2011年(平成23)3月11日の東北地方太平洋沖地震により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い、2011年4月22日から同年9月末まで子供、妊婦、要介護者らに退避を要請した地域。住民の生命・身体の危険を防ぐため、立入りを原則制限・禁止した避難指示区域の一つである。事故後も福島第一原発から放射性物質が漏れる緊急事態が想定されたため、政府は原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)に基づき、住民に対し、いつでも屋内退避や別の場所への避難ができるように準備を求めた地域である。福島第一原発から半径20~30キロメートル圏内のうち、1年間の積算放射線量が20ミリシーベルトに達するおそれがあった計画的避難区域に該当しない地域をさした。具体的には、福島県の広野(ひろの)町(全域)、楢葉(ならは)町(福島第一原発から半径20キロメートル圏内を除く全域)、川内(かわうち)村(同)と田村市の一部、南相馬(みなみそうま)市の一部が該当し、約6万人の住民が対象となった。同区域内では、避難準備をしていれば日常生活や事業活動をすることは可能であったが、自力避難が困難な子供、妊婦、要介護者、入院患者らについては区域へ立ち入らないよう要請した。このため区域内の保育所、幼稚園、小中学校、高校は休園・休校となり、子供といっしょに避難する家族などが多く、同区域内の人口のほぼ半数にあたる約2万8000人が区域外へ避難した。
政府は2011年9月末、福島第一原発からの放射性物質放出をほぼ管理できるようになったとして緊急時避難準備区域を解除した。2012年8月には住民1人当り月10万円を支給していた東京電力の精神的損害賠償(慰謝料、計180万円)を打ち切った。区域内の自治体は帰還を促すため小中学校の授業再開、企業誘致、集合住宅の整備などを進めたが、過疎化に原発への不安が重なり、事故10年後の2021年(令和3)3月時点で、域内市町村の人口は事故前の5~9割程度にとどまる。緊急時避難準備区域内の住民の一部は、他の避難指示区域との賠償額に格差があるなどとして国や東京電力を相手取って裁判を起こし、賠償額の上乗せを命じる地裁・高裁判決が出ている。
[矢野 武 2021年6月21日]
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