2匹まれには3匹以上のカイコが共同して作った繭。同功繭(どうこうけん)ともいう。玉繭は1匹のカイコの作った繭と比べ,その形状は大型で短楕円あるいは円形のものが多いが,なかには複雑な奇形を呈するものがある。繭層は厚く,ちぢら(繭層表面のちりめん状のしわ)はあらく不鮮明である。玉繭が形成されるのは品種的差異による影響が強いとされ,一般にヨーロッパ種は少なく,日本種が多いといわれる。しかし,最近の実用品種は日本種といってもヨーロッパ種の血統が入っているため少なくなり,むしろ中国種の方が多い。また玉繭が作られる多少は,蔟(まぶし)(カイコが繭を作る足場にする器具)の種類あるいは上蔟(じようぞく)(蔟に熟蚕を入れる操作)条件の相違の影響を受ける。上蔟時の気温の高い場合は低温よりも,上蔟蚕が過熟の場合は適熟よりも,上蔟蚕数が一定面積に対し数が多い場合は少ない場合よりも,それぞれ玉繭が作られやすい。最近はカイコの品種の改良や,区画蔟の普及などにより玉繭が形成される割合は少なくなってきている。玉繭を繰った糸を玉糸というが,玉繭の解舒(かいじよ)が不良のため,繰糸した糸条に大ずるぶし,大わぶしなどと呼ばれる大・中のふしが多く発現しやすい。したがって,玉糸を用いた織物には多様な形状のふしが浮き出た独特の味わいのある外観を呈する。玉糸は和装用織物では裏絹,銘仙,洋装用織物ではシャンタン,リンシャンと呼ばれる野趣のある絹織物の素材として用いられるほか,上質な真綿の原料として使われ,それは高級な紬織物の素材として珍重されている。
執筆者:小河原 貞二
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…また今日では必ずしも紬糸によらない織物でも,できあがった織りの風合いが紬らしい粗い感じをもっているものを〈紬〉と称していることもある。すなわち玉繭(たままゆ)(一つの繭を2匹以上の蚕がつくった繭)からとった玉糸や山繭糸(ヤママユ)を用いて織ったものを〈山繭紬〉などと称し,反対にたとえば大島紬のように,現在の品はまったく紬の風合いを失ってしまったものでも,かつての名称どおり〈紬〉と称しているものもある。したがって〈紬〉と通称される織物も,材質的にみた場合とできあがった外観を主としていった場合とは,その間に多少のくい違いがある。…
※「玉繭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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