デジタル大辞泉 「朱」の意味・読み・例文・類語
しゅ【朱】
2 黄色みを帯びた赤色の顔料。天然には
3 「朱肉」の略。
4 「
5 朱墨で歌や俳句などに点をつけたり、添削したりした書き入れ。「
6 ⇒しゅ(銖)
[類語]赤・真っ赤・
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
赤色硫化第二水銀HgSの実用名で,水銀朱ともいう。天然には後述のようにシンシャ(辰砂)として産出するが,現在は人造朱が工業生産され,無機顔料である。酸,アルカリに不溶,王水および硫化ナトリウムには可溶である。無機顔料として耐薬品性はすぐれるが,耐光性は中程度で日光に長くさらされると黒変する。密閉反応容器に水銀,硫黄,苛性アルカリを原料として入れ,水蒸気を吹き込みつつ回転させ加熱反応させると,まず黒色の硫化水銀が生成し,次いで赤色硫化第二水銀に変化するが,アルカリをカリウムにするかナトリウムにするかにより,また温度の変化によって,赤から黄までいろいろな色調のものが得られる。これを水洗,ろ過,粉砕して所定の色の顔料を得る。漆器の着色,絵具,朱肉,朱墨に用いられるが高価である。
執筆者:新井 吉衞 日本では古来,丹砂,朱砂,真朱,光明砂などと称され,成分の純度,色彩の具合で区別される場合もあるが,つまりは辰砂である。辰砂は中国の湖南省辰州の産が有名でこの名ができた。辰砂は古くから水銀とともに医療等に使用され,粉末にして朱漆とし顔料に用いられた。16世紀中期から中国産その他の辰砂,銀朱(人造朱)が水銀とともに輸入された。辰砂は7世紀末に伊勢,常陸,備前,日向,伊予の諸国に命じ献じさせ,豊後より真朱を貢させた。近世では伊予,豊前等で採取され,大和吉野川上の産は上品と称された。これらのうち辰砂,水銀の産で著名なのは伊勢丹生村(現,三重県多気町)である。人造朱の製法は藤原時代すでに知られたらしいといい,自然朱とともに漆工業発達などにつれ顔料として需要が増し,近世には朱の販売に独占が認められ,朱座の成立をみた。
執筆者:小葉田 淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
天然には辰砂(しんしゃ)として産する。紀元前から使用されていた赤色顔料。水銀朱ともいう。硫化水銀(Ⅱ)HgSからできているが、最近ではカドミウムレッドCd(SSe)やモリブデンレッド(クロムバーミリオン)Pb(CrMo)O4などで置き換えられ、用途は狭くなっている。したがって、バーミリオンというとこのクロムバーミリオンと混同されるので、朱とよぶほうがよい。可溶性の水銀塩に硫化ナトリウムNa2Sなどを加え、生成した黒色の沈殿HgSを、アンモニア水中で、約一昼夜攪拌(かくはん)すると朱色に変色し、目的物が得られる。日本では漆の着色にもっとも多く使用され、また、一部は朱肉、プラスチックの着色、あるいは独得の赤の色調が珍重され油絵の具に使用されている。硫化水銀カドミウム(CdHg)Sの固溶体として、色調を調節することもある。
[大塚 淳]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
銀朱ともいう.硫化水銀(Ⅱ)(α態)を成分とする赤色顔料.日光,熱に弱く,かつ有毒.高価で印肉用,絵の具などに少量使われるのみである.水銀と硫黄からつくられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…銭・厘を補助単位とする十進法の計算体系をもつ。それまで流通の江戸期金貨には1601年(慶長6)制定の両・分(ぶ)・朱という単位が使用されていた。1両=4分,1分=4朱の四進法であり,鋳貨の形態にも小判形と方形との2種があった。…
…まず中国の字典《説文(せつもん)解字》によると,赤は〈南方の色なり〉という。《淮南子(えなんじ)》天文訓は天の五星を説明して〈南方は火なり,その帝は炎帝……その獣は朱鳥〉という。仏座や墓室に見られる四神の図のうち,南方に朱雀(朱鳥)が配されるのは,それが太陽(天の火)の方角だからである。…
…緑色の緑青も同じく銅の化合物で,原料は孔雀石である。赤色には朱が広く使われた。朱砂は天然に産する硫化水銀を砕いたもので,とくに良質なものを中国の産地名にちなみ辰砂(しんしや)と呼んで,そのまま顔料名ともなっている。…
…顔料の種類も増えており,前3000年ころにはエジプト青(天然物を焼いて得られるケイ酸銅)が開発されている。また天然シンシャから得られる朱(硫化水銀),マラカイト(炭酸銅)も知られていた。ギリシア文明ではもっと広範囲に顔料を用いた。…
…そうしたなかで,個人様式としての風の伝承が重視されたり,伝書類の刊行も多くなる。鶴沢清七が現行の〈朱〉(朱章)のもとになるものを創案して曲を書きとどめるようにもなる。また,18世紀末には植村文楽軒の文楽芝居が出現し,幕末には義太夫節による人形芝居興行の代表的存在となった。…
…引退後3世鶴沢友次郎を襲名。現在使用されている三味線の朱(奏法譜)のもととなる譜を,野崎検校門弟信都(のぶいち)の《律呂三十六声麓の塵》の影響下に創案し,後世の三味線方から崇拝されている。1781年(天明1)の《儀太夫節合控張》ほか6冊が最初の朱の例である。…
※「朱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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