老残遊記(読み)ロウザンユウキ

デジタル大辞泉 「老残遊記」の意味・読み・例文・類語

ろうざんゆうき〔ラウザンイウキ〕【老残遊記】

中国、清末の小説。20回。劉鶚りゅうがく作。1906年刊。作者とおぼしき老残と名のる医師が見聞したことを述べ、特に、清廉と自任する官僚横暴批判している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「老残遊記」の意味・わかりやすい解説

老残遊記
ろうざんゆうき

中国、清(しん)末の小説。20回。作者は劉鶚(りゅうがく)。1903年李(り)伯元の編集による『繍像(しゅうぞう)小説』半月刊誌に連載されたが第13回で中止し、翌年『天津(てんしん)日日新聞』に掲載され完結、06年単行本となった。「老残」と名のる医者が各地に旅行して官界と関係をもち、賢臣助力を得て冤罪(えんざい)を救う仕事をしたり、盗賊予防の策をたてたり、黄河洪水の被害者に同情して官吏の治水対策の無知を批判したりするが、とくに清官(せいかん)(清廉をもって自認する官吏)が国を誤ると指摘するのは、他の小説にみられない点である。作者の意図は、真の賢臣、清官によって仁政が行われるべしとの理想社会を期待したのであろう。続集は作者によると16回あるが、6回が公刊されている。

[尾上兼英]

『岡崎俊夫訳『老残遊記』(1965・平凡社・東洋文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「老残遊記」の意味・わかりやすい解説

老残遊記 (ろうざんゆうき)
Lǎo cán yóu jì

中国,清末の小説。劉鶚(りゆうがく)が洪都百錬生の筆名で雑誌に連載ののち1907年(光緒33)ごろ単行。全20回。第2集全9回。老残と号する男の旅行記の体裁で官界の内幕を描いているが,清廉な官吏にも亡国の危険がひそむと指摘するほか,黄河治水に関する作者の経験,夢幻的なエピソード,殺人事件などが雑然と書かれている。すぐれた叙景的文体が,小説らしからぬ構成を救い,清末小説の傑作の一つにしている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「老残遊記」の意味・わかりやすい解説

老残遊記
ろうざんゆうき
Lao-can you-ji

中国,清末の社会小説。劉鶚 (りゅうがく) の作。章回小説。初集 20回,二集6回。初集は光緒 29 (1903) 年より雑誌『繍像小説』に連載。同 33年刊。老残と名のる市中の医師の目を通して,役人の私欲に苦しむ清末の世相,特に清廉を売物にする役人が結局は酷吏と同じように人々を苦しめているという実情を痛烈に暴露したもの。二集は遺稿であるが,恋愛を中心としたもので,初集ほどの迫力はない。

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百科事典マイペディア 「老残遊記」の意味・わかりやすい解説

老残遊記【ろうざんゆうき】

中国,清末の小説。劉鶚(りゅうがく)〔1857-1909〕作。20回。1903年雑誌《繍像小説》に発表,1907年上海の商務印書館から単行。構成は老残という漢方医の遊歴に託した見聞記。官僚政治に対する痛烈な批判が中心。作者死後,2集6回が発見された。

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