契機として、多くの天文学者が系外惑星の研究を開始する。

 1999年、ドップラー法により主星HD209458の周りに公転周期3.5日の惑星が検出されたが、その直後にその主星が同じ周期で減光を繰り返していることが発見された。これは、惑星が主星の前を通過する際に星の一部を隠すために暗くなるトランジット現象とよばれる。HD209458bはこのトランジットを起こしていることが初めて確認された惑星である。このトランジット現象を用いた検出法(トランジット法)からは惑星の半径が推定できるため、ドップラー法で推定される質量とあわせて惑星の密度が得られる。HD209458bの密度は1立方センチメートル当り0.4グラムであり、確かにガス惑星であることが確認された。

 2009年3月6日に打ち上げられたアメリカのトランジット惑星専用探査機ケプラーは、2013年に姿勢制御系が故障するまでの約4年間、はくちょう座付近の恒星約15万個を繰り返しモニターし、4000個を超えるトランジット惑星候補を報告した。ケプラーは系外惑星研究に革命を起こしたともいえる。ドップラー法とトランジット法が、系外惑星の代表的検出法の二つであるが、それ以外にも、重力レンズ法、さらには直接撮像によって検出される惑星も増加している。

 また、2016年には、太陽からもっとも近い恒星であるケンタウルス座アルファ星の3番星プロキシマ・ケンタウリの周りを公転する岩石惑星プロキシマ・ケンタウリbが発見された。この惑星は、地球と同じく水が液体として存在できる温度をもつと推定されている。一般にそのような惑星はハビタブル惑星とよばれ、海、さらには生命が存在する可能性がある惑星として注目されている。プロキシマ・ケンタウリbは、地球からもっとも近い惑星であるため、数十年スケールで直接探査機を送る計画も検討されている。

[須藤 靖 2016年11月18日]

資料 重要な系外惑星

PSR B1257+12b,c,d
1992年に発見された最初の太陽系外惑星。しかも、内側から地球質量の0.02倍、4.3倍、3.9倍というおそらく岩石からなる三つの惑星からなる多重惑星系である。主星は中性子星(パルサー)なので、パルサー惑星に分類されることもある。

ペガスス座51番星b(51Peg b)
1995年に発見された。主星が太陽と似た性質をもつ恒星なので、最初の太陽系外惑星とよばれることが多い。主星の周りをわずか4.2日で公転するガス惑星であり、ホットジュピターとよばれる種族の最初の例でもある。

HD209458b
1999年に発見され、その後主星の一部を掩蔽(えんぺい)しながら公転する軌道にあることを確認された最初のトランジット惑星である。

プロキシマ・ケンタウリb
太陽系からもっとも近い惑星。2016年に発見され、水が液体として存在できるハビタブルゾーンにあると推定されている。

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