古代・中世の祭礼芸能。声納,青農,精農などとも記し,〈さいのお〉〈くわしお〉などとも読む。大社寺の祭礼に巫(みこ),師子舞,田楽(でんがく),王の舞,十烈(とおつら),猿楽などとともに出た芸能で,《栄華物語》巻二十四に,〈御霊会の細男の手拭して顔隠したる心地するに〉とあるように,その芸態は,烏帽子姿の者が白布で顔を隠し,胸につけた鼓を打つ。平安時代末の姿を伝える《年中行事絵巻》の祇園御霊会の図中に,馬乗姿が描かれている。細男が顔を隠すことは《八幡愚童訓》に次の説話が載る。
神功皇后三韓攻略のおり,竜宮より干珠満珠(ひるたまみつたま)を借りるため常陸の海より礒(磯)良(いそら)を呼び出すことになり,神遊びをする。礒良は出現にあたり,顔の醜いのを隠すため,浄衣(じようえ)の袖を解いて顔を覆い,首に鼓をかけて細男舞を舞って現れたという。この話と宮廷の御神楽(みかぐら)の〈阿知女作法(あじめのさほう)〉を結びつけ,細男を御神楽のおりの〈才の男(ざいのおのこ)〉の転とする説もあるが,批判的見解が多い。現在奈良春日若宮の御祭(おんまつり)に出る細男は,浄衣・白覆面・烏帽子姿の者6人が1組で,鼓打ち2,笛吹き2,他の2人は無手で舞う。福岡市東区志賀島の志賀海(しかのうみ)神社の《磯良の舞》は,白覆面の者1人が羯鼓(かつこ)をつけて出る。福岡県吉富町の八幡古表(はちまんこひよう)神社や大分県中津市の古要(こよう)神社では傀儡(くぐつ)と称する古い人形が白布を顔に垂らして磯良を舞うが,別に冠姿の細男も出る。奈良県談山神社,京都府乙訓(おとくに)郡大山崎町山崎離宮八幡宮の人形の細男も冠姿であるが,舞などの所作はない。
執筆者:山路 興造
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古舞の一つ。青農、声納とも書き、「さいのお」ともいう。細男の由来については不明な点が多いが、海中をつかさどる神である磯良(いそら)の伝説と結び付いているために、多くその側面から論じられている。伝説によると、磯良は顔が醜かったので浄衣(じょうえ)の袖(そで)で顔を覆い首に鼓をかけて海中より出てきたという。『栄花物語』には「御霊会(ごりょうえ)の細男の手拭(てぬぐい)して顔隠したる」とあり、平安時代の細男は御霊会と関係があったと思われる。1136年(保延2)に始まると伝わる春日(かすが)若宮おん祭における細男は、その姿をいまによく伝えている。烏帽子(えぼし)・白浄衣・白覆面の6人が出て、2人は笛を吹き、2人は腰鼓(ようこ)を両手で打ち、他の2人は覆面の上を右袖で覆い舞い進む。白覆面と鼓は細男を特色づけているが、福岡市志賀島(しかのしま)八幡志賀海神社の磯良羯鼓(かっこ)の舞も細男であろう。また細男は人形にもみられ、福岡県築上(ちくじょう)郡吉富(よしとみ)町古表(こひょう)神社、大分県中津市伊藤田の古要(こひょう)神社には細男の傀儡(くぐつ)人形が伝承されている。細男と才(ざえ)の男(おのこ)が同一であるという説は、これを証する史料が見当たらないことから、この両者は異なるともいわれている。
[高山 茂]
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…声納,青農,精農などとも記し,〈さいのお〉〈くわしお〉などとも読む。大社寺の祭礼に巫(みこ),師子舞,田楽(でんがく),王の舞,十烈(とおつら),猿楽などとともに出た芸能で,《栄華物語》巻二十四に,〈御霊会の細男の手拭して顔隠したる心地するに〉とあるように,その芸態は,烏帽子姿の者が白布で顔を隠し,胸につけた鼓を打つ。平安時代末の姿を伝える《年中行事絵巻》の祇園御霊会の図中に,馬乗姿が描かれている。…
…声納,青農,精農などとも記し,〈さいのお〉〈くわしお〉などとも読む。大社寺の祭礼に巫(みこ),師子舞,田楽(でんがく),王の舞,十烈(とおつら),猿楽などとともに出た芸能で,《栄華物語》巻二十四に,〈御霊会の細男の手拭して顔隠したる心地するに〉とあるように,その芸態は,烏帽子姿の者が白布で顔を隠し,胸につけた鼓を打つ。平安時代末の姿を伝える《年中行事絵巻》の祇園御霊会の図中に,馬乗姿が描かれている。…
※「細男」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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