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老化にともなう呼吸器の病気と症状 ろうかにともなうこきゅうきのびょうきとしょうじょう

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家庭医学館の解説

ろうかにともなうこきゅうきのびょうきとしょうじょう【老化にともなう呼吸器の病気と症状】

 お年寄りの呼吸器は、呼吸機能が低下したり、横隔膜(おうかくまく)などの呼吸筋(こきゅうきん)のはたらきが低下したりするなど、加齢(かれい)による影響を大きく受けます。とくに、つぎに述べるような呼吸器疾患にかかりやすくなります。
◎肺炎(はいえん)
◎肺気腫(はいきしゅ)
◎肺がん
◎肺結核(はいけっかく)
◎慢性気管支炎(まんせいきかんしえん)

◎肺炎(はいえん)
 肺炎(「肺炎とは」)は、お年寄りの死因のなかでは、新しい抗生物質が発達した現在でも、トップにあげられています。
 お年寄りの肺炎は、かぜから肺炎になる場合(市中肺炎(しちゅうはいえん))と、がんなどの重い病気で治療中に肺炎を併発する場合(院内肺炎(いんないはいえん))に分けられます。
 これ以外に、誤って気管に飲食物を入れてしまうこと(誤嚥(ごえん))によっておこる場合(嚥下性肺炎(えんげせいはいえん))もあります。
 高齢であればあるほど、また、栄養状態などの全身状態が悪ければ悪いほど、さらに、ほかに重い病気をともなっているほど、肺炎による死亡率は高くなります。市中肺炎の死亡率は10~20%以下ですが、院内肺炎では70%以上にもなります。
●原因
 市中肺炎、院内肺炎、嚥下性肺炎のいずれも、原因となる菌(起炎菌(きえんきん))が肺内に多量に入り込み、からだの抵抗力が弱っていて、起炎菌をうまく殺菌できないときに発症します。
 市中肺炎では、冬などインフルエンザの流行期に、二次的に細菌が感染した場合、もっとも注意が必要です。市中肺炎の3分の1は、肺炎双球菌(はいえんそうきゅうきん)が原因だといわれています。
 一方の院内肺炎は、グラム陰性桿菌(いんせいかんきん)という種類に属するクレブシエラ菌、緑膿菌(りょくのうきん)、多剤耐性黄色(たいせいおうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん)(MRSA)が起炎菌であることが多くみられます。
●検査と診断
 肺炎は、38℃以上の発熱や呼吸器の症状(たん、せき、呼吸困難)が特徴ですが、お年寄りでは、熱が微熱程度(37℃台)にとどまったり、呼吸器の症状が乏しかったりすることがあります。そのかわり、全身のだるさ、食欲の急激な低下、いきなり意識が混濁(こんだく)することなどが初期症状になることがあります。
 認知症をともなう患者さんでは、訴えが正しく伝えられなかったり、訴えそのものが乏しかったりすることがよくあるため、早期発見がむずかしいことが多いようです。
 お年寄りでは、呼吸数が多いこと(安静時で1分間に25回以上)、脈拍(みゃくはく)が速いこと(安静時で100以上)が、肺炎の初期のサインであることがよくあります。
 胸部X線写真では、肺炎の病巣は浸潤影(しんじゅんえい)としてみられますが、脱水があったり、あるいは、肺気腫(はいきしゅ)など肺にほかの病変があると、浸潤影がみられないこともしばしばあります。
 血液検査では、白血球数(はっけっきゅうすう)の増加、C反応性たんぱく(CRP)の陽性といった、炎症がおこっているとみられる結果が出るのが特徴です。
●治療
 たんを検査して起炎菌をはっきりさせてから、これによくきく抗生物質を選んで使用するのが理想的です。しかし、短時間に正確に検査ができないからといって、数日間も待てません。そこで、医師の経験から抗生物質を選んで、治療を始めます(エンピリック・セラピーといいます)。
 入院治療が必要となるのは、意識が混濁しているとき、食事や水分が十分にとれないときか、すでに脱水症状があるとき、チアノーゼ(指先やくちびるの色が悪くなる)などがあり酸素吸入が必要なとき、別に重い病気があるときなどです。

◎肺気腫(はいきしゅ)
 肺気腫(「肺気腫」)は、長年の喫煙によって、肺胞(はいほう)と呼ばれる部分が広く壊れてしまい、ガス交換(からだに必要な酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出すること)が著しく障害された状態です。
 一度、壊れた肺胞は、もとにもどることはありません。また通常、肺気腫は進行していく病気です。
●症状
 特徴的な症状は、階段や坂道をのぼるときの息切れ、せき、たん、ゼイゼイするぜんそく発作(ほっさ)などです。
●原因
 長年にわたって喫煙してきた人がよく発症します。喫煙の全本数(1日の平均本数×年数)が多いほど、重症になる傾向があります。
 男性に圧倒的に多い病気ですが、個人差も大きくみられます。また、女性のほうが、男性よりも重症になりやすいといわれています。
 遺伝的なものが関係するかどうかはまだわかっていませんが、血縁者に重症の肺気腫の患者さんがいる人は注意しましょう。
 そのほか、大気汚染や粉塵(ふんじん)の中ではたらいている人は、肺気腫にかかりやすいといわれています。
●検査と診断
 肺機能検査によって、気管支が狭くなり、空気が通りにくくなっていること(閉塞性換気障害(へいそくせいかんきしょうがい))、さらに胸部CT検査によって、肺胞の部分が広く壊れている像が見られたら診断がつきます。また、動脈血を採血して、含まれる酸素の量、二酸化炭素の量を測定し、重症度を判定します。
●治療
 第1は、禁煙することです。ついで、薬物療法として、定量噴霧式吸入器によって、抗コリン薬やβ2刺激薬の吸入を行ないます。
 ぜんそく症状がある場合には、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬の吸入も有用です。
 そのうえで呼吸困難がなお強くみられれば、テオフィリン徐放剤(じょほうざい)を服用します。さらに呼吸困難が高度な場合は、ステロイド薬の内服を行ないますが、お年寄りでは副作用として、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、糖尿病、高血圧を悪化させることが多くあります。したがって、ステロイド薬の内服は、治療効果をみながら、最小期間にとどめることがたいせつです。
 もっとも重症で、ガス交換が著しく障害されている場合には、自宅で、酸素吸入を続けること(在宅酸素療法(ざいたくさんそりょうほう))が必要となります。
●予防
 禁煙です。本人が喫煙しなくても、他人の煙で障害される受動喫煙(じゅどうきつえん)が問題となってきています。
 どういう人が肺気腫にかかりやすいかを予見する方法は現在ありません。したがって、すべての人が禁煙することがもっともよい予防法なのです。お年寄りになってから禁煙しても、けっして遅くはありません。この病気は、禁煙で進行が遅くなったり、低下した肺の機能も少しは回復することが知られています。回復すると、なによりも自覚症状が改善されます。
 少量でも喫煙していれば、薬物療法をしても、まったく意味がありません。

◎肺(はい)がん
 肺がん(「肺がん」)は、大きく分けて、太い気管支に発生する肺門型(はいもんがた)と、細い気管支や肺胞(はいほう)(肺の実質的な部分)に発生する末梢型(まっしょうがた)に分類されます。
 肺門型は、長年の喫煙を続けた人に多いのが特徴で、がんの組織の分類からすると、扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんと呼ばれるものが大部分です。
 末梢型は、80歳以上の高齢の女性がかかることが多く、がんの組織からいうと、腺(せん)がんと呼ばれるものが多いのが特徴で、喫煙歴のない人にもおこります。
 肺がんは、このような分類のほか、小細胞(しょうさいぼう)がんと呼ばれる成長の速い、悪性度の高いものと、非小細胞(ひしょうさいぼう)がん(扁平上皮がん、腺がん、大動脈がん)の2つに分類されることがあります。
 お年寄りの肺がんは、検診で見つかる場合が全体の3分の1、他の3分の1は、ほかの病気の診断や治療時にたまたま発見されるもので、残りの3分の1は、骨や脳に転移があって、初めて肺がんが見つかるものです。
●原因
 喫煙が主要な原因とされていますが、お年寄りの場合には、石綿(いしわた)や粉塵(ふんじん)を吸い込むような仕事についていたことが原因となっている患者さんが多いことも特徴です。
 高齢女性の腺がんは、青野菜の摂取が少ない場合におこりやすいといわれていますが、はっきりしたことはわかっていません。
●検査と診断
 たんのなかに、がん細胞がみられれば診断がつきます。
 肺がんが疑われながら、確定していない場合には、気管支鏡という内視鏡を使って、がんがあるらしいところの組織を少量とって顕微鏡でみたり(生検(せいけん))、その部分を生理的食塩水で洗いだした液を顕微鏡で調べて、がん細胞の有無を確認して診断されます。
 血液の中に、がんに特有な成分(腫瘍(しゅよう)マーカー(「腫瘍マーカー」))があるかを調べ、見つかれば有力な根拠になります。
●治療
 肺がんの診断がついたら、まず、小細胞がんか非小細胞がんかがみきわめられます。
 小細胞がんでは、抗がん剤による化学療法が有効な場合が多いのです。しかし、お年寄りは、小細胞がんでも、抗がん剤による治療に耐える体力があるかどうかが問題になります。一般的には、80歳以上の場合は、小細胞がんであっても、抗がん剤の使用によって生存期間が延びるとは必ずしもいえないようです。
 非小細胞がんの場合は、転移がなく、原発巣(げんぱつそう)(もとの病巣)が比較的小さい場合は、手術して切除します。この手術は、上葉(じょうよう)、下葉(かよう)という肺を構成している大きな部分(肺葉(はいよう))ごと、がんをとってしまうのがふつうです。したがって、お年寄りの場合では、原発巣が小さくとも、手術後の呼吸機能が、ふつうの生活をするのに十分なほど残るのかというみきわめが重要になります。一般的にいうと、70歳代が手術できるギリギリの線のようです。
 肺気腫(はいきしゅ)(「肺気腫」)をともなっている場合は、早期がんであっても手術できないこともあります。
 また、気管支が、がんでふさがっているような場合は、放射線の照射が行なわれます。
 手術、化学療法、放射線照射のいずれも無効であるような進行性のがんでは、症状を抑える対症療法(パリアティブ・ケア、あるいは緩和治療(かんわちりょう))が行なわれます。これは、患者さんに負担だけをあたえることになる積極的な治療は控え、がんの転移による痛みのコントロール、がんの広がりによる呼吸困難の治療、精神的な支えやはげましを主とするものです。

◎肺結核(はいけっかく)
 最近、増加が問題となっているお年寄りの肺結核(「肺結核」)は、若いころ肺結核にかかったが、化学療法を十分に受けなかった患者さんが年をとって、昔の古い病巣が再燃してきたという例がほとんどです。
 昔は、肺結核は恐ろしい病気でしたが、今では的確に診断し、適切に治療すれば治る病気になりました。
●原因
 結核菌の感染によっておこる病気です。お年寄りの場合には、糖尿病で血糖の調節がうまくいっておらず高血糖が続いているとか、がんがあって体力の低下が著しいなどの場合におこりやすくなります。
 胸水(きょうすい)がたまるような結核性胸膜炎(けっかくせいきょうまくえん)をともなうことが、しばしばあります。
 また、結核菌が血液の流れに入った場合には、いろいろな臓器に同時に結核病巣ができ、重症になることがあります。この転移した結核は、多くの場合、アワ粒のようにみえるので、粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)と呼ばれています。お年寄りに多くみられるのが特徴です。
●治療
 肺結核と診断された場合、INH(イソニアジド)、RFP(リファンピシン)、PZA(ピラジナミド)という3つの抗結核薬の飲み薬をいっしょに服用し、治療を始めます。
 PZAは最初の3か月で中止してもかまいません。INH、RFPは、その後も9か月ほど毎日服薬します。
 お年寄りでは、SM(ストレプトマイシン)、KM(カナマイシン)の注射によって、難聴(なんちょう)やめまいの副作用が若い人の場合よりもおこりやすいことがわかっています。そのため、これらの薬は、ほかの薬が、副作用などで使えない場合にだけ使用します。
 結核の薬の副作用には、著しい食欲低下や肝臓の障害があり、またPZAで痛風(つうふう)が増悪(ぞうあく)することがあります。
 しかし、副作用が出たからといって、すぐに服薬を中止するのは賢明ではありません。主治医に相談して、少量にするか、やむをえなければ、ほかの薬に変更してもらうようにします。
 今では、結核は治る病気になりましたが、勝手に薬を中止したり、きちんと服用しなければ、薬がきかない耐性菌(たいせいきん)になったり、他人に感染したりします。十分に注意しましょう。
●日常生活の注意
 現在の結核の薬は、非常によくききます。また、お年寄りの結核菌は、耐性菌ではないのがふつうです。
 以前のように、患者さんは、とくに安静にしたり、栄養状態に気を配ったりする必要はなく、ふつうの生活をしていればよいといわれています。入院も短期間ですむようになりました。
●予防
 肺結核にかかったことのある人、重症の糖尿病の人では、再燃の可能性がありますから、治らない「かぜ」というふうにかってに判断しないで、医療機関を受診し、検査をするようにしましょう。

◎慢性気管支炎(きかんしえん)
 慢性気管支炎(「慢性気管支炎」)は、一般的にはフレッチャーの基準というもので定義されています。毎年3か月以上の期間にわたり、とくに冬に、せき、たんが多く、このような状態が2年以上続く場合が慢性気管支炎です。
 たんやせきが数日間続くだけでは慢性気管支炎とはいえません。また、結核の後遺症で気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)(「気管支拡張症」)になった場合も、慢性気管支炎には含めません。
●原因
 おもな原因は喫煙です。そのほか、大気汚染、ほこりの多い職場での長期間の作業も原因となります。
●検査と診断
 厳密にはフレッチャーの基準にあてはまるかどうかで診断します。
 お年寄りでは、脳卒中(のうそっちゅう)の後遺症などによって、食事のときにしばしばむせることがあり、このようなことがあると、たんが多くなりますが、この場合は慢性気管支炎と診断しません。
 お年寄りの女性では、慢性副鼻腔炎(まんせいふくびくうえん)(蓄膿症(ちくのうしょう))があって、たんが多い場合がありますが、この場合は副鼻腔気管支症候群(ふくびくうきかんししょうこうぐん)といいます。
 呼吸機能の検査をすると、正常に近いことのほうが多いようです。
 胸部X線写真でも、はっきりした陰影をみることは少ないようですが、胸部CT検査では気管支が拡張しているのがみられることが多くなります。
●治療
 まず禁煙を厳守します。禁煙して数週間たつと、朝の起床時のたんが目立って少なくなります。
 感染がおこっていると、たんが粘っこく、切れにくく、膿(うみ)のような色がついてくるようになり、呼吸も苦しくなってきます。この場合は、10日から2週間程度、抗生物質を内服します。
 冬には肺炎(はいえん)になることもしばしばありますが、その場合は、肺炎に準じた治療をします。
 副鼻腔気管支症候群の場合や、びまん性汎細気管支炎(せいはんさいきかんしえん)と呼ばれる状態では、マクロライド系の抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシン)が有効です。2週間程度で、目立ってたんの切れがよくなってきます。この場合、抗生物質は少量を長期にわたって服用するのが効果的です。
 そのほか、抗コリン薬を定量、噴霧して吸入するとか、テオフィリン系気管支拡張薬の内服も、たんを出しやすくする効果があります。
●予防
 禁煙が第一です。また、粉塵(ふんじん)の中で長期間にわたって作業しなければならないような職場では、十分な予防対策が必要になります。

出典|小学館
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