蕉風俳諧の美的理念の一。作者の心が対象の微妙な生命の急所にしみとおってゆき,そこに風雅の伝統の細き一筋を感得すること,およびその感得したものを句ににないこむ気味合いをいう。去来は〈細みは便りなき句にあらず。……細みは句意にあり〉(《去来抄》)といい,芭蕉が路通の〈鳥共も寝入てゐるか余吾(よご)の海〉という句を〈此句細みあり〉と評したと伝えている。早く中世においては俊成などが〈心深し〉〈心細し〉という評語をしきりに用い,作者の思い入る心の深さ,細さを称美しているが,連歌でも心敬がこれを承けて〈秀逸と侍ればとて,あながちに別の事にあらず。心をも細く艶にのどめて,世のあはれをも深く思ひ入れたる人の胸の中より出でたる句なるべし〉(《ささめごと》)といっている。これらはそのまま〈細み〉と呼ぶべきものではあるまいが,このような〈細さ〉を称美する繊細な詩心の伝統があって,はじめて蕉風俳諧の〈細み〉も可能になったのであろう。
執筆者:堀 信夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
芭蕉俳諧(ばしょうはいかい)の美的理念。「さび」の類縁美の一つ。歌論、連歌(れんが)論における「細し」の美と関係がある。藤原俊成(しゅんぜい)、心敬(しんけい)は、心の「細し」を志向し、藤原定家、二条良基(よしもと)は、姿の「細し」を志向した。芭蕉の「細み」は、心と姿の両方を止揚した美である。芭蕉の弟子たちのなかで、「細み」をもっとも熱心に説いたのは許六(きょりく)であるが、その許六の「細み」論を総合すると、「細み」とは、「閑寂」と絡み合った「悲しび」を、繊細な心で味わい、繊細微妙に表現することをいったようである。従来、対象を把握する心の動きのみが注目されてきたが、心の色合い(悲しび)も、また「細み」の重要な要素である。芭蕉は、路通(ろつう)の「鳥共も寝入(ねいり)て居(ゐ)るかよごの海」の句を、「此(この)句細みあり」(去来抄)と評している。
[復本一郎]
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