紀北(読み)きほく

改訂新版 世界大百科事典 「紀北」の意味・わかりやすい解説

紀北[町] (きほく)

三重県南部,北牟婁(きたむろ)郡の町。2005年10月紀伊長島(きいながしま)町と海山(みやま)町が合体して成立した。人口1万8611(2010)。

紀北町東部の旧町。北牟婁郡所属。1970年長島町を現名に改称。人口1万1045(2000)。熊野灘に面する海岸はリアス海岸をなし,紀伊山地に属する山地が海岸線に迫る。町の中央を流れる赤羽川とその支流沿いの低地に集落と耕地があり,赤羽川の河口周辺に市街地が形成される。林業と水産業が基幹産業で,温暖多雨な気候に恵まれて杉,ヒノキの良材を産出する。また近海に好漁場をひかえて揚繰(あぐり)網,一本釣り,定置網などの漁業が行われ,県下有数の水揚げがある。沿岸海域は海鳥の宝庫で,国設鳥獣保護区に指定され,また城ノ浜地区にはレクリエーション公園もある。JR紀勢本線と国道42号線が通じる。

紀北町南西部の旧町。北牟婁郡所属。人口1万0317(2000)。南東は熊野灘に面し,リアス海岸で引本湾が湾入,南は尾鷲市に接する。北西には大台ヶ原山系の高山が連なり,西の奈良県と境する。平地に乏しく,引本湾に注ぐ船津川と銚子川の下流域に耕地と集落がある。古代は志摩国英虞(あご)郡に属した。木本御厨(このもとみくりや),小山御薗など伊勢神宮領があり,なかでも木本御厨は神宮祭主大中臣氏の一族が私領を寄進したもので,南北朝期には下司木本氏は南朝方として働いている。近世には紀伊国牟婁郡に含まれ,紀州藩領であった。漁業が盛んで,島勝浦と白浦は捕鯨基地でもあった。引本浦良港で,廻船の寄港もありにぎわった。屈指の多雨地帯で,杉,ヒノキの良材を産し,〈尾鷲材〉として出荷される。水産業は引本浦や島勝浦などを基地としてカツオの一本釣りを中心とする遠洋・近海漁業とハマチ,タイなどの養殖が行われる。中里は大台ヶ原への登山口として知られる。JR紀勢本線と国道42号線が並行して走る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紀北」の意味・わかりやすい解説

紀北(町)
きほく

三重県南部、北牟婁郡(きたむろぐん)にある町。2005年(平成17)紀伊長島町と海山町(みやまちょう)が合併して成立。北側から大台山系が迫り、南は熊野灘(なだ)に臨むリアス海岸で、平地に乏しく、集落は湾奥に点在する。町域の85%以上が山林で占められ、内陸部は年間の降水量が4000ミリメートルを超える多雨地帯である。JR紀勢本線、紀勢自動車道、国道42号(熊野街道)、260号、422号が通じる。スギ、ヒノキなどの良質な建築材を生産する林業が盛んで、ミカン栽培や養鶏も行われている。また漁業も盛んで、引本(ひきもと)港は遠洋漁業の基地となっており、そのほか、矢口浦、白浦、島勝浦、長島の各漁港があり、カツオ、サバ、ブリ、イセエビ、アワビ漁などが行われる。城ノ浜地区の熊野灘レクリエーション都市(熊野灘臨海公園)には海水浴場やオートキャンプ場があり、ホテルなどの宿泊施設も建設されている。長島港の南南東に浮かぶ大島の暖地性植物群落は国の天然記念物に指定されている。面積256.54平方キロメートル、人口1万4604(2020)。

[編集部]


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百科事典マイペディア 「紀北」の意味・わかりやすい解説

紀北[町]【きほく】

三重県南部に位置する北牟婁郡の町。南縁を尾鷲市に接し,東部を太平洋に面する。2005年10月,北牟婁郡紀伊長島町,海山町が合併し町制。JR紀勢本線,紀勢自動車道,国道42号線,422号線,425号線が通じる。256.53km2。1万8611人(2010)。

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世界大百科事典(旧版)内の紀北の言及

【和歌山[県]】より

…これによって扱われた商品には湯浅のしょうゆ,粉河(こかわ)寺門前町の酢,海南市黒江の漆器などがあり,このうち黒江の漆器は,現在でも県内有数の伝統産業として重要な役割を果たしている。江戸時代には紀北の紀ノ川流域ではワタ作が盛んになり,ワタを原料とした綿織物の生産を促した。織物の中で,現在の和歌山市では幕末の紀州藩の武士の軍服に供された紋羽(もんば)織がのちに改良されて紀州ネルに発展し,また明治初年には軍靴の生産も奨励された。…

※「紀北」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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