人事院(読み)ジンジイン

デジタル大辞泉 「人事院」の意味・読み・例文・類語

じんじ‐いん〔‐ヰン〕【人事院】

内閣所轄の中央人事行政機関。国家公務員の給与その他勤務条件の改善および人事行政についての勧告、試験および任免、職員の利益保護など人事に関する行政事務を担当する。昭和23年(1948)設置。

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共同通信ニュース用語解説 「人事院」の解説

人事院

国家公務員人事管理をする中立的な第三者機関で、内閣の下に置かれている。国家公務員はストライキなどの労働基本権が制約されているため、公務員の基本給ボーナス改定に関し、民間企業の給与水準を調査し、その結果に基づき官民の差を埋めるよう国会と内閣に勧告する役割がある。採用試験や職員研修、任免基準の設定なども担う。

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精選版 日本国語大辞典 「人事院」の意味・読み・例文・類語

じんじ‐いん‥ヰン【人事院】

  1. 〘 名詞 〙 内閣の所轄の下に設けられる中央人事行政機関。昭和二三年(一九四八)設置。三人の人事官で構成される。国家公務員の給与その他の勤務条件の改善、人事行政の改善に関する勧告、職階制、試験、任免、給与、苦情処理、職員の利益の保護などの事務を行なう。毎年国会および内閣に業務の状況を報告するが、権限の行使に当たり、内閣の指揮監督は受けない。

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改訂新版 世界大百科事典 「人事院」の意味・わかりやすい解説

人事院 (じんじいん)

第2次大戦後,日本官僚制の近代化と民主化のために設けられた中央人事行政機関。当初は,臨時人事委員会として設立されたが,1948年の国家公務員法の改正により人事院に改組され,規模,権限が拡大強化された。設立の目的は,一般職国家公務員について,第1に戦前のような各省ごとの割拠主義的人事行政を打破し,また政党勢力に対して人事行政の公正化を保ち,科学的人事行政を実施することである。さらに第2に労働基本権の制約に対する代償として,公務員の福祉および利益を図ることである。このような目的を達成するため,人事院はきわめて独立性の強い合議制的機関であり,3人の人事官によって組織されており,そのうちの1人が総裁となる。人事官の任命については,その中の2人が同一政党に属し,または同一の大学学部の出身であることは禁じられている。人事院は内閣の所轄に属するが,首相に報告義務を負うにすぎず,国家行政組織法も適用されない。また予算面でも内閣からのある程度の独立性を与えられている。

 人事院の所掌事務としては,〈給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告,職階制,試験及び任免,給与,研修,分限,懲戒,苦情の処理その他職員に関する人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務〉(国家公務員法3条2項)をつかさどる。このような所掌事務について,人事院規則を制定し,人事院指令を発する等の準立法権をもつ,この人事院規則の規定事項は広範であり,とくに職員の政治活動の禁止に関する人事院規則は違憲の疑いがあるとの論議があった。また国家公務員がその意に反して不利益な処分を受けた際の不服を審査し判定する準司法権ももっている。このほか給与その他勤務条件の改善,人事行政の改善に関する勧告などの一般行政権限とは形態の異なった行政権限を行使する。とくに給与に関しては,人事院は,毎年,少なくとも1回,俸給表が適当であるかどうかについて国会および内閣に同時に報告しなければならず,給与を決定する諸条件の変化により,俸給表に定める給与を100分の5以上増減する必要が生じたと認められるときは,その報告とあわせて,国会および内閣に適当な勧告をしなければならない。この人事院勧告は引上げ率については,1953年以来,また実施時期については,70年以降勧告どおり実施され,ほぼ定着したかの観があった。しかし国の財政難とともに,1982年度には凍結され,83年度も完全実施は見送られ,勧告制度の否定につながるのではないかと大きな政治問題となっている。なお,人事院は,戦後改革一環として生み出されたため,占領政策終結の前後から人事院の廃止または,権限の縮小についての法案が何度か国会に提出されたが,いずれも成立しなかった。しかしILO87号条約の批准(1965)に伴い,公務員の組合活動に対する政府の対応策の強化という観点から人事院の二分割案がとり上げられ,ついに1965年人事局が総理府に設置された。これにより人事院の権限の一部が内閣総理大臣の権限に移されたが,人事院は依然として,中立性および独立性が要求される人事管理上の諸機能をもっている。
公務員 →人事行政
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「人事院」の意味・わかりやすい解説

人事院
じんじいん

一般職国家公務員の給与その他の勤務条件の改善および人事行政の改善等の事務をつかさどる内閣所轄の中央人事行政機関。国家公務員法(昭和22年法律第120号)により設置された。当初の名称は、臨時人事委員会で、1948年(昭和23)の同法改正により人事院となった。3人の人事官(そのうちの1人は人事院総裁)によって組織される合議制機関。

 国家公務員法は、人事院の独立性を確保するため、人事官の身分保障(8条)、内部機構の人事院による管理権(4条4項、国家行政組織法は人事院には適用されない)を規定している。人事院は、行政的権限のみでなく、準立法的権限および準司法的権限を行使する。法律によって人事院が処置する権限を与えられている部門については、その決定および処分は人事院によってのみ審査される。主たる行政的権限としては、人事院が行う勧告(給与勧告等)がある。これは国家公務員の労働基本権の制限に対する代償措置として重要である。準立法的権限として、人事院規則を制定する。人事院規則については、それが国家公務員の政治的行為の禁止を定めていることの違憲性、また、国家公務員の労働条件が広範に人事院規則によって詳細に定められていることなどが批判の対象ともなっている。準司法的権限としては、国家公務員に対する不利益処分の審査と勤務条件に関する措置要求の判定がある。なお、2010年(平成22)の時点で、国家公務員に対する労働基本権への付与の問題も含め、国家公務員制度改革の議論が進行している。

[平田和一]

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百科事典マイペディア 「人事院」の意味・わかりやすい解説

人事院【じんじいん】

官僚制度民主化のため,政党勢力に対する国家公務員人事行政の中立性維持と,公正で一元的な運営の保障を目的とする中央人事行政機関。1948年設置。国家公務員の勤務条件その他人事に関する利益を保護し,官吏の任用,給与に関する勧告などを行う。形式的には内閣の所轄下にあるがその指揮監督を受けず,独立に権限を行使できる。→人事院勧告人事官
→関連項目天下り行政委員会公平委員会公務員試験国家公務員法人事院規則

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知恵蔵 「人事院」の解説

人事院

国家公務員法に基づき、公務員制度を公正かつ能率的に運用するために設けられている中央人事行政機関。人事院は、内閣の統括の下に置かれているが、公務員制度への政治の介入を避けるために、高度の独立性が保障されている。人事院は、内閣が衆参両院の同意を得て任命する3人の人事官を最高意思決定機関とする合議制機関であり、人事官のうちの1人が人事院総裁に選任される。人事官の下に事務総長を長とする事務局が置かれる。人事官の任命に当たっては、厳しい制約が課されており、そのうちの2人が、同一の政党に属していてはならないし、また同一の大学学部を卒業したものであってもならない。人事院の権限は、人事規則の制定、給与基準の立案と改定案の立案、公務員試験の実施と任免、不利益処分についての救済申し立ての審査などであり、人事行政の全般にわたって、準立法機能と準司法機能を持っている。

(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「人事院」の意味・わかりやすい解説

人事院
じんじいん
national personnel authority

国家公務員法によって設置された中央人事行政機関 (3~25条) 。初め臨時人事委員会として発足したが,1948年 12月に人事院と改称された。その設立の目的は,官僚制の民主化,政党勢力に対する人事行政の公正化,統一的人事行政の実施などであった。その構成は認証官である3名の人事官 (うち1名総裁) から成る合議機関であり,人事院規則の制定改廃,給与に関する勧告,不利益処分審査請求の判定等の重要な権限を行使しており,準立法的機能と準司法的機能をあわせもっている。内閣の所轄のもとにおかれるが,国家行政組織法の適用を受けない独立行政機関である。

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世界大百科事典(旧版)内の人事院の言及

【人事院勧告】より

…1948年改正の国家公務員法にもとづいて設置された人事院は,人事行政の改善や,関係法令の制定改廃に関して,国会および内閣に勧告ないし意見の申出をする権限を有する。とくに職員の給与等の勤務条件に関しては,職員の団体交渉権および争議権が否認されているため,その代償措置として,必要に応じて改訂を勧告(人事院勧告)する権限を有している。…

※「人事院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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