霊地としての月山・羽黒山・湯殿山の総称。地理的にみれば月山(一九七九・五メートル)は山形県のほぼ中央部に位置する火山で、
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
山形県のほぼ中央部,朝日山地の北端部に位置する月山(がつさん)(1984m),湯殿山(1500m),羽黒山(436m)の三山をあわせていう。月山と湯殿山は近接しているが,羽黒山は両山の北約20kmに位置する。古くから修験道を中心にした信仰の山として開け,近世の信仰登山は東日本一帯の〈カスミ〉と呼ばれた檀那場組織を通じて信者を講中の形式で集めて行われ,手向(とうげ),本道寺,岩根沢などの羽黒山中腹の宿坊集落で宿泊,先達の案内・指導により参詣した。1689年(元禄2)松尾芭蕉も6月3日羽黒山,8日月山,9日湯殿山と足を運んでいる。羽黒山頂には三山を合祀する出羽神社がある。現在は,羽黒山を経て月山八合目までバスが通じ,南は姥ヶ岳直下までリフトが通じている。磐梯朝日国立公園に属する。
執筆者:五百沢 智也
羽黒山,月山,湯殿山が出羽三山に当てられたのは中世末から近世初頭にかけてのころであり,それ以前には羽黒山,月山に葉山を加えて三山とする場合や,葉山の代りに鳥海山を加える場合もあった。湯殿山を加えた出羽三山の成立は,三山の地理的関係,戦国時代以降六十里越街道の重要度が増し,湯殿山がその街道沿いにあったことのほか,修験者たちの解釈によるものである。羽黒修験(羽黒派)の解説では,羽黒山の本地を観世音菩薩,月山を阿弥陀如来,湯殿山を大日如来とし,羽黒山で現世安穏を祈り,後生極楽・往詣浄土を修め,月山で未来成仏の確証を得るとともに凡聖同居の関を超えて湯殿山の密厳浄土に至り,即身成仏の悟りを得ることができるとされ,湯殿山は総奥の院と位置づけられている。
三山の中で歴史上最も早い時期に登場するのは月山で,《延喜式》に名神大社としているように,古い時代においては三山信仰の中心であった。しかし羽黒山も御手洗池(鏡池)から出土した銅鏡の大半が平安・鎌倉時代のものであることからして,中世初頭には修験の一大勢力が形成されていたと考えられる。一方,湯殿山は空海の開基伝承を伝え,独自の展開をみせている。寛永年間(1624-44)羽黒修験が天台宗の東叡山寛永寺の支配を受け,湯殿山を支配下におさめようとしたために,湯殿山の真言系四ヵ寺と争いを起こしている。近世には湯殿山が最も重視されており,それは各地の出羽三山碑や,湯殿山の縁年に当たる丑年に参詣者が増大していることでも知りうる。
→出羽神社
執筆者:宮本 袈裟雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
山形県中央部、出羽山地最南端を占める月山(がっさん)(1984メートル)、湯殿山(ゆどのさん)(1500メートル)、羽黒山(はぐろさん)(414メートル)の総称。古来、修験道(しゅげんどう)の聖地として知られた。室町末期までは羽黒山、月山、葉山(はやま)(1462メートル)を三山と称し、湯殿山を総奥の院といった。三山参りが盛んになったのは江戸期に入ってからで、羽黒(手向(とうげ))、大網(おおあみ)、注連掛(しめかけ)、肘折(ひじおり)、岩根沢、本道寺、大井沢の七口の登拝口があった。磐梯(ばんだい)朝日国立公園の最北部を占める。
[中川 重]
『『出羽三山・葉山』(1975・山形県総合学術調査会)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
山形県のほぼ中央部に位置し,最高峰の月山(がっさん)(標高1984m)と羽黒山・湯殿(ゆどの)山の3山の総称。三山はもと熊野三山に擬して,羽黒山・月山・葉山であったが,戦国期に葉山が湯殿山にかわったとされる。三山登山は平安時代から始まったが,一般民衆が道者(行者)として三山参りをしたのは室町時代以後で,江戸時代に全盛をみた。登り口は7口あり,それぞれの口に寺があって,道者の宿泊・祈祷・先達などを務めた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…そのような霊場信仰のある山には,おのずから修行者が住みやがて住坊が霊場寺院となるから,納骨はその霊場寺院に納める形になる。しかし山に納骨した風も出羽三山の月山(がつさん)に見られ,月山では山頂(阿弥陀如来をまつった)に納骨していた。明治初年の神仏分離以来それを禁止したところ,登山者はかってに山頂の月山神社周辺や9合目の賽の河原に埋骨していくので,現在は神社境内に祖霊社を設けて,神官が納骨と祖霊供養を受け付けている。…
※「出羽三山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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