肘折温泉(読み)ひじおりおんせん

日本歴史地名大系 「肘折温泉」の解説

肘折温泉
ひじおりおんせん

[現在地名]大蔵村南山 肘折

肘折集落にあり、銅山どうざん(烏川)に沿う。同川に並行する出羽三山登拝道(肘折口)の霊湯として古くより知られていた。肘折口開祖の末裔とされる烏川からすかわ阿吽あうん院には、元禄一四年(一七〇一)を初めとする開湯の由来を説く縁起が二、三あるが、いずれも諸国巡礼の行者が烏川と最上川との合流点で、烏川上流から流れてきた唐苧を見つけ川上に人家があるのを知り、地蔵の導きで当地に到達したと説く。新田本村鑑に「温泉二ケ所有り剪疵に妙なり、下の湯者疝気に奇妙也」とあるが、上のきづ湯・下の疝気湯と通称されて現在に至っている。

出羽三山八方七口の一つ肘折口は、夏の盛期には登拝する白装束の道者の行列が絶えることなく続いたといわれる。烏川の舟着場で上陸し熊高くまだか今小屋いまごやを経過して当地に到着した道者は「当村弐拾八軒当所湯元ニ而参詣之もの一宿致候」とされ(「覚」阿吽院文書)、翌日早朝、月山をめざして登った。温泉の東方丘上に開湯伝説にちなむ地蔵倉があり、さらに上の湯のすぐ裏の丘上には温泉の守護神薬師神社(旧薬師堂)がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「肘折温泉」の意味・わかりやすい解説

肘折温泉
ひじおりおんせん

山形県中央部、最上(もがみ)郡大蔵村(おおくらむら)にある温泉。1991年(平成3)肘折温泉郷として国民保養温泉地に指定された。月山(がっさん)を源流とする銅山川(どうざんがわ)中流に沿う。温泉の発見は古いが、開湯は室町時代以降で、江戸時代には中気、打ち身などに効く温泉として栄え、また月山の登山口にあたり、出羽(でわ)三山への行者の寄宿も多かった。泉質は塩化物泉、湯量も豊富で、朝市が開かれる県内最大の湯治場。肘折こけしの産地としても有名。付近には地蔵倉の奇勝や石抱(いしだき)温泉、黄金(こがね)温泉などがあり、地熱発電の調査も進められている。国道458号が通じ、JR奥羽本線新庄(しんじょう)駅からバス便がある。

[中川 重]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肘折温泉」の意味・わかりやすい解説

肘折温泉
ひじおりおんせん

山形県中央部,月山の北東,銅山川に沿う温泉。大蔵村に属する。江戸時代から出羽三山登山口の一つとして繁栄。また永松銅山が開発された大正期にもにぎわった。泉質は食塩泉泉温 42~85℃。外傷にきくといわれ,湯治客が多い。周辺は標高 400m前後の火山灰台地で,牧場に利用されている。伝統をもつ「肘折こけし」は有名。

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デジタル大辞泉プラス 「肘折温泉」の解説

肘折温泉

山形県最上郡大蔵村、銅山川中流沿いにある温泉。肘折こけしの産地。黄金温泉、石抱温泉とともに肘折温泉郷に属する。

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