統制会(読み)とうせいかい

改訂新版 世界大百科事典 「統制会」の意味・わかりやすい解説

統制会 (とうせいかい)

1941年8月国家総動員法にもとづいて公布された重要産業団体令により,各産業別に組織された戦時下の産業統制機構。1940年7月の第2次近衛文麿内閣成立以降,新体制運動が展開され,経済団体の再編成はとくにその焦点となった。その結果,緊急を要する鉄鋼業についての再編成がはかられ,同年4月,まず鉄鋼統制会を発足せしめ,これを機にようやく重要産業団体令の制定をみた。この勅令にもとづいて各統制会の設立がすすんだが,それらは従来の産業統制とは異なり,完全な強制カルテルであった。各産業別にその関係会社または団体は,すべて主務大臣の指定によって,統制会の会員となることを強制された。また会長権限がいちじるしく強化され,加盟した法人の役員解任命令権にもおよぶものであった。同時に中小企業を対象とする地区別の統制組織としての統制組合も組織され,その理事長の任免権もまた統制会会長に属した。会長自体の任免権は主務大臣が掌握していて,政府の統制権限はさらに強力なものとなった。かくして2次にわたる指定により,各産業別に鉄鋼石炭鉱山セメント,自動車,車両,精密機械,電気機械,産業機械,金属工業,貿易造船鉄軌軽金属羊毛,麻,人絹,綿スフ,皮革油脂,化学工業,ゴムの22の統制会がつぎつぎに組織された。しかし,兵器製造部門はなお直接陸海軍省の管理下に残され,またより強力な統制方式としての営団が結成されるなどして,統制会は実質的には,十分な成果を発揮しえず,また43年10月の軍需会社法の公布は,さらにいちだんと統制会の効力をそぐ結果となった。これらのすべては戦後消滅した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「統制会」の意味・わかりやすい解説

統制会
とうせいかい

経済新体制下の一群の国策カルテル的経済統制機関。1940年(昭和15)夏から、革新官僚が企業経営にいっそう介入して経済統制を強めるために構想したが、自主統制を求める財界の反対と官庁間の所管争いとにより、実現は遅れ、かつ政府機関と民間団体の二重性格をもつものに修正された。40年12月の経済新体制確立要綱の閣議決定以後、41年8月に重要産業団体令が、また42年4月には金融統制団体令が公布され、この二勅令に基づき、41年末から43年1月にかけて兵器工業以外の24の重要事業部門に設立された。しかし、官庁からの権限移譲は縮小、遅延し、統制会の二重性格による非能率性も露呈し、期待された生産増強には役だたなかった。

[疋田康行]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「統制会」の解説

統制会
とうせいかい

経済新体制確立要綱にそって各産業別に組織された統制組織。1941年(昭和16)8月公布の重要産業団体令を法的根拠とする。従来の多元的な統制団体のもつ欠陥を解決するため,関連企業の強制加盟により産業別に組織され,指導者原理が導入された。統制会会長の権限は,生産・販売・価格などの指令権から加盟企業役員の任免権に及び,その任免権を主務大臣が掌握することにより,政府・統制会・企業というピラミッド型の一元的な組織の創出が追求された。ほぼ全産業にわたる22の統制会が組織された。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「統制会」の意味・わかりやすい解説

統制会
とうせいかい

第2次世界大戦中,日本で設けられた経済統制団体の総称。 1941年8月前年決められた経済新体制確立要綱に基づき,重要産業団体令が公布され,これによって 10月鉄鋼統制会をはじめ7業種 12部門の統制会が結成された。その後業種別統制会は 18になり,42年に制定された全国金融統制会とともに重要産業統制団体協議会を結成して,戦時経済の遂行に寄与した。第2次世界大戦後消滅した。

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世界大百科事典(旧版)内の統制会の言及

【統制経済】より

…これは財界などの反対にあって骨抜きにされた経済新体制確立要綱原案の具体化として,国家総動員法18条にもとづく勅令である。この勅令によって翌42年にかけて22の産業別統制会が,また一定地区別に統制組合が結成されていった。これらは完全な強制カルテルであり,いわゆる指導者原理が導入されて,会長の権限とさらにその会長の任免権を掌握した主務大臣の権限がいちじるしく拡充された。…

※「統制会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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