縫う(読み)ヌウ

デジタル大辞泉 「縫う」の意味・読み・例文・類語

ぬ・う〔ぬふ〕【縫う】

[動ワ五(ハ四)]
糸を通した針を布地などの裏表に交互に刺して進める。また、そのようにして布地などをつなぎ合わせたり、衣服などを作ったりする。「裾のほつれを―・う」「カーテンを―・う」
(「繍う」とも書く)刺繍ししゅうをする。縫い取りをする。
「地獄絵を―・うたうちかけの裳を」〈芥川・きりしとほろ上人伝〉
傷口を針と糸でとじ合わせる。縫合する。「五針も―・う怪我けが
槍や矢などが刺し貫く。
「白犬が一頭、たかうすびょうの矢に腹を―・われて」〈芥川偸盗
事物や人々の狭い間を抜けて進む。「雑踏を―・って進む」「間隙を―・う」
[可能]ぬえる
[類語](1つづじるかがけるまつる仕付ける裁縫する縫製する縫い込む綴り合わせる綴じ合わせる綴じ付ける

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「縫う」の意味・読み・例文・類語

ぬ・うぬふ【縫】

  1. 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
  2. 針に通した糸などを布や皮革などの裏と表から交互に刺し貫く。また、そのようにして布や皮革などを綴じ合わせたり、ものを作ったりする。
    1. [初出の実例]「青柳を 片絲によりて や おけや 鶯の おけや 鶯の 奴不(ヌフ)といふ笠はおけや 梅の花笠や」(出典:催馬楽(7C後‐8C)青柳)
    2. 「よべぬひし御ぞどもひきさげて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
    3. 「医者に訊くと実際腹を十幾針か縫ったと云ふ」(出典:赤西蠣太(1917)〈志賀直哉〉)
  3. ( 「繍」とも書く ) 色糸を布に刺して模様を出す。縫い取りをする。刺繍(ししゅう)する。
    1. [初出の実例]「覆は蘇芳の村濃にて、藤の折枝をぬひて」(出典:二十巻本天徳四年内裏歌合(960))
  4. 刺し貫いてとめる。
    1. [初出の実例]「鏃(やじり)あまりて榎の幹へ一鏗(ひとゆり)(ゆり)て縫(ヌフ)たりける」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)前)
    2. 「杉戸に縫(ヌ)うたる男と女の死骸が」(出典:歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)三幕)
  5. 事物や人々の間を、衝突を避けて左右に曲折しながら進む。
    1. [初出の実例]「空に闇を縫(ヌ)ひ行く烏の両三声」(出典:別れ霜(1892)〈樋口一葉〉一二)
    2. 「美しい池沼を縫ふ小路で」(出典:雪国(1935‐47)〈川端康成〉)

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