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繊維機械工業 せんいきかいこうぎょう

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

繊維機械工業
せんいきかいこうぎょう

繊維機械を製造する工業。主要製品は粗紡機,精紡機,織機,準備機,編組機,染色仕上機,化学繊維機など。斜陽といわれる繊維工業ユーザーであるため,大手メーカーでは早くから工作機械などで経営多角化を進めてきており,専業メーカーは皆無である。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

繊維機械工業
せんいきかいこうぎょう

繊維製品の製造・加工・処理などに使用される機械、すなわち繊維機械を生産する工業。
 繊維機械工業は、古い歴史を有しており、18世紀における近代木綿工業の確立に端を発する。日本では、1867年(慶応3)にイギリスから輸入された繊維機械の模倣が試みられた。そして、1890年(明治23)には、豊田佐吉(とよださきち)が、豊田式人力織機を開発しており、改良を重ね、1897年に動力織機を発明している。その後、豊田佐吉は、1924年(大正13)に新自動織機を完成、1926年には愛知県刈谷(かりや)に豊田自動織機製作所(現、豊田自動織機)を設立した。豊田佐吉による国産動力織機の発明により日本繊維機械工業の基礎が築かれ、繊維機械の国産化や量産化が進展した。自動織機を軸に、繊維機械工業は、第二次世界大戦前の日本を代表する工業となり、繊維生産の盛んであった愛知、京都、石川、和歌山、大阪、兵庫などの周辺に繊維機械メーカーが産地を形成することになる。
 19世紀末から20世紀初頭にかけては、人絹、スフ(ステープルファイバー)といった化学繊維の工業化を繊維機械工業が支えた。1930年代から第二次世界大戦後にかけては、合成繊維の開発が、繊維機械工業に変革をもたらすことになる。日本の化学繊維や合成繊維(ナイロン)の開発体制は、第二次世界大戦前から国際的に注目されるような水準に到達していた。第二次世界大戦中は、「紡機制限令」により、軍事用繊維機械以外の生産が禁止され、生産は停滞していた。戦後は、繊維工業の復興とともに繊維機械の生産が急増している。1950年(昭和25)の繊維製造設備の生産制限の撤廃と朝鮮動乱による特需景気等により復興が進み、繊維機械の生産は急拡大した。そして、繊維機械工業は、十大紡七化繊(紡績10社、化繊7社)とされた第二次世界大戦後の繊維工業の発展と連動して躍進した。
 繊維製品は多岐にわたり、また、繊維の製造は多くの工程に分割されている。このこととの関連で、繊維機械も多様であり、主要機種だけでも150種を超えるとされてきた。ただ、(1)化学繊維機械、(2)紡績機械、(3)準備機械、(4)織機、(5)編組(あみぐみ)機械、(6)染色仕上げ機械、(7)その他の繊維機械、(8)部用品という8分類が定着しており、統計がとられている。(1)化学繊維機械には、化学繊維、合成繊維のフィラメントの製造、加工を行う紡糸機、巻取機等がある。(2)紡績機械には、原綿、毛、麻等、原綿状の繊維素材を紡いで原糸または糸にするまでの工程を担う混打綿機をはじめとする綿紡機、毛紡機といった機械がある。(3)準備機械は、製織工程に送られる糸を加工し、巻き返しといった処理をする製織準備機械、織布のための準備をする機械で、撚糸(ねんし)機、糸巻機等がある。(4)織機は、布を織り上げていく機械で、綿織機、絹織機、毛織機などがある。織機は、緯糸(よこいと)の挿入方法の違いにより有杼(ゆうひ)織機(シャトル(シャットル)織機)と無杼織機(シャトルレス織機)とに分類される。後者には、レピア織機、グリッパー織機、水の噴射を利用して経糸(たていと)に緯糸を通すウォータージェット・ルーム、空気の噴射を利用して経糸に緯糸を通すエアジェット・ルーム等がある。ヨーロッパではレピア織機に重点がおかれ、日本ではエアジェット・ルームが主力製品となっている。無杼織機が高生産的機種とされる。(5)編組機械は、糸を編組みし、メリヤス、ニット等を生産する機械である。ニット編機分野で、高速化、自動化を実現し、強力な国際競争力を有する日本企業が出現している。組機は、紐(ひも)、電線コード、消防用ホース等をつくる機械である。(6)染色仕上げ機械には、精錬漂白機、染色・捺染(なっせん)機、仕上げ加工機等がある。(7)その他の繊維機械とされる機械には、織物や編み物地に模様を入れるための装置、ドビー、ジャガード、さらに、不織布機械がある。(8)部用品は、ヘルド(綜絖(そうこう)。緯糸を通すために経糸を上下に開く部品)、ヘルドフレーム、筬(おさ)(経糸を整え、緯糸を打ち込む部品)等である。それぞれの分野で、高速化、効率化、大容量化、自動化を目ざした技術革新が追求され、新機種開発が進められている。
 高度経済成長期、1960年代に、早くも新興国の追上げ等があり、繊維製品は生産過剰をきたし、関連して繊維機械工業は生産の縮小を余儀なくされた。そして、オイル・ショック後、1974年(昭和49)以降、繊維機械工業は、繊維不況に直面し、国内市場が急激に低迷し、かわって、繊維工業ともども繊維機械工業の海外進出が活発化している。まず、輸出が拡大し、とくに、アジア諸国向けのウェイトが高くなった。アジアにおける化学繊維の生産の拡大と連動して、国内は繊維不況であったが、繊維機械の生産が維持され、輸出額が増加している。1974年には、輸出比率は70%に達し、繊維機械工業は、輸出主導型になった。繊維の生産は生産コストの安い中国を中心としたアジア諸国にシフトしており、連動して繊維機械の輸出比率も高くなり、とくに、中国向け輸出が突出している。
 中国の化学繊維メーカーの設備投資の増大が、日本の化学繊維機械の輸出の増加を牽引(けんいん)していた。しかし、日本の繊維機械の輸出額は、1990年(平成2)をピークに激減し、長期低落傾向をたどっている。バブル崩壊後は、繊維工業の海外生産の拡大や汎用(はんよう)機を中心に安価な他国製品の市場拡大等に影響され受注の低迷が続いている。それゆえ、中国のみでなく、インド、バングラディシュ等への繊維機械の輸出拡大を試みている。それでも、日本繊維機械工業のアジアでの存立基盤は、競争激化、先進国との競争、新興国企業の攻勢に直面し、動揺している。台湾、韓国等では国産化が進み、中国企業の台頭も顕著であった。
 具体的に、リーマン・ショック後、2009年(平成21)の生産額983億円、輸出額1153億円は、それぞれ前年より約半減した。2010年には持ち直し、2012年にまた落ち込み、2013年には生産額2300億円、輸出額2500億円にまで回復。生産額以上の輸出額を記録した。機種別では、生産額では準備機械、織機、編組機械のウェイトが高かったが、2012年ごろから化学繊維機械の比重が増した。輸出は、2010年代は準備機械、織機、編組機械の順となっている。なお、輸入は部用品が中心で、各年輸出額の約1割にとどまっている。
 一部の日本の繊維機械メーカーは、強力な国際競争力を有している。豊田自動織機、津田駒工業、島精機製作所など大手企業が高い技術力を背景に世界でも高いシェアを占め、技術移転を進め、現地生産を拡大した。日本繊維機械工業は、中国や開発途上国に事業を展開し、グローバル化、最適地生産を推進している。それでも、主要市場であるアジアにおいて厳しい事態に陥っている。なにより、期待された中国やインド経済の世界経済と関連した景気の低迷が、各国の繊維工業、繊維機械工業にダメージを与えていることがある。なおも、国際競争が激化しているのである。中国やインドにおいては、台湾、韓国に加えてドイツ、イタリアの繊維機械の輸入が拡張している。中国企業も台頭してきている。新興国市場で、現地企業、欧米、アジア企業が入り乱れての熾烈(しれつ)な企業間競争が展開されている。このため、日本の繊維機械メーカーの経営状況はきわめて厳しく、転業、廃業に追い込まれる企業が増え、業界再編成が進行しつつある。
 2008年の『工業統計表』では、4人以上の従業員を有する事業所数は560か所、従業員数は1万4652人であった。それが、2012年では、事業所数は419か所、従業員数は1万2081人となっている。この間、事業所数で141か所、従業員数で2571人減少しており、21世紀に入ってからの衰退化傾向はより顕著である。
 500人以上の従業者を擁する企業は、製織機、編組機械を生産する2社にとどまるが、大手メーカーは、厳しい状況に対応して自動車品、機械部品などとの兼業を進めている。豊田自動織機の全売上高に占める繊維機械の割合は4%(2014年3月期)に満たない。大手繊維機械メーカーは、工作機械、自動車部品などの製造、多角化を進め、衣料にとどまらず、各種機械装置、建築素材用となる高性能な産業資材織物を製造しうる機械の開発を進めている。他方、多くの中小規模のメーカーは、大手と競合しないような小規模、特殊分野の機種を専業形態で生産する場合が少なくない。繊維機械は多種多様であり、部品も多岐にわたり、部用品メーカー、加工下請メーカーが多層に多数存在する業態であった。そうした伝統的な産業構造が、深刻な不況と厳しい国際競争の下で生産額、事業所数、従業員数の減少とともに、変容している。
 もちろん、日本の繊維機械工業は、多角化のみでなく、コンピュータを駆使しての自動化、簡便な操作、省力化、高付加価値をもたらす高速化、高機能機種開発、小ロット化、多品種対応と多様な技術革新を追求している。ユーザーの要求を充足し、単一機械を超え、多様なノウハウをも統合してのシステム開発を具体化している。そして、海外の複数の企業と共同で研究開発を実施し、革新的な機械の開発を試みている。WEB対応による製織、生産支援も進展している。さらには、電力、空気、水の消費量に関するエネルギーコストの削減、振動や騒音を抑える作業環境の改善、労働環境整備、環境保全、環境に優しい素材への取組みも本格化しつつある。こうした取組みを進め、これまで以上に革新的な機械を開発し、強力な国際競争力の構築が不可欠である。[大西勝明]

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